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終電までの2時間半。

「あー、何をどうやって伝えようかな。」
前日は考えすぎてほとんど眠れなかった。

私は今日、片想いをしていた人に振られた。誰かをこんなにも好きになったのは人生で初めての経験だった。

彼と知り合ったのは、去年のクリスマス頃。マッチングアプリで私が"いいね"を送ったのがきっかけだった。同い年で話しやすそうで、丁寧に自己紹介を書いている彼に惹かれて、私はいいねを送った。すぐに彼からメッセージが来て、どこに住んでいるのか・アルバイトは何をしているのか・本名はなんていうのか、などマッチングアプリの定番的な会話をした。思い返せば最初から、彼とはフィーリングが合うなと直感で感じていた。割とすぐにLINEを交換して電話をした。確かクリスマスイブの日。彼がバイト終わりに電話をしたいと言ってくれて、初めて話した。

「はじめまして、、、!」

凄くタイプな声だった。ちょっと低めのハスキーな感じ。この日はお互いの家のクリスマスケーキの話をしたり、ハマってる顔文字の話をしたり、初めて電話したとは思えないほどたわいもない話ですごく盛り上がったのを覚えている。

私は今まで何人かの人とマッチングアプリで会ったし、それ以上に電話もした。(この話はまた別の機会に綴ろうと思う。)しかし実際アプリの人は知らない人であるため、次第に連絡を取るのがめんどくさくなり、せいぜい2.3週間が限度だった。電話も一回すれば十分だった。

彼に対しても、初めは少しめんどくさいと思った。もともと私はあまり頻繁に友達と電話をするタイプではなかったため、夜電話しようと彼に言われても眠いふりをして断ったりしていた。しかし連絡を切る気にはならず、気付けば私から電話しようと誘う事もあった。そのくらい彼と話すのは楽しかったのだ。

今日のバイトの話・お互いの家族や友達の話・趣味の話・過去の恋愛の話・洋服の話・最近食べた美味しいものの話

今思い返してみても、彼にはなんでも話していたと思う。何かあったらすぐに友達に相談したいタイプの私と、あまり友達に相談しない彼。思ったことがあったらハッキリ相手に伝えてしまうタイプの私と、何を考えてるのか分からないほどあまりハッキリ言わない彼。性格が真逆だからこそ何でも話せたのかな。私の思い込みでなければ、彼も私にはかなり心を開いてくれて色んな話をしてくれていたと思う。私の、"思ったことをハッキリ相手に伝えるところ"が良い!と褒めてくれたりもした。それがすごく嬉しかった。

初めて会ったのは、やりとりを始めてから1ヶ月半後くらいの2月の上旬。私から会いたいと言って会うことになった。ホントか嘘か知らないが、彼はあまり自分から誘わないタイプらしい。私は今までアプリの人と会う時は向こう側から誘われたことしかなかったから、中々誘ってくれない彼に対して少し不安を抱いていた。

実際に会ってみると、彼は私のイメージ通りの人だった。話しやすくて面白くて、洋服もストリート系。何よりも店員さんに丁寧な態度なのが素敵だなと思った。少しだけお酒を飲んでいたのもあり、お互い初めて会ったとは思えないほど緊張せずに色々話せた。

「まだ解散するには早いね。」
ってなって公園のベンチで話した。少し酔っていたのと、夜の雰囲気もあってか、私たちは手を繋いだりキスをしたりしていた。

述べるのを忘れていたが、私は恋愛経験が乏しい。付き合った経験は中学生の頃しかないし、それも4ヶ月とかだ。ちゃんとしたお付き合いをした事がない。そして男友達と呼べる人も特にいない。

だから私は浮かれた。
「手を繋いだりキスをしたりするって事は、このまま私達付き合うって事だよね?」
と、内心嬉しさでいっぱいだった。

「そろそろ帰ろっか。」

どのくらい公園にいたのかあまり覚えていないが、帰ることになった。駅までの道、手を繋ぐことはなかった。
「私たちこれから付き合うのかな?」
とさりげなく聞いてみた。
「んー、まだ初めて会ったしわからないなあ。」
と彼は言った。

私の頭はハテナマークでいっぱいだった。

1ヶ月半連絡取って、毎日LINEでお互いの日常を話して、電話したりもして、会って手繋いでキスして、これで付き合わないってことある?恋愛ってこんなに難しいの?

