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【5年目のデザイナーコラム】ポストコロナの公共空間を考える:いま必要な小さな公共空間: マイクロパブリック

GKデザイングループでは本質的価値の追求のため、継続的にデザイン研究活動を行なっています。本稿ではポストコロナの公共空間を考えることで見えてきた「マイクロパブリック(小さな公共空間)」という視点についてご紹介致します。

<マイクロパブリック(小さな公共空間)3つの特徴>

本稿では自宅周辺を主な生活圏としたライフスタイルに着目しています。生活圏の変容によって以下に挙げる3つの特徴をもつ公共空間が求められるというのが基本的な考え方です。

1. 近隣住民が日常的に使う公共空間

2. コミュニティが小規模で個別ニーズに対応する公共空間

3. 多様な機能や過ごし方を提供する公共空間

1.都市における行動変容

 都心と郊外の往来を繰り返す生活。私は以前から電車通勤が身体に合わない体質なので、通勤はあまり良い気分ではありませんでしたが、そんな日々の生活を疑うことはありませんでした。ところがwithコロナの現在(第3波)では1週間の半分以上を自宅周辺で過ごすようになっています。都市における行動のかたちは「線→点→面」と変容し、今ではすっかり自宅周辺が主な生活圏です。

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テレワーク環境の整備が急加速し、在宅勤務が普及したことで、私と同様に自宅周辺に生活圏を移した人は多くいます。そして、beforeコロナから在宅勤務のニーズが多くあったことを考えると、postコロナでは働き方は以前より各段にフレキシブルなものになり、自宅周辺を生活圏にする人が多く残るように思います。

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2.自宅周辺に必要な公共空間

 自宅周辺を生活圏にしたことで、周辺の公共空間に対して様々な不足感を感じている人は多いと思います。「遊ぶ」「働く」「暮らす」といった生活に必要な機能が生活圏にそろっていないからです。postコロナでは日常生活を便利で豊かにするため、自宅周辺には日常的に多様な「機能」が求められるようになりそうです。多様性が重視されると機能や使い方が変化する公共空間の価値が高まるかもしれません。

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また、人の心理には多様な側面があります。多くの人と同じ行動をすることによって安心感を感じたり、ひとりになる時間が無いとストレスを感じたり、散歩して気持ちを切り替えたりする必要があるので、やはり外出しなければなりません。postコロナでは心を健康に保つため、自宅周辺には日常的に多様な「過ごし方」が求められるようになりそうです。

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3.解像度の高い公共空間

 自宅周辺の公共空間とこれまでの公共空間の性質は、似ているようで異なります。これまでの公共空間は理念として「あらゆる人に合わせる」ようにつくられています。誰にでも必要な行為として「座る」ことしかできない場合も多く、そこでは「オンライン会議をする」「家具をつくる」「スケートをする」といったような個別ニーズへの対応が難しく「人が公共空間に合わせる」ようになっていました。一方、自宅周辺の公共空間は顔が見える範囲の近隣住民が日常的に使う場所になるので、住民の個別ニーズに対応することが可能です。つまり「公共空間が人に合わせる」ということです。

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このような考え方から、コミュニティの規模が小さく、解像度の高い公共空間をこれまでの公共空間と差別化する意味で「マイクロパブリック」と呼んでいます。もちろんここで言いたいのは、従来の公共空間が不要になってマイクロパブリックが主流になりますという意味ではありません。むしろ従来の公共空間と共存し、既存の都市空間では実現できない「機能」や「過ごし方」を補うようなかたちで、マイクロパブリックが現れると考えています。

まとめ

今回は、ポストコロナの公共空間を考えるうえで「マイクロパブリック(小さな公共空間)」というワードに行き着いた経緯を説明させて頂きました。

beforeコロナから既に社会実験・ワークショップ・漸進的なプロセスを取り入れたマイクロパブリック的な試みは多く見受けられていますが、withコロナを迎えたことで、多くの人々がマイクロパブリック的な取り組みの重要性や豊さに気がつきつつあるように思います。

実践の機会もこれから増えていくかもしれません。そうであるならば、今後、様々なエリアで独自にカスタマイズされたマイクロパブリックが生まれるでしょう。私も実践とともに公共空間のデザインについて思考し続けていきたいと思います。(藤原芳博)


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(top photo:unsplash.com)


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