ドアスコープから見える優しさ
※この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係がありません。
突然の電話に心臓がドキドキしながらも、
「ああ、もしもし?体調はどう?無理は禁物だから、ゆっくり休んでね」
と、いつも元気な上司のつっちーに心配される。
「申し訳ありません、ゴホゴホ・・・。ご心配をおかけしています。しばらく休養を取らせていただきます」
「そうかい、そうかい、食事の支度も大変だろうな。これ、受け取ってくれるかな?じゃ、またね。」
「えっ、何をですか?」
と問い返す間もなく、電話はピッと切れた。
そして、れなの家のインターホンが鳴る。
ドアの覗き穴から外を見ると、マスク姿の聡子が立っている。
れなは、慌てることなく、静かに玄関のドアを開けた。
「こんばんわ。これ…召し上がってください」と言いながら、コンビニの袋を差し出してくれた。
少し躊躇しながらも、その袋を受け取った。
静かな声で、「薬はお持ちですか?」と聡子が心配そうに尋ねた時、れなは少し足元がおぼつかなくなった。
「大丈夫、大丈夫だから。ありがとう、ごめんね」と答えたものの、どうして自分の住所を知っているのか、不審に思った表情をした。
「ごめなさい、心配だったので、つっちーから住所を教えてもらいました。とにかく、早く良くなってください。」と、俯きながら聡子が答えた。
少し気まずい空気が流れたが、その優しさに心が満たされていた「あ、うん。ありがとう。よかったら、家に上がってく?」と、れなは、思わず口に出してしまった。
「大丈夫そうで安心しました。回復したら、是非ビールでも。お互い飲めませんけど。では…また」と、彼女は心配そうに言いながらエレベーターに向かって歩き出した。
「ああ、ありがとう。本当に助かったよ…」と、彼はドアをそっと閉じながら、彼女の後ろ姿を静かに見送った。