こんな風に思ったのを今でも覚えている。

バイバイした後、この人はヤリモクなのかと思って幻滅した。でもやっぱり私は惹かれていたから、もう一度だけ会ってから決めようと思った。

2回目も3回目も手を繋いだりキスをしたりしてしまった。3回目に会った時は知り合って3ヶ月以上経っていて、その間も彼とはほぼ毎日LINEをしてたまに電話をしていたから、本当に仲が深まっていた。私に取って仲のいい大好きで大切な女友達と、変わらないくらい彼には何でも話していたし気を許していた。だからこそ、友達ならこんな関係は良くないと思った。

3回目に会った帰り道、私は意を決して彼に長文のLINEを送った。
これから恋愛に発展するならこういう関係続けてもいいけど、仲のいい友達になるならスキンシップはやめて欲しい、と。
彼は真剣に考えてくれて、長文で返してくれた。しかも泣いてくれたらしい。そのせいかわからないけど、終電を逃して8キロ走ったらしい。

なにこれ、
"花束みたいな恋をした"
みたいじゃん。終電逃すって。
って、彼とその後電話でも話した。

彼は謝ってた、こんな思いさせてごめんね、って。少し苦しかったけど、私は彼がちゃんと向き合ってくれたことがとても嬉しかった。

その後しばらくは、彼と本当に仲のいい友達として連絡を取り続けていた。

でもやっぱり私に取って彼は友達とは違う、特別な存在だった。

私の誕生日には0時00分におめでとうって言ってくれて、すごく嬉しかった。
誕生日プレゼントとして彼がくれたお手紙は、1枚分ぎっしりと文字が詰まってて感動して泣いた。
彼からいきなりかかってくる電話が嬉しかった。
深夜にリアルタイムで話してて、今日はこのまま電話する流れかな〜?ってワクワクするのが楽しかった。
電話の後にいつも私から連絡してる気がして、それが嫌だとわがままをいったら、電話の後に彼からも連絡をしてくれるようになったのが嬉しかった。
こっち通った方が道わかりやすいから、ってサラッと私の使う駅まで送ってくれたのが嬉しかった。

私が人生で初めて寝落ち電話というものをしたのも彼。
朝活しよう!って2人で話して、アマプラで同じ動画をみた。感想を言い合うのも楽しかったし、何より彼と同じ事をしてるのが楽しかった。
電話しながら、過去の自分たちの写真や今日行った場所の写真など、色んな写真を送りあった。
彼とのトークの写真欄は数え切れないほどの写真で溢れてる。
私の過去のブッサイクな写真も送ったし、本当に何でもさらけ出してた。
私のバイト先に就活帰りの彼がスーツで来てくれた事もあった。すっごく嬉しくて、でもそれと同じくらい緊張したのを今でも覚えている。笑

いつからか、おはようやお休みをLINEで言うようになり、毎日お互いのスケジュールを言うようになり、お互いの家族や友達について詳しくなっていた。

「それってもうカップルのやりとりじゃん。」

友達に相談した時、こう言われた。

「やっぱりそうだよね?」

恋愛経験が乏しい私でも、ただの友達同士でこんな連絡の取り方はしないだろうということには気付いていた。しかし、友達として連絡を取り続けているため、なかなか自分の気持ちを伝えられずにいた。

何度目かに彼に会った時、私は勇気を出して想いを伝えた。

「やっぱり恋愛として好きみたい。」

彼は

「今は就活中だから、誰とも付き合う気にはなれない。ごめん。でもこの先、就活が終わっても付き合うって保証はないから、待っててもらうのは申し訳ない。」

と言った。

その時は私も、就活が終わるまではしょうがないと思い、自分自身も就活を頑張ろうと思った。

その後も、彼と気まずくなることはなく今まで通りの連絡の取り方をしていたため、漠然と就活終われば付き合えるんだろうな〜!という期待で胸がいっぱいになっていた。

しかし今思えば、もし本当に私のことを彼が恋愛的に好きでいてくれていたら、就活中でも関係なく付き合ってくれていただろう。だって私がその期間に他の人と付き合う事だってあるんだから、取られたくないって思ったら就活なんて関係なく付き合うでしょ、それか就活終わったら付き合おうって言ってくれるでしょ。今なら痛いほどわかる。彼の恋愛対象に私は入っていなかったこと。

就活中、バイトもあまり入らず友達とも頻繁に会えない。そんな時にたまたま彼が知り合った女が私。話したいことを都合いい時にLINEや電話で話せる相手が私。フィーリングが合うから、友達として親密に連絡をとっていきたい相手が私。

彼は、私のことを好きだけど初めての感情でわからないと言っていた。

わからない好きって何?

好きってlikeとlove以外にもあるの?

