壊れた 天井スピーカー
インターナショナルスクールの保安の前で、汗にまみれた白いワイシャツを着た電機メーカーの若手社員が立っていた。
彼は、故障したという報告を受け、修理のために学校を訪れていた。校内を見渡すと、生徒たちは国際色豊かで、男女比も男子が3割、女子が7割という印象を受けた。異国の言語が飛び交うこの学校は、彼がかつて通った学校とは全く異なる雰囲気だった。警備員から視聴覚室への案内を受け、彼は大きな機材を運びながら校内を歩いた。視聴覚室のあの独特の匂いに包まれながら、クレームの対象となったスピーカーを見つける。作業は思ったより早く終わりそうで、彼は少しホッとしていた。教室の壁に目をやると、「9月26日 文化祭」と書かれたポスターが目に入った。体育会系の彼には文化祭の魅力がいまいち理解できなかった。そんな事より今日は、約束していた焼肉のことを考え早く終わらせたい気持ちが強かった。天井のスピーカーを下ろす作業に取り掛かる中、静かな教室でスマホの音楽を聴きながら作業したいと彼は思っていた。
視聴覚室のドアが開き、女子生徒が入ってきた。
「それ今日、直ります?」と彼を見つけ尋ねた。彼は一瞬戸惑ったが、文化祭でスピーカーを使う企画があるとすぐ理解した。「何か特別なイベントですか?間に合わせるように頑張ります」と彼は答えた。
彼女の外見や話し方からは演劇的な要素は感じられなかったが、彼はなぜかこの文化祭が彼女にとって重要なものだと勝手に感じ取った。
「妹が壊したの」と彼女は怒りと戸惑いを交えて言った。だが、彼の頭は焼肉のことでいっぱいで、彼女の言葉には耳を傾けていなかった。そのとき、教室の扉が開き、見慣れた顔が姿を現した。新しい髪型と派手な耳ピアスが彼女の存在を際立たせていた。そして、短い制服のスカートから覗くジャージが彼女の個性的なスタイルを強調していた。
彼はその光景に目を疑った。彼女たちがまるで双子のように、同じ顔をしていたからだ。