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これ以上なロックはない『感覚は道標』

くるりの14枚目のアルバム『感覚は道標』を聴いて、揺さぶられた。

岸田繁という人は、とんでもない才能とインテリジェンスのある、貪欲なミュージシャンだ。実験精神というと、高尚すぎる。貪欲なのだ。

ロックやブルース、そして昭和歌謡や民謡の「こぶし」、民族音楽、さらには、広大無辺な西洋クラシック音楽。

いろんな音を取り混ぜ、実験し、ぐいぐい前進していく。

音楽の知識と技量、うたごころ、情熱のすべてを兼ね備えているのである。

例えば、はっぴいえんどの時代を経て松本隆の詞をこれ以上はないという極上サウンドで包み込んだ大瀧詠一も、活動期間は極々短く終わってしまったのだが、
岸田繁は、岸田繁1人の中に大瀧詠一(sound, voice, musical knowledge)と松本隆(lyric)2人の才能を同居させて、30年も創作し続けているような状態である。
モチベーションがずっと続くということが、何にせよアーティストにとってもファンにとってもありがたく大事だろう。

音楽的冒険の旅の途中、あまり着目しなかった時期もあったのだが、
バンドの初期トリオ編成に原点回帰して制作した本作は、
ロックファンなら「おおっ」と心が前のめりになるボタンがいくつも散りばめられている。

推し曲はどれかと聞かれても、推し曲しかない。
とんでもない人だなあ、と驚き、そして、いつも進み続けていることに大いに励まされる。

伊豆スタジオで、合宿しながら制作したという。
そうだろう。ロックの名盤は、共同生活を含め過ごした時間の経過の中で、メンバー間の共通感覚によって、そのバンドらしい、うねりによって産み出されると、つくづく思う。

もう、死ぬまでロックしていてくれ。岸田繁。次のライブは観に行きたいです。
ありがとうさんだ。

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