Full Moon
『新月にしたお願い事は満月に叶うんだって。』
だから、あーちゃん
僕はあーちゃんの中にいるから、ずっと護ってあげるからね。
あーちゃんの望む、『死が2人を分つまで一緒』だよ。あーちゃん。
あーちゃんは男の子っぽいなって僕は思う。女の子なのに、女の子を守ろうとするし、男の子とよく遊んでる。
それもそうだよね。僕と混じっちゃったからだよね。
だから身体つきは男の子っぽい。喉仏もあるし、声は低い。筋肉質でプニプニしてない。
顔も二重の切長で顎のラインもシャープだし、ショートカットにしたら男の子に間違えられて、『もうショートにしない』って泣いてたっけ。似合っていたのにな。
可愛いのにな。
あーちゃんは僕の双子の片割れで、産まれる前からあーちゃんの魂は消えかけてて、消えなかったとしても、あーちゃんは2歳の時に死んじゃうって事が僕には見えてたんだ。僕とお別れしちゃうって事が僕には悲しくて、耐えられなくて。
だから、僕の魂をあげたんだ。長く生きて欲しくって、僕と一緒に生きて欲しくって。
そして、宇宙にお願いしたんだ。
「あーちゃんをたすけて」って。
僕の魂はあーちゃんが生きる長さに、僕のお願いを聴いてくれた宇宙の魂があーちゃんの魂になったんだよ。混ざり合っちゃったけど。
だからね、あーちゃん。あーちゃんは1人じゃないんだよ。でも、あーちゃんはそんなこと忘れちゃって産まれてきちゃった。
僕、忘れられちゃった。悲しくなっちゃった。
ああ、だからあーちゃんにはもっと早く僕のこと気づいて欲しくて色々苦しいことを与えてきちゃった。
僕を苦しめるから、最後の手段を取っちゃったよ。ごめんね、あーちゃん。
あーちゃんが死にたくなっちゃうほどの試練を与えちゃったよ。でも、それでもあーちゃんは苦しむ事を選ぶんだね。自分の人生を自分が主役になろうとしない。ダメだよ、あーちゃん。
どうして?
優しすぎるよ。
だから一度だけ夢の世界に入り込んだ。
あーちゃんの夢の世界。
『大丈夫』
そう言ってあーちゃんの手を握ってあげた。
元々あーちゃんが親から「出来るはずない」って言われながら育ってきたことは知ってるよ。心配しすぎる親が言うことだよね。だからいっぱい諦めてきた事があるね。
恋愛においても少女のように「いつか王子様が」って思いながらも「そんな現実ありえない」って思ってきちゃったよね。
だから、付き合ってもその人の嫌なところ見ちゃうとさよならしちゃってたし、自分の言いたい事も言えなかったよね。
それは僕のせいでもあるんだけど。
あーちゃんは僕の一部だから、僕も好きになれない人とは関わって欲しくなかったんだ。
だから、あーちゃんは孤独を感じてるよね。好きになって結婚した人にまで存在を全否定されて、ボロボロになっちゃった。
でもさ、僕は嬉しいんだ。あーちゃんが僕の存在を思い出してくれたから。
生まれる前に2人だった事、今もあーちゃんの中にいること、思い出してくれてありがとう。
ねぇ、あーちゃん。僕がずっとそばにいるからね。あーちゃんが灰になってもあーちゃんと混じった魂はずっと一緒だよ。
あーちゃん、愛してるよ。