【あ~夏休み】三浦半島探検紀行
まとまった休みをもらったので、ちょいと出かけることにした。
だって夏じゃな~い。
自宅と職場との往復で矢のように過ぎ去ってしまう日常。
そんな日常にちょっとしたスパイスを!
海。山。川。
自然の中で虫と戯れ、へとへとになるまで駆け回ったあの頃。
子供の頃ワクワクした、あの夏休みみたいな旅がしたい。
そう思ったらもう居ても立っても居られないんである。
夏になると行きたくなる、そう、そこは神奈川県・三浦半島。
私は三浦半島が好きだ!大好きだ!!
都会じゃない。さりとて田舎と言い切ってしまうほど田舎でもない。
東京からすぐ行ける、海と山に囲まれたちょっと神秘的なワンダーランド、三浦半島。
今回の旅では、なぜこんなにも三浦半島にひかれるのか、その魅力の一端を発見することになるのだった―――。
かばんに荷物を詰め込み、私は横浜に向かう電車に飛び乗った。
神奈川県三浦半島
まずは地図で三浦半島の位置の確認を。
横浜の南にいびつなブーツの形で海に飛び出しているのが三浦半島。
東側の東京湾をはさんだ向こう側は千葉県。
西側は相模湾で、三浦半島付け根の逗子市から西に向かって鎌倉市・藤沢市・茅ヶ崎市・平塚市の海に面したあたりが湘南と呼ばれる地域になる。
京急線で横浜から南下、金沢八景から西に向かえば石原裕次郎の育った街・逗子(ずし)。
東側を南下していくと、プロ野球横浜DeNAベイスターズの練習施設のある追浜(おっぱま)、軍港の街・横須賀、黒船来航の地・浦賀、海水浴場として有名な三浦海岸。最南端はマグロが名物の三崎。
海に囲まれた場所ならではの見どころがいっぱいの三浦半島なのだ。
横須賀市・観音崎
今回私が向かったのは、三浦半島のかかとの部分にあたる最も東の地・横須賀市・観音崎。
横浜駅で三浦半島2DAYきっぷをゲットし、じめじめと蒸し暑いホームから京急浦賀行き普通電車に乗り込む。浦賀までは遠いが急ぎたくない。のんびりと普通電車で行くのが好きなのだ。
車窓から見える横浜の都会然とした街並みが、しだいに緑豊かな、のんびりとした景色に変わってゆく。緑の山の所々に斜面をコンクリートで固めた場所があり、そんな山に埋もれるように家々が建っている。
やがて遠くに海が見えてくる。
日常を忘れ、ゆっくりとした時間の流れを実感する瞬間だ。
浦賀駅で電車を降りると、湿った海の風が心地よく吹いてくる。
バス停の前には南国のような、ヤシだかシュロだかの樹があり、地元の高校生やおじいさん、おばあさんがバスを待っている。こののどかな、観光客がいない感じがまたいいのだ。
やってきた観音崎行きのバスに乗る。
客はひとり、ふたりと停留所で降りていく。乗ってくる人はあまりいない。バスが観音崎手前のトンネルをくぐるころには、乗客は私ひとりになっていた。
そして終点観音崎。
目の前に広がる海を前に、何を言えばいいのか。
私は今、陸地の果てにたどり着いたのだ。
砲台跡
今まで何回か観音崎に来たことはあったが、灯台は見たことがなかった。
今回はちょっとがんばって灯台を見に行こうじゃないか。
観音埼灯台。
あらっ?観音崎の崎が埼玉の埼になってるじゃな~い?
疑問に思って調べると、海上保安庁の海図上の表記は「埼」となっており、灯台はこちらの表記を使っているらしい。
観音崎というのは岬を表す名称で、横須賀だけではなく、「観音崎」という岬は日本全国になんと36か所もあるそうだ。
横須賀市観音崎の一帯は県立観音崎公園となっており、灯台もその中にある。
誰もいない観音崎隧道を歩く。
けっこう長いトンネルだ。2、3分歩いただろうか。
中はコンクリートで、ひんやりとした空気が感じられる。
トンネルっていつも思うけど、ちょっと気味が悪いね。
観音崎隧道を出ると、左側に「←観音埼灯台」の案内がある。
ゆるい坂道をどんどん上っていく。
歩いていくと、少し高くなった場所に突然怪しげな人工物が見えてきた。
なるほど……三浦半島の秘密が少しだけわかったような。
浦賀に黒船が来たことからもわかるように、三浦半島は地理的に東京湾周辺の防衛をするための重要な場所なのだ。
明治時代、東京や横須賀の軍港を防衛するため、三浦半島にはたくさんの軍事施設が造られた。観音崎周辺に点在する砲台跡もそういった目的で設置されたものだった。
のどかで自然豊かだけれどどこか秘密めいた人工的な雰囲気を感じるのは、三浦半島のそういう歴史からくるものだったのかもしれない。
観音埼灯台
観音埼灯台は明治2年日本初の洋式灯台として建設された。
現在の灯台は大正14年に造られた3代目。
初代も2代目も地震で倒壊してしまったようだ。特に関東大震災で倒壊した2代目は建設からわずか半年後の倒壊だった。
のぼれる灯台は全国に16基あって、観音埼灯台はその一つ。
灯台の頂上から狭い出口をくぐって外に出ると、風がびゅうびゅうと吹きつけてくる。高所恐怖症の私は足ががくがくするわ、怖くてカメラ落としそうになるわで、やっとのこと写真を撮って急いで降りる。
ああ、でも灯台の頂上から眺める東京湾はきれいで雄大で最高!
灯台の周りにジャングルのような、熱帯植物園の温室のような湿った匂いがたちこめている。
非日常を味わうというのは、やはりいいものだなあと思う。
三浦半島に癒され、その謎にワクワクしたつかの間の夏休み。
家にたどり着き、
「あ~やっぱり家はいいなぁ~!」
と叫んだら旅は大成功だ。
だって、今まで何も感じなかった家をいいなって思えるのは、楽しい旅をしてきたおかげだもんね。
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