真剣に考えてみたけどよくわからない。

電話で話してて、
「キュンキュンというより、落ち着く関係だよね、私たち。」
という話になったことがある。その時に彼が言った言葉が今でも忘れられない。
「これ、5年後だったら結婚しようってなるやつだよね。笑」
この言葉に深い意味なんてない、ってことはわかるが、意味深だからやめてくれ。
てか別にキュンキュンする恋愛が全てじゃなくないか?落ち着く恋愛でもよくないか?
ってすごく考えた。

7月になり、かれこれ彼と会うのは6回目になっていた。その頃には彼は就活を終えていて、私はまだ自分の夢を見つけられずダラダラと続けていた。1ヶ月以上ぶりに会った彼は全然変わってなくて、相変わらず楽しかった。

しかし、この頃になっても私のモヤモヤは消えず、私の彼に対してのこの感情がなんなのか確かめたかった。

もうすぐ終電が近い、ということで私は意を決して彼に「手繋いでいい?」と聞いた。
自分の気持ちを確かめるために。

彼は、「いいよ。」と言った。彼と手を繋ぐのは、3ヶ月ぶりだった。その間は、彼は全くスキンシップをとってこなかった。なぜなら私が3回目に会った時の帰り道に伝えた言葉を、真剣に考えてくれてたから。

彼と久しぶりに手を繋いでドキドキした。
彼もドキドキすると言っていた。

私は期待した。彼の就活も終わったし、付き合えるかなって。

「まだ気持ちはよくわからないの?」

と私は聞いた。
すると彼は、手を繋ぎながら

「うーん、今は仲良い友達って感じかなあ。」

と言った。
私は本当に絶望した。

友達なのに手繋ぐの?友達と手繋いでドキドキするの?え?どーゆうこと?

終電間際の電車に乗って帰った。電車の中でもモヤモヤが止まらなかった。
言いたいことをハッキリ言ってしまう私は、自分でもドン引くほどの鬼の長文LINEで彼に今の私の想いを伝えた。安定に彼は私にきちんと向き合ってくれたけど、彼は友達として私と頻繁にLINEしたり電話したりしたい、と言ってきた。

この時、きっとこの人とは本当に分かり合えないんだなと思った。都合よく使われているだけ、とも思った。

こんなにモヤモヤするなら連絡を取らない方がいいのかもしれない、と彼に伝えたら、任せる、と言われた。なんて無責任なんだと思った。私だけこんな苦しい想いをして。正直、彼との訳の分からない関係について考えて泣いてしまう夜、眠れない夜も沢山あった。

私は彼に依存気味だったのをやめたくて、彼との連絡を1ヶ月ほどやめてみた。その間は、友達と沢山遊んでバイトもして忙しい毎日だったから特に考える事もなく、むしろ連絡しない方が色々考えすぎないから楽だなあ、とさえ思った。

自分の気持ちが落ち着いたから、

「友達としてこれからも仲良くしよう」

というLINEを彼に久しぶりに送った。

彼は、久しぶりに連絡しても変わらず接してくれた。LINEでたわいもない話をして、たまに電話して。前ほどの連絡頻度ではないが、以前と変わらず彼と話すのは楽しかった。

しかし、しつこいようだが私の中のモヤモヤが再発してきてしまった。毎日連絡を取っていても会おうとは言われない、そもそも恋人じゃないのに何のためにこんなに毎日連絡をするのか分からない、やっぱり私は彼のことが恋愛的に好き、など色々考えた。

考えて考えて考えた末に思い付いたこと。
それは私の就活が無事に終わったら、彼と会って、こっぴどく振られること。

私にとってこのまま連絡を取り続けて、いつか付き合えるかもしれないと言う淡い期待を抱いているのが本当に辛かった。苦しかった。彼のことを考えるのも辛かった。苦しかった。

それならいっそのこと、もう連絡を絶つ方が楽なんじゃないかって。きっと1週間、いや1ヶ月くらいは立ち直れないけど。笑

就活が終わったから久しぶりに会おう、と彼に伝えて日にちを決めた。それが今日。何日も前から何をどう伝えるか悩んで悩んで泣いたりもした。今までのことを振り返ると、私に取って彼はとても大切な存在で、本当に仲のいい友達でもあったから、このまま失っていいのかな、とも考えた。

3ヶ月ぶりに会った彼は、全く変わっていなかった。相変わらず私の好みの服を着ていた。電話で話したりしていたが、やっぱり実際に会って話す方が何倍も楽しい。就職先の話やお互いの近況報告など、色んな話をした。沢山笑った。やっぱり彼のことが好きだなあと思った。


