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ジュニアアスリートメディカルサポート通信Vo.19 〜ジュニアアスリートにおける低酸素トレーニングの効果〜
ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。
第19回は「ジュニアアスリートにおける低酸素トレーニングの効果」を取り上げたいと思います。このメディカルサポート通信も19回になりましたが、序章をお伝えしている形になりますので、詳しい内容に興味がある方はHPよりご連絡いただければ幸いです。
「低酸素トレーニング」とは、マラソンなどで昔から話題となっている高地トレーニングを気圧など体に負担になる因子を無くして平地でも同様のトレーニングを行えるように開発されたものになります。代表的には、標高2,500〜3,000mの高地と同様の酸素濃度を再現したジムで行うものになり、 標高2,500mのような酸素濃度が低いところでは、できるだけ多くの酸素を取り込もうと体内の赤血球数が増加し、ヘモグロビン濃度が上昇します。酸素が少ない環境でトレーニングを行うことで、身体は酸素の供給効率を高めるため、低酸素状態でもパフォーマンスを発揮できるようになります。 また、心肺機能の強化も期待でき低酸素ルームで定期的にトレーニングを行うことで、心臓や肺の働きが向上し、全身の血流が改善されます。 さらに、脂肪燃焼効果も高まるため、ダイエット効果を期待してジムに通っている方も増えているようです。
では、このようなトレーニングをジュニアアスリートに用いるとどうなるのか?ですが、残念ながらまだ論文的考察は行われておりません。しかし、日本では関東圏を中心に小学生(特にサッカー選手)がアスリートプログラムというトレーニングメソッドで低酸素下において自走式トレッドミルで高強度のトレーニングを行い、心拍数や酸素飽和度の回復を目安に運動継続能力の向上を促しています。実際に我々がサポートしている選手の中でも、そのようなジムに通っている人は多く、話を聞いてみると「試合で動ける時間が長くなった」「試合でずっと走っていても疲れなくなった」など肯定的な意見が多かった印象です。では、デメリットは存在しないのか?成長や発達に影響はないのか?安全なのか?ですが、
デメリットとしては
高負荷での運動 低酸素状態での運動は、通常の運動よりも高負荷になるため、怪我や体への負担が増える可能性。
適切な訓練計画が必要 低酸素トレーニングは、慎重な訓練計画が必要であり、専門家の指導が必要。
初回や久しぶりの低酸素トレーニングだと気分が悪くなる場合がある。
などが挙げられます。実際には、しっかりした施設であれば怪我や過負荷による身体への負担はあまりありません。久しぶりのトレーニングとなると確かに頭痛などが起きることがありますが、これも専門家のバックアップの元やっていれば運動強度を調整してくれるので問題なく、順応してくれます。まだまだ、小児のトレーング期間が長くないので、成長障害を起こさないとはっきりは言えませんが、週1〜2で30分弱の低酸素トレーニングであれば、影響が起こる可能性は低いと我々は考えています。
どれくらいの期間で効果が実感できるか?ですが、低酸素トレーニングを週1~2回定期的に行った場合約1~2か月ほどで赤血球、ヘモグロビン値が向上すると研究結果に示されており酸素運搬能力が向上する事が認められているため、週1で2ヶ月ほど継続すると競技スポーツでも変化を感じられると思います。
我々は新しい取り組みとして、当施設で低酸素トレーニング+最大酸素摂取量の測定を行えるようにしており、初回トレーニング時と2ヶ月後のトレーニング時に最大酸素摂取量の変化を測定し、血液検査でヘモグロビンおよびエリスロポエチンを測定することで科学的な効果を測定しながら、低酸素トレーニングを行うようにしています。当施設での低酸素はマスク型ではありますが、専門医によるバックアップ下で行なっておりますので、安全性はしっかりと確保されたものになります。
このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。