AGAの治療4(ミノキシジルタブレットの副作用)
では、実際のミノキシジルタブレットの副作用等について書いてみます。
ミノタブの効果として頭皮の血流改善、毛乳頭や毛母細胞の活動促進辺りが言われていますが正確な機序は分からない事の方が多いようです。
ただこの血流改善というのは血管(細い動脈)が開く事で生じているはずで、この作用こそミノキシジルが血圧を下げる仕組みそのものなのです。
そして副作用自体もこの血管が開く事から説明できます。
立ちくらみ、めまい
動悸、息切れ
むくみ
ミノキシジルの副作用としてよく挙げられる症状ですが、立ちくらみ、めまいは血圧が通常より下がったことにより出現します。これ自体は程度問題ですが、頻繁に起きるようだと問題です。例えば自動車の運転中などにめまいが生じ事故に繋がってしまう恐れがあります。
動悸も血圧低下に伴って心臓が強く早く拍動することで生じていることがあります。
ちなみに血管が開いて血圧が下がると、心臓から出ていく血液の勢いが少ないのですから、当然心臓へ戻される血液も滞りがちになります。すると血管壁から血漿成分(水分)が漏れ出してむくみが出てくるのですが、胸(肺)でそれが起これば酸素が取り込みにくくなり息苦しさが出てきますし、心嚢(心臓を包んでいる袋:心臓は非常に激しく動いている臓器なので滑らかに動けるように少量の潤滑液が入った心嚢という袋に入っているのです。)の中で起きたら、潤滑液が増えすぎてスペースがなくなるので、心臓が十分に動けなくなってしまいます。
また心臓はポンプとして血液を送り出しますが、当然心臓の筋肉も専用の血管から血液を通じて酸素や栄養を受けています。その専用の血管を冠動脈と言いますが、ミノキシジルはその冠動脈も開いてしまうと言われています。冠動脈は拍動する(太くなったり細くなったり)ことで心臓の隅々まで血液を届けているのですが、もしも冠動脈が開きっぱなしになったらどうでしょう?冠動脈の始まりの部分には血液は十分集まるでしょうが、端の方(末梢といいます)までは血液が足りなくなる恐れが出てきます。(狭心症や心筋梗塞の恐れがあります。)
ミノキシジルが有効成分のロニテンの開発で犬に対して投与した実験があります。イヌへの経口投与量は0.5~20mg/kgでした。この用量では、数日以内の(心筋の)乳頭筋(心臓の筋肉の一部)/心内膜(心臓の内側の膜)下壊死、出血性病変、限局性心外膜(心臓の外側の膜)炎等の致死的症状が起こりますが、他のβアドレナリン受容体作動薬、末梢拡張薬でも同様に起こる病変と考えられていました。(重大な副作用が生じますがこの薬特有と言うわけではないということです。)
この量は体重60㎏とすると30mg~1200mgというとても多い量ですが過剰に投与すると明らかに毒にしかならないことがわかります。
ただロニテンは降圧剤としては1日あたり10mg~40mg、最大100mgが投与されているので、やはり得られるメリットと考えられるデメリットを天秤にかけてメリットがデメリットを上回っている場合にのみ使用するのがお薬ということになります。(血圧が下げられなければ短期的には脳卒中や中長期的にも心臓・腎疾患で亡くなってしまう恐れが高まりますからその可能性を下げるために致死的な副作用があり得るとしても薬を使う方が恩恵があるということです。)