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♦︎「禁じられた遊び」

 世界中の誰もが知っている曲を100曲選ぶとすれば,あなたは,どんな曲を選びますか?筆者の独断と偏見で,「禁じられた遊び」を上位に選ばせてもらう.そして誰でも一度は,かっこよくギターで弾いてみたいとも思うのでは?「禁じられた遊び」は,映画のタイトルで,いつしか映画の中で流れるこの曲をそう呼ぶようになった.以前は,「愛のロマンス」,あるいは「ロマンス」と呼ばれていたが,この曲,いつ誰が作曲したのか最近まではっきりと分からず,作者不詳のスペイン民謡ということになっていた.最近,スペインのギタリスト・作曲家「アントニオ・ルビーラ」(1825-1890)の作曲した”Estudio” エチュード(練習曲)だということが判明した[1, 2].練習曲とあるように,特に前半の短調の部分は,低音弦を親指で,主旋律を薬指,和音を中指と人差指で弾くアルベジオという奏法が必要である.ギターの開放弦を活かした,ギターのための曲というようなつくりである.前半の短調の部分は,技術的に難しくなく入門曲のカテゴリーにあり,ここだけは弾けるという方もいるのではないだろうか.短調から長調に変わるあたりから難しくなり,挫折した人もいると思う.自称ギター青年の筆者も,一度ここで挫折した.なお,ルビーラの原曲ではアルペジオのパターンが逆(開放弦2→3の下降形でなく逆行形の3→2)になっている.演奏の主流は,下降形であるが,逆行形の方が,メロディとのバランスはとりやすいとも言われる.            『禁じられた遊び』はフランス映画(1952年作)で,決していかがわしい変な遊びがテーマではなく,戦争で孤児となった5歳の少女の切ない遊びを通して描いた反戦映画である(念のため).ルネ・クレマン監督,主演:ブリジット・フォッセー,そして音楽をギタリスト,ナルシソ・イエペスが担当している.ナルシソ・イエペスは,これで一躍世界的に有名になった.自称ギター青年の筆者も,そのレコードを買った一人である.映画監督のルネ・クレマンは,当時名声を誇っていたアンドレス・セゴビアに音楽の担当を依頼する予定であった.しかし,ギャラの高さに驚きセゴビアに代わってルネ・クレマンが抜擢したのは,パリのカフェで弾いていた評判のギタリストであった.それが,ナルシソ・イエペスである[3].映画制作に予想外に費用がかかった為,音楽にお金をかけられなくなってしまったというのがナルシソ・イエペスのギターを選んだ理由かもしれない.ナルシソ・イエペスは10弦ギターを開発したことでも知られる.10弦ギターは,スペインの有名なギター製作者ホセ・ラミレス3世の協力を得て,パウリーノ・ベルナベが作製・開発したギターである.一般的なギター (6弦)に低音部の弦を4本追加したもので,演奏のためというよりも,倍音を均等にすることを目的として設計された.当初は,ナルシソ・イエペスしか弾きこなせないと言われていたが,6弦ギターにはない魅力があり愛好家も増えている.1941年のアメリカ映画『血と砂』に,劇中の挿入歌「愛のロマンス」として闘牛士が幼馴染の娘カルメンに求愛する場面で使われている.ビセンテ・ゴメスの編曲した「愛のロマンス」を自らが出演して弾いている.ナルシソ・イエペスも良いけど,ビセンテ・ゴメスの「愛のロマンス」もとても良い[4].ところで,藤の名所は各地にある.埼玉県では,春日部市にある「牛島の藤」が有名である.ムラサキフジの巨木で,国の特別天然記念物に指定されている.[5]は,「牛島の藤」を誰もが知っているギター曲である「禁じられた遊び」をBGMにして筆者がYouTubeにアップした.

[1]手塚健旨.「禁じられた遊び」の謎1 <禁じられた遊び>のテーマ音楽は作者不詳のスペイン民謡か?それとも作曲者はいるのか?』現代ギター誌 2012年5月号(No.578)                                                       [2]手塚健旨.「禁じられた遊び」の謎2 「ロマンス事件」を迷宮入り寸前とさせた犯人は誰か?現代ギター誌 2012年6月号(No.579)         [3]続・禁じられた遊びの作曲者は?http://nao2010.blog11.fc2.com/blog-entry-273.html?sp 千葉ソロギターサークル公式ブログ.         [4]ビセンテ・ゴメスの「愛のロマンス」の原曲を訪ねて https://ameblo.jp/kenkoutop/entry-11938032821.html
[5]牛島の藤 https://youtu.be/luD60u7p0KA


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