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ギターと散歩  パリ編


 メンデルスゾーンの「旅を思い出すことは,人生を二度楽しむこと」にならって,ローマに続き,パリの旅を思い出してみた.
 パリというとシャンソン,シャンソンというと「枯葉」だろうという安直な発想で,「枯葉」(斎藤松男編曲のギター曲)をBGMにしてYouTubeにアップした.40年も前の銀塩フィルムからのデータなので,お見苦しいところもあるが勘弁してください.最近のデジタルカメラ,スマホのカメラ機能の進歩は素晴らしい.ヤマハ サイレントギター SLG-120NW に,BossのeBand (JS-10)を接続し演奏・録音.iMovieで作成.動画サイト https://youtu.be/qJqhGxgz5T0

「枯葉 Les Feuilles mortes 」
 世界の誰もが知っている歌あるいは曲は?と聞かれて,「枯葉」をあげる人はいないかもしれない.しかし,シャンソンと限定すると,間違いなく「枯葉」をあげる人はいるだろう.「枯葉」は,マルセル・カルネ監督の映画「夜の門」(1946年)の挿入歌で,新人のイヴ・モンタンによって歌われた.これが「枯葉」のオリジナルと言われるが,この「枯葉」は,映画もそうであるがヒットしなかった.その後,コラ・ヴォケール,エディット・ピアフ,ジュリエット・グレコらがカバーし,フランスで広く知られるようになった.「枯葉」は,1945年にジョゼフ・コズマが作曲し,後にジャック・プレヴェールがフランス語の詞を付けたのがオリジナルである.
 「枯葉」が米国に入ったのは1949年である.米国でこの曲を売り出そうとしたキャピトル・レコードは,フランス語のオリジナルの歌詞では米国では流行らないと思ったらしく,英語の歌詞が付けられ,"Autumn Leaves”という英語題で発表された.英語の歌詞を付けたのはキャピトル・レコードの創立者の一人であるジョニー・マーサーで,ヘンリー・マンシーニとのコンビで「ムーン・リバー」の作詞も手がけた作詞家である.英語の歌詞は,プレヴェールのフランス語のオリジナルとはかなり異なっている.英語の歌詞とともに「枯葉」が米国中に広く知られるきっかけになったのが,ジャー・ウィリアムズのピアノである.枯葉が舞い落ちるようなシーンをイメージさせる華麗な演奏が,米国で大ヒットしたのである.私的には,英語の歌詞とこの華麗なピアノ演奏によって,ミディアム・スローテンポの短調で歌われるバラードのオリジナル「枯葉」の雰囲気が随分と変わったものになってしまったように思う.好き嫌いは別にして,「枯葉」は多くの著名なアーチストによってカバーされ,世界的なスタンダード曲となっている.YouTubeにリンクを貼ってありますので聞き比べてみてください.『枯葉 The Autumn Leaves聴き比べでは,エディット・ピアフ,フランク・シナトラ,ドリス・デイ,ジュリエット・グレコ,ナット・キング・コール,バーバラ・ストライサンド,金子由香利,トニー・ベネット,イブ・モンタンの「枯葉」を聞くことができる.ジュリエット・グレコとイブ・モンタンはフランス語版,他は英語版の歌詞による.
 日本でも,高英男,淡谷のり子,越路吹雪,阿川泰子,石原裕次郎,芦野宏,ペギー葉山,岸洋子,北谷和子,芹沢抄子,乃木陽子,松本かずこ,秋元順子,ザ・ピーナッツ,五輪真弓 & 柏原芳恵らがカバーしている.日本では,圧倒的に女性歌手が多い.
 「枯葉」は,シャンソン界にとどまらず,ジャズの素材としても多くのミュージシャンにカバーされ,数え切れないほどのレコーディングが存在する.私の好みをあげると,マイルス・デービス(トランペット)とキャノンボール・アダレイ(アルトサックス)ビル・エバンス(ピアノ)ビル・エバンス(ピアノ)とジェレミー・スタイグ(フルート)マッコイ・タイナー(ピアノ)ビージー・アデール(ピアノ).アコーディオンも好きなので,リシャール・ガリアーノ(アコーディオン).昔々,アルトサックスを少しばかりかじった経験から,ストリートミュージシャンの坪山健一(アルトサックス),ストリートミュージックのついでにフィレンツエの街角でのチェジュンヒョク(コントラバス).現在,「ギターと散歩」を標榜している関係上 イェン・リー(ギター)をあげておきます.

パリの嫌な思い出
 ジャンポール・ベルモンドが2021年9月6日,亡くなった(享年88歳).フランスでは,アラン・ドロンよりも人気があったという.ジャン-リュック・ゴダール監督のデビュー作『勝手にしやがれ』の自転車泥棒ミッシェル役で人気に火がついた.『勝手にしやがれ』が追悼番組としてテレビで再放映されていたので,再度視聴したのである.すると,パリの名所がいっぱい出てくるのを再発見した.セーヌ川の中州であるシテ島,ノートルダム大聖堂,シャンゼリゼ通り,エトワール広場の凱旋門,ルーブル宮(美術館),カルーゼル広場と凱旋門,エッフェル塔,コンコルド広場も出てくる.これらは,「パリのセーヌ河岸」という名称で世界遺産になっている.
 ノートルダム大聖堂の正面の北塔と南塔の建物をモチーフにしたと言われるのが,丹下健三設計の東京都庁第一庁舎である.世界中が驚いたのが,2019年4月15日夜(現地時間)の大規模な火災で,尖塔などが焼失してしまった.ノートルダム大聖堂のステンドグラスは有名であるが,南側の大小2つあるうちの上の小さなバラ窓のステンドグラスは火災の熱で,割れてしまったようである.
 私には,バラ窓のステンドグラスよりも,もっと思い出深い出来事がある.良い思い出ではないが,ノートルダム大聖堂前の広場で,3-4人のジプシーに襲われたのである.襲われたというとただ事ではないが,正確には取り囲まれたのである.二人が新聞を広げながら私に近づいてきた.一瞬,新聞の押し売りかと思ったが,二人に取り囲まれ,そのすきに仲間の一人が私のバッグの中のものを盗もうとしたのである.幸い,被害はなかった.しかし,この出来事にはおまけがあった.パリの地下鉄で,またもジプシーに襲われたのである.大声を出したら居なくなって,事なきを得た.この当時のパリの治安は,良くなかった.ジプシーといっても小学校の高学年から中学生くらいで,少女も含まれており,暴力とか生命の危険を感じるということはなかった.最近でも,パリの治安は良くないようである.2021年のショパン国際ピアノコンクールでも活躍された角野隼斗YouTuber名「かてぃん」の恐怖体験のインタビューに,パリに留学して一月ぐらい経った頃(2018年10月頃)パリのファストフード店で,パスポート,財布,マックブック,部屋の鍵などが入ったバッグをとられてしまったことが語られている.それに対して,パリはスリ,置き引きの類が多いというコメントがあった.「恐怖体験 ~パリの巾着切り」としてYouTubeにアップされている.被害にあった内容からすると,巾着切りと言うよりも置き引きかなと思うが,いずれにしても,パリの治安は今もよくないようである.
 ジプシーに襲われた話は,拙著「ギターと散歩」にノートルダム大聖堂のステンドグラスとともに紹介してあります.

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