東京の女の子【短編小説】
「スマホ修理のビッグアップル新宿店」は、築50年の雑居ビル、新宿ラッキービルディングの4階にある。リンゴを擬人化したキャラクターの看板が目印で、呑気なビル名にふさわしい、普段は静かな俺の職場だ。だが俺はここで今、文字通り追い詰められている。
「そのスマホをよこせ」
いかついスーツの男が、接客カウンター越しに太い腕をねじ込んでくる。男の怒声に返事をする代わりに、俺は店の奥へと逃げた。わずか7坪の狭い店内は、あっという間にベランダに突き当たる。普段は締め切っているカーテンを真横