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【うる星やつら】もしスマホがあれば

うる星やつら復活

遅ればせながら録画していたアニメ「うる星やつら」2022を観た。
前作「うる星やつら」の放映が1981~1986年だというから、およそ40年の時を経ての復活である。

私は1981版「うる星やつら」にそれほど思い入れがあったわけではない。
ギャグシーンのノリなどは苦笑いな部分もあったのだが、あの高橋留美子先生の世界観と魅力的なキャラクターの数々はとても好きで、毎週毎週なんとなく見ているアニメだった。主題歌やそれぞれのキャラの声、ラムが飛ぶ時の効果音などは今でもはっきりと覚えている。

2022版の感想はたくさんの方が書いておられて、それを読むのも楽しい。
ストーリーは前作とほぼ同じで、個人的にはとても懐かしく観た。
絵はさすがにきれいになっていて、トラ柄の宇宙船が地球に現れるシーンなどは大迫力だった。
ラムちゃんのアイシャドーがブルーからオレンジになってたのはちょっと現代アレンジかな。


「うる星やつら」2022にあふれる昭和感

2022版を観てまず思ったのは、「これスタッフ大変だったろうな~」。

過去の名作をリメイクするにあたって、とんでもないプレッシャーだったろうことは容易に想像できる。前作ファンの期待に応えられるか。前作を知らない世代に受け入れてもらえるか。どちらにも納得してもらえる作品を作るのはとても難しいことだろう。

リメイク作は前作に忠実なものと時代や場所など設定を変えたものがあるが、「うる星やつら」2022は前者。何でもありのコメディーだけに時代を令和にすることもできたと思うが、前作そのままに町並も家の中も昭和感にあふれている。

あたるの部屋のふすまや畳。砂壁に貼られたポスターやペナント。本棚に置かれたラジカセ、ブタの蚊遣り器。
黒電話に花柄のカバー、分厚い電話帳。
ブラウン管テレビの上にこけしと王将の駒。
昭和のスタンダードな和風住宅だ。細かいところにスタッフのこだわりが感じられる。
しのぶの家は白い電話に花柄の壁紙。
「昭和の洋風」な感じで、こちらも懐かしい。


物語におけるスマホの功罪

時代設定を令和にしなかった大きな要因のひとつにスマホの存在があるように思う。

今や誰もが当たり前に持っているスマホ。
私はたまーーーに創作の物語を書くことがあるが、その中では意図的にスマホを出さないようにしている。
自分がスマホを持ったことがないため、スマホを出してもリアリティに欠けるのがひとつ。
もうひとつ大きいのが、スマホがあると物語がドラマチックにならないということ。
会いたいのにすれ違って会えない。今あなたはどこにいるの?何をしているの?という思いはそれだけでドラマチックになる。スマホを持っているとそうはなりにくい。
推理小説やミステリーもスマホや監視カメラがあるとトリックが成立しづらい。作家にとってスマホの存在はとても悩ましいのではないか。

「うる星やつら」では会うことができないあたるとしのぶが電話で話すシーンがあり、嫉妬したラムに妨害されるのだが、これがもしスマホでLINEなら面白いシーンにはならなかっただろう。
時代設定を変えたら物語の結末が変わってしまうかもしれない。

携帯の出現は物語の質を変えたと感じる。


スマホ時代これからの物語

スマホが登場するドラマや映画。
そして携帯出現前の作品を現代の設定にしてリメイク。

今後もあるだろうが、私が見たいのはスマホを出さざるを得ない物語ではなく、スマホをそう使うか、とうならせてくれる物語。
使う道具は変わっても、いつの時代も人間の考えや思いは変わらないのだから。

「うる星やつら」2022を観ながらそんなことを考えた。


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