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2枚綴り

長時間にわたるリモート会議を終え、疲れた体を休めようと直人は電子タバコに手を伸ばした。会議中は新入社員としての姿勢を保つために、吸うことを我慢していた。その日の議題は、以前に修理したはずの視聴覚室のスピーカーが再び問題を起こしたことだった。直人には、必要な部品があれば修理は簡単だと分かっていたが、会議自体を無駄だとは思っていなかった。それよりも、もう一度あの学校に足を運ぶことができるのか、そのことが彼の心を占めていた。

そして仕事を終え、直人は獣医のたかしとのカラオケの約束に向かう。
久しぶりの再会に、二人は近況を語り合う。

「久しぶりですね、元気でしたか。今日は動物たちは大丈夫ですか?」
「新しい助手が来てくれてね、俺なんかより、とても優秀なんだ。だから今日は少し息抜きさ。そっちはどう?」
「いつも通りで何も問題ないですよ。」

カラオケでの楽しい時間が終わりに近づき、たかしが話しかけてきた。
「映画のチケットを彼女からもらったんだけど、見に行かない?」
と、彼は提案する。
直人はちょっと考えた後、「3人で行くの?」だが、たかしが渡したのは2枚のチケットだけ。
たかしは意地悪そうに笑いながら、「いや、俺たちとは別よ。誰かを誘って、楽しんできてよ」と言い、直人にチケットを手渡した。

チケットに記された日付が、まさに修理部品が到着する予定日と重なっていることに気がついた。この偶然の一致には少し驚き、なぜか期待を胸に抱きながら、そのチケットを手に取り眺めていた。

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