終電までの2時間半。


私たちは今日、彼の終電までの2時間半しか時間がなかった。1時間半ほど話しただろうか、

「話したいことがある。」

と私が切り出した。
彼は全く検討がついてないらしく、何の話かわからないと言った。

「今日で会うのは最後にしよう。」
「連絡も取るのやめよ。」

この言葉を皮切りに、私はその瞬間に思い付いた彼に言いたいことを全部話した。恋愛感情があるのに友達として仲良くするのが辛いこと、就活が終わったら付き合えるんじゃないかと思っていたこと、彼の好きなところ、他にも色々伝えた。

彼は目を丸くしていた。

多分本当に私とは仲のいい友達として数ヶ月間接していたのだろう。

私が話している途中、何となく彼が涙目になっている気がした。気のせいだろうと思っていた。

そして私はいつからか泣いていた。
泣くつもりなかったのになあ。
彼の前で泣いてる姿は見せたくなかったのになあ。
でも、辛くて苦しくて、自分の想いを伝えてたら涙が止まらなくなっちゃってた。

ふと彼を見たら、彼も泣いていた。

何であんたが泣くんだよ。泣きたいのはこっち。って私は何回も言った。

彼は、

「泣くつもりなかったんだけどな、涙出ちゃった。」

ってなんか真剣に泣いていた。

「だって絶縁するようなもんでしょ?本当にもう会えないの?」

って。

「俺が言える立場じゃないけど、、、」

って言ってた。

そんなこと言うのずるくない?私だって本当は会いたいし連絡も取りたい。でも辛いんだよ。ずっとモヤモヤしながらあなたとこれから先関わっていくのが。

私は彼に、

「もし私に彼氏ができたらどう思う?」

って質問をした。
すると彼は真剣な表情で、

「嫌だって気持ちより、応援したいって気持ちが強いかな。」

と言った。

ねえそれってもう答えじゃん。恋愛的には見てないってことじゃん。遠回しだけどすごくわかりやすい言葉。私は振られたのだ。

思い返せば彼はいつかの電話で私の事を、
"地元の友達の次に仲が良い存在"
と言ってくれていた。彼にとって地元の友達はきっと1番大切で仲の良いコミュニティなんだろうな、って話してて伝わってきてたからその次に私と仲がいいと言ってくれた時は嬉しかった。
今日も、
「俺友達多い方じゃないから、そのうちの1人と絶縁みたいになっちゃうの悲しい。」
的なことを言っていた。
うーん、彼も彼なりに苦しんでたのかな、ごめんね。

でも友達ならさ、髪の毛伸びたねって言いながら私の髪の毛触らないでよ。これ着てみなよ、って自分の洋服貸してこないでよ。今日は駅まで送れなくてごめんね。って言わないでよ。もう本当に連絡しちゃダメなの?LINE送っても既読つかないの?もう会えないの?って言ってこないでよ。

あなたにとって私が居なくなる(友達が1人減る)くらい、なんて事ないでしょ。

私にとってはあなた(人生で1番好きだって思えた人)が居なくなることは、とってもとっても辛くて苦しくて悲しいの。

帰りの電車、失恋ってこういう感じなんだっていう今まで感じたことのない痛みを実感した。
ベタな失恋ソングを聞きながら泣きながら最寄りまで帰った。
最寄りからは泣きながら友達に電話した。
家に帰ってお風呂に入って、そのあと夢中でこの文章を綴ってる。
気付けば3時間も綴ってる。
彼とのLINEのトークや写真を1から見返しながら、泣きながら。
もう余裕で、フラれてから日付を越しちゃったよ。実際にはフラれたの昨日だけど、今日ってことで書いていいよね。私まだ寝てないから、今日は今日のまま。
本当に自分でも気持ち悪いなー、って思うけど、それほど本当に彼のことが好きだった。

私に好きという感情を教えてくれてありがとう。
知りたくなかった感情も沢山あるけど、いろんな想いをさせてくれて、経験させてくれてありがとう。

またいつか、5年後とかに道端で偶然すれ違ったら面白いね。
流石にその時は"運命"って思ってもいいよね。

よくこんな言葉を聞く。

"見知らぬ男女が3回目までに何もなかったら、付き合うことはない"

私は気付けば彼と7回も会っていた。

どこで間違えたんだろうか。1回目の時に軽い気持ちで手を繋いだりキスをしたりしてしまったのがいけなかったんだろうか。

てかそもそもこんなに苦しい想いをするなら、出会いたくなかった。仲良くなりたくなかった。もっと初めに連絡を切っておけばよかった。


終電までの2時間半。
たった2時間半の短い時間で、
約9ヶ月の私の片想いに終止符が打たれた。

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