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線香花火とバケツ

夏休みのある日、高校1年生の彼は、主力選手には及ばない自分が遠征や公式戦、練習試合で全力を尽くせずにいることに力が入らない日々を送っていた。

そんなある日、学校の最寄り駅の改札口にある伝言掲示板に目を通していると、多くのメッセージの中から見覚えのある筆跡を見つけた。
それはまるで宝探しをしているかのような感覚で、知り合いの文字を見つけた時の彼の目は何とも言えない輝きを放っていた。

『●●●駅に来てください。待っています。●●より

その日は、遠征のために部室から必要な道具を取りに来るだけの短い学校訪問の予定だった。
しかし、まるで何かの予兆でもあったかのように、突然目に飛び込んできたメッセージに驚きを隠せず、急いで待ち合わせ場所である駅へと向かった。

駅に着いたが、彼女の姿はどこにも見えなかった。
きっと何かの勘違いだろうと思い、帰ろうとしたその時、肩を叩かれた。
振り返ると、そこには突然現れたクラスメイトが立っていた。
『行こう!』

クラスメイトの一言に何が起きているのか分からないまま、彼はクラスメイトに従ってバスに乗り込んだ。
数つの停留所を過ぎた後、バスを降りると、そこには彼女がいた。
彼女は少し照れながらも、嬉しそうに小さくつぶやいた。

『良かった、会えて。』

彼はそのメッセージが彼女からのものだと確信し、少し照れながらも明らかに喜んで “ありがとう” と答えた。

夜が訪れ、辺りは静かに暗くなっていた。
彼らは少し開けた場所にある公園に集まり、彼女と同じ部活の友人や、駅まで案内してくれたクラスメイトも一緒に、4人で夜の公園で花火をしながら楽しい時間を過ごしていた。
空に打ち上げられる花火の光が彼らの笑顔を照らし出し、暗闇を明るく彩っていた。それはまるで夏の夜の魔法のような光景だった。

『次はこれね...』と言って、彼女は彼に線香花火を手渡した。

その小さな火の粉が夜空に散らばる様子は、まるで星が降りてきたかのようだった。彼女の目はその光に照らされて輝いていた。

この一瞬の静けさの中で、彼らは夏の終わりを感じていた。


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