不正業者の不誠実さについて(青果のロンダリング)

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 ある学校給食食材納品業者は長年に渡り産地偽装に手を染めてきました。
 そして現在も営業を続けています。私はその会社の元従業員です。
 現在、然るべき窓口に順次告発を進めております。
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唐突ですが、次の行為について皆さまにお考え頂きたいと思います。
 
ある業者が市場で玉ねぎを購入しました。
20㎏入りの玉ねぎを50箱。計1000㎏です。
 
ひと箱ひと箱すべて中身をチェックして、劣化したものや腐敗したものなどを取り除きます。
 
この日は劣化腐敗した玉ねぎが50箱中4箱分(80㎏)出てしまいました。
劣化腐敗したものをB級品と呼ぶことにします。
 
さて、この業者は売れない(売りづらい)B級品4箱をどうするでしょうか?
 
まず市場に戻ります。
 
次に、購入していない新しい玉ねぎ4箱をセリ場に並ぶ玉ねぎの山から人目を盗んで黙って抜き取り、その空いたスペースにB級品4箱を混ぜます。
 
抜き取った新しい玉ねぎ4箱は、未購入のまま持ち帰ります。
 
陳列されている玉ねぎの数の帳尻は結果的には合いますし、中身だけが劣悪なものに変わっているだけなので、セリ場の担当者はすり替え行為に気付くことはありません。

この方法で色んな野菜や果物はロンダリングされ、当たりクジへのすり替えは廃棄ロスを減らし、利益率アップに繋がります。
ミカンなどの柑橘類、インゲン、玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、できるものは何でも対象となりました。
 
他方で、すり替えられた側の被害は想像に難くありません。

これは冒頭の不正業者が市場内で常習的に行っていた行為です。 
 
ある時、管理ミスによって劣化したインゲンの余剰在庫を20キロほど抱えてしまうことがありました。
 
人目のつかない冷蔵庫内でインゲンの山の選別が始まります(市場の冷蔵庫はフォークリフトが入る広さです)。劣化したインゲンの中でも特に傷みが酷いものを8キロ程度選び、2キロ入りの箱に詰め替え4箱分にします。
 
このインゲンを例によって、入荷されたばかりのセリ場のインゲンの箱と隠密裡にすり替える訳です。
 
 
「誰が買うんだろうね」
 
無事にすり替えたあと、不正業者の現場責任者であるK氏が笑いながらこう呟いたことを鮮明に覚えています。
 
裏側ではこのような現実が日々横行し、子どもたちの口に入る食材は納品されてきました。
 
 
市場について少しだけお話いたします。
 
市場のセリ人と仲買人の間には、時には利害を越えた持ちつ持たれつの協調関係があからさま存在していて、それぞれが融通の幅を双方のために利かせる、相互扶助のような関係性が大きく働いています。
 
余っちゃったからこれも買ってよ、と言われれば、仕方ねぇなぁと舌打ちしながら付き合ってあげたり、逆に時には儲けが出ない価格で卸してくれたりと、その様態は様々です。
 
また、セリ場には青果の種類によってそれぞれの担当者が決まっていて、入荷された担当野菜(果物)の在庫をなくして行くのは腕の見せ所でしょう。
 
仲買人などの買い手は、毎日同じ担当者から同じものを購入する訳ですから、「何を買う」ということに「誰から買う」という意識は常に付随します。そして必然的に双方の関係性はとても密接になり、お互いを呼び捨てにしたり、名前に“ちゃん”を付けて呼んでみたりする間柄は市場のそこかしこに見られます。
 
世間一般で言ってみれば、売り手と買い手の間にある他人行儀や不干渉はある意味で潤滑的に働きますが、市場では顔なじみならではの程よい弛緩が漂い、微笑ましい慣れあいが日々の売買を支えていたりしています。
 
 
話を戻したいと思います。
 
すり替えられた商品が仮に第三者に購入されたとしても、また売れ残ったとしても、誰かがそのシワ寄せに窮するのは火を見るより明らかです。
 

「誰が買うんだろうね」
 
そう言った口は、すり替え行為など露ほども疑わないセリ人と、今度は和気あいあいと軽口をたたき合い、または天候不順による価格の高騰を嘆き合い、そして良品の優先的な納品をお願いしたりする、そんな光景をつぶさに見てきました。
 
公共性や社会性が求められる学校給食食材の担い手として欠落しているもの、つまりこの業者の根っからの不誠実が分かりやく表象された言葉でしょうし、
 
隠れて足を引っ張りながら片や巧言令色という2面性に、悪びれることもなく産地偽装に手を染め続けたこの会社の底意が透けて見えた気がしました。
 
平然とこのような行為に及ぶ人たちが納品する野菜や果物は、子どもたちの学校給食とは絶対に相容れないという思いは、一人の親としても声を大にせずにはいられません。
 
我が家の子どもたちも、今日の給食はやれ何だった、人気メニューのおかわりを争ってジャンケンで勝った負けたと、夕飯中のお箸を止めて(いつまでも)、色んな話をしてくれます。
 
こんな時、学校給食食材の納品を生業とする立場としては、売り手よし、買い手よし、最後の一つである、世間よしの一旦を担えている喜びをつくづく実感しましたし、心を込めて届けることの大切さを再認識する瞬間でもありました。
 
劣化した商品のすり替え行為が違法であるかどうかは言を俟たないと思います。
 
産地偽装という違法行為をうやむやにしたまま子どもたちの口に入る食材をこの不正業者が今なお納品し続け、さらにはこうした業者を区や学校が黙認しているというのが現状です。

こうした事実を皆さまと共有することが、子どもたちの本当の意味での楽しい給食に繋がることを切に願います。
 
私が知りうる限りの情報を今後も発信してまいります。

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