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スナッチ、ロングサイクル2種目世界チャンピオン 最強女王 イリーナ・マルティノヴァ インタビュー
こちらの記事はケトルベルスポーツのバイアスロン世界チャンピオンの、イリーナ・マルティノヴァ(Irina Martynova)のインタビューの日本語翻訳となっております。
GIREVIK ONLINE様より許可を頂き翻訳及び掲載させて頂いております。文章の無断転載は一切禁止いたします。
インタビュアー Valentin Egorov
翻訳者 渡辺陽介
動画公開日 2023年11月25日
ケトルベルスポーツを始めたきっかけ
○ Valentin
イリーナ、こんにちは!今日はお会いできてとても嬉しいです。早速あなたのケトルベルスポーツについてお話を聞かせてください。あなたは、かなり早い時期からケトルベルスポーツを始めましたね。そしてすぐに頭角を現し始めました。ユースの大会で素晴らしい成績を収めると、その後すぐにマスター・オブ・スポーツのランクを獲得しました。そしてインターナショナル・マスタ・オブ・スポーツのタイトルも獲得しました。イリーナがケトルベルスポーツを始めたきっかけを教えてください。何があなたを魅了しましたか?すぐに気に入りましたか?そしてこれからもずっとケトルベルスポーツを続けますか?
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● Irina
こんにちは、バレンティン!そうですねケトルベルスポーツにすっかりハマってしまいました。(笑)
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順番にお話しします。私は13歳でケトルベルスポーツを始めました。私が住んでいた町は田舎で何もすることがありませんでした。その頃、ミハイル・アレクサンドロヴィッチ・トロフィモフのケトルベルのジムが出来たのです。
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この町にジムは無かったので、みんな珍しがって特に若い人は皆そのジムに通い始めました。でもその若い人たちはみんなすぐにジムを辞めてしまいました。私は普通のトレーニングをしたくてこのジムに通い始めたのですが、ある日ミハイル・アレクサンドロヴィッチがケトルベルを勧めてきたのです。私はケトルベルが何なのか、どのようなものなのかまったく知りませんでしたが、8kgのケトルベルを使ったスナッチに挑戦しました。私はすぐにケトルベルを気に入りました。技術的には未熟でしたがケトルベルの本質を徐々に理解していくとケトルベルがとても楽しいものだと感じたのです。
競技と学業の両立について
○ Valentin
ケトルベルのトレーニングを始めてすぐに競技も始めたのですか?
● Irina
そうですね。
○ Valentin
その時あなたは学生さんでしたね。学校を卒業した後、あなたは大学にも進学しましたね。どのように学業と競技の両立をしましたか?
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● Irina
勉強とトレーニングの両立はそれほど難しくありませんでした。でも毎日カルーガまで通学していたのでそれは大変でした。毎日家にも帰っていたのでトレーニング時間を短くしなければなりませんでした。勉強と同時進行でロシアチャンピオンシップとかワールドチャンピオンシップに向けたトレーニングもしなければなりませんでしたが、なんとか全てうまくいくことができました。
○ Valentin
勉強に費やす時間が増えて、トレーニングが出来ないということはありませんでしたか?
● Irina
それはあまり大きな問題ではありませんでした。今日、多くの学生がスマホに多くの時間を費やします。私が学生だった頃もスマホはありましたが、勉強とトレーニングの時間を確保するためにスマホをあまり見すぎないようにしていました。大事なのはトレーニングへの情熱です。もしトレーニングが好きならスマホを置いてトレーニングをする。トレーニングから帰宅した後には宿題をする。それが終わった後に時間があればスマホを見れば良いのです。もしスマホを見る時間が無かったとしても私は構いません。
でも私も時間が無いと感じたことはありました。それは卒業試験の時期でした。もっとトレーニングがしたいと思いましたが課題を終わらせて試験勉強をしなければなりませんでした。でも平日は遊ぶ時間はありませんでしたが、週末やバケーションでは遊んだり体を休めたりできました。世界大会に出場するために受験期間をずらしたりすることもありました。でも遊ぶことよりも勉強とトレーニングがなにより優先課題でした。それを理解していたのでうまく両立することができました。
女性がトレーニングすることについて
○ Valentin
次の質問に移りましょう。あなたは13歳という若さでケトルベルスポーツを始めましたがこれについてご両親は驚かれませんでしたか?また若い女性がケトルベルを始めることについての意見も聞かせてください。危ないと言われることはありませんか?
● Irina
もうケトルベルスポーツを始めて10年になりますが、いまだに両親は驚いていますね。(笑)私にとってケトルベルがなぜ必要かということが理解できないみたいです。
私は13歳でケトルベルを始めてから徐々にケトルベルの重さを増やしていき今は24kgで競技をしています。今でも多くの人が24kgのケトルベルは(女性には)重すぎると言いますが、私はそうは思いません。正しくトレーニングを続ければ誰でも出来るようになります。
○ Valentin
つまり、トレーニングを始める年齢に早すぎるということはないということですね。軽いケトルベルから始めて徐々に重たくしていけばよい。
● Irina
そうですね。でも私がケトルベルを始めた時、私はドーナツだったから。あ、それは今もそうか。(笑)
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○ Valentin
それはつまり、体が大きいということですか?
● Irina
そういうことです。(笑)だから私は重たいケトルベルを持ち上げることが怖くありませんでした。8kgから始めてすぐに16kgを持ち上げられるようになりました。重たいケトルベルを持ち上げられるかどうかさえ楽しかったんです。 でも、華奢な体格の女の子だと大変かもしれません。リザ・サフロノワも始めのうちは大変そうでした。
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でも彼女も私たちが行ったのと同じ方法でトレーニングし、それを続けていくうちに重たいケトルベルを持ち上げっられるようになりました。リサは今はケトルベルはお休み中ですが、彼女はケトルベルで怪我をしたことはありませんし今も元気です。あまり運動をしない同年代の人がたくさんいますが、 運動しない彼らと運動をしている私たちとではどちらが危険でしょうか。私は私達よりもそういう人の方が問題だと思います。
競技時のメンタルについて
○ Valentin
それでは今度はプロアスリートの話に移りましょう。あなたは近年のロシアチャンピオンシップそしてワールドチャンピオンシップの全てで勝利しています。しかし、あなたの記録に追いつきそうな強いライバルがたくさんいます。僅差での勝利も少なくありません。でもあなたの目はいつも自信に溢れています。そして必ず勝つ。あなたが競技中に何を考えているか教えてください。
● Irina
最近ロングサイクルの調子は良いんですけど、実はスナッチの調子があまり良くなくて少し不安があります。特にスナッチの競技中はこんなことを考えてしまいます。「隣のプラットフォームのポリーナは私の記録から8回少ない。競技は今8分を過ぎたところ。もし私が今ケトルベルを置いたら、彼女が勝つだろう。こんなことしたらコーチのミハイリ・