駅伝に想うこと。
長男の中学陸上部への入部を機に、その長距離ブロックのお手伝いをさせてもらうようになった。
コーチでもなく、外部指導員でもなく、
「やたら毎日部活にきては長距離のメニューを考えたり一緒に走ったりしている、マラソンを少しかじった陸上部保護者会長」
という表現が一番しっくりくるかもしれない。
そんな部活への関わりも早2年が過ぎた。
前置きが長くなってもアレなので、半ば強引に話を始めさせてもらう…。
陸上のトラック種目で一番盛り上がるのはやはり4×100mリレーであろう。
記録会にしろ大会にしろ、その日に行われる種目のオーラスはいつもリレー。
チーム全員でコース際まで出て応援をし、その一体感は物凄い盛り上がりを見せる。
反面、朝一で予選をこなし、リレー前に決勝を迎える長距離勢からしたら、内心メラメラした部分があっても然るべきだと思う。
そんな長距離。
その長距離の華と言ったらやはり駅伝であろう。(異論は認める)
1本の襷を命懸けで仲間へ繋ぐその様は、心を鷲掴みにされ揺さぶられる。
まだ少し気が早いが、今年も駅伝で中学生達の熱い走りが見れると思うと今から楽しみで仕方がない。
話は少し変わるが、最近某国立大学の長距離主将が、チームの駅伝偏重の中、駅伝をやりたくない選手達を憂慮し色々動いたが、結局監督と上手く行かずその座を降りた旨のtweet見た。
そのチームは、今話題の金栗四三氏の母校であり、最近箱根駅伝復活プロジェクトと銘打ち、クラウドファンディングを成功させている。
そんな矢先の出来事なのでかなり驚いた。
詳しい事は知る術もないが、そのtweetから「駅伝偏重による選手と監督との温度差」が感じ取れ、我が中学校と被る部分が多少あったので書き残しておこうと思った。
詳しい経緯は↓へ。(2019.11.27加筆)
https://4years.asahi.com/article/12880830
我が中学校にも駅伝部がある。
陸上部駅伝パートではなく、駅伝大会のために編成される「駅伝部」である。
学校の駅伝チームなのだから、そのチームは「部の垣根を越え、各部から選抜された選手で結成されたオールスターチーム」といきたいところだ。
がその実、全校をあげての働き掛けや、代表チームを作るという空気感が皆無だったため、ある種伝統的に陸上部だけで編成されてきた。
実際、過去に他部活の子数名に声を掛けてみたが、「興味はあるけど、どうせ陸上部だけでやるんでしょ?そんなとこに自分から入れないよ…」と断られたことがある。
そんな状態なので、長距離ブロックで人数を賄えなければ、やりたいやりたくないは丸めて短距離ブロックから何人か引っこ抜かれ駅伝チームに召喚されていた。
そんな陸上部だけの駅伝部。
他校は野球部、バスケ部、サッカー部にバレー部に。走れる人材をガンガン召喚し、中には長距離をやっている子が補欠なんて学校もあった。
なので我が校が大会で好成績を上げることは難しく、長らく「駅伝不毛の学校」と呼ばれてきた。
話を少し戻す。先ほど短距離の子を召喚してチームを…と言ったが、短距離と長距離とではエネルギー供給系や筋繊維の動員が全く違う。
燃費を競うエコレースにレーシングカーが出るようなもので、ザックリ言うと短距離の選手が長距離を走るのは超キツい。
もっと言うと速筋がいっぱいで遅筋が少なくてその中のミトコンドリアの量と質も違うから長く走らんない。
詳しくは↓↓。
https://sprint-condition.info/category38/entry395.html
https://sprint-condition.info/category10/entry204.html
もちろん、自分の意に沿わないこと、苦手なことにチャレンジして、それをやり遂げることによる内面の成長は期待できる。
それに、乗り気じゃなかった駅伝で自分の距離適性や楽しさに気付き、中距離に転向した子がいたのも事実。
そして過去駅伝を走った短距離の子達は皆立派にやりとげ、本当に素晴らしい走りを見せてくれた。
そう考えると正直悪い面ばかりではないとも思う。
反面、やりたくない子からしたら、そのストレスは心身共に相当の物だったと思う。
しかしその子達の助けがなければ駅伝大会に出場できないこと。
そして一時的にとはいえ、その子達の体を長距離仕様にマイナーチェンジするジレンマが自分の中にずっとあった。
駅伝は楽しい。超楽しいし面白い。
だからこそ、そのチームは「心からやりたい!走りたい!」と思った子達だけで作りたい。
ずっとそういう思いを持っていた。
そして顧問の先生が昨年替わった。
それで何か変わるかと少し期待していたが、やっぱり例年通りガッチガチの陸上部だけのチームで駅伝に出た。
男女共1、2年生だけのチーム。女子は5人中2人、男子は6人中2人が短距離からだった。
そんな中でも選手達は最大限の走りを見せてくれ、女子は県大会一歩手前まで迫った。
しかし、選手層の薄さは明白かつ致命的で、1人でも抜けると全く練習をしていないハードルの1年生を出さなければならない状況だった。
なので、故障していた女子長距離の2人は痛みを隠して走っていた。
切なかった。
その帰り際、意を決し顧問の先生に自分の考えを伝えることにした。
ただの「やたら毎日部活にきては長距離のメニューを考えたり一緒に走ったりしている、マラソンを少しかじったジョグばっかして酒ばっか飲んでいる陸上部保護者会長」が意見する事がいったいどうなのか?と、少し考えたが、でも話すのはタダだから、と申し入れてみた。
そのポイントは2つ。
「慣例を変え、広く希望者を募り、学校をあげての駅伝チームにしたいこと」
「可能な限り、やりたい子供だけでチームを作りたいこと」
そしてそれに対し最大限協力すると。
すると顧問の先生は、自分も全く同じ考えであったこと。前任校では学校をあげての駅伝部だったので、この学校でもそうしたいと思っていたが、転任1年目で伝統や流れが分からず様子見をしていた旨話してくださった。
また、「自分1人では手の回らない部分があるので、協力頂けるなら嬉しいです。そして、来年はしっかりとした駅伝チームを一緒に作りましょう!」と言ってくれた。
その言葉を聞き、良い先生が来てくれたなぁと嬉しくなった。
まず手始めに、先生が動き易いよう約半年を掛けて校長先生はじめ各先生方に考えを伝え根回しをした。
体育の先生に良さそうな子がいないか?とお酌しながら聞いたり、後ろ盾になってもらえるよう校長先生にお酌したりした。()
そういう謀は割と得意だ。
先生方に話すと皆賛同してくれた。
だが皆前からそうだと思ってはいても、何かを変えるにはエネルギーが必要だし、何より面倒くさい。
だから今までずっとそうだったんだろう。
そして顧問の先生の頑張りにより、ついに今年から広く入部者を募るキャンペーンを打つことになった。
各種地区大会が終わった先日、駅伝部員募集のビラを配り、お昼休みの校内放送で呼び掛けも行ってくれた。
「あれ?これでもし誰も来なかったらどうしよ…?」
そんな思いが時々頭をよぎったが、そのときはそのとき。今までだってゼロなんだから何も怖くはない。
そして校内放送を入れたと聞いた2日後、家に帰ると長男がニコニコと「駅伝に2人希望者が出た!」と教えてくれた。
こんなに嬉しいことはない。
こっちがお願いしたのではなく、向こうからきてくれたこと。
駅伝をやりたいと思っていた子がいてくれたたこと。
その子達が勇気を出して手を上げてくれたこと。
全部が嬉しかった。
彼等を「ファーストチルドレン」と呼ぼうか「ファーストペンギン」と呼ぼうか。
勇気を持って一番に飛び込んできてくれたんだから「ファーストペンギン」が良いかな。(どっちでもいい)
今日現在、男子1名、女子2名が仮入部をしてくれた。
そして昨日、初めて走っている姿を見たが超即戦力だった。何の問題もなく走ってくれるだろう。
今までの長距離メンバーに彼等、彼女等を加え一緒に走れる喜び。
新メンバーを迎え、明らかに刺激を受け、盛り上がる既存長距離メンバー。
そんな皆に駅伝をやって良かったと思って貰えるよう、これからの数ヶ月、出来うる限りのサポートをしたいと思う。
ところで、ここまで書いてきて冒頭話した某大学の話とは全然違う。
もっと言うと全然関係ない。
でも
「楽しいと思えるやりたいことを、やりたいようにやらなきゃ結果なんか出ない」
チームは選手の物であること。
その選手の力を最大限発揮させるのが監督、コーチの役割であって、その邪魔は絶対にしてはいけない。
それだけは己の肝に銘じこれからも一緒に走ろうと思う。
(ただのやたら毎日部活にきては長距離のメニューを考えたり一緒に走ったりしている、マラソンを少しかじったジョグばっかして酒ばっか飲んでいる最近夜中の2時に目覚める陸上部保護者会長より)←
(おわり)(そして長い)
サポートをしてもらったり、❤を押してもらっても全然かまわないからね。喜ぶよ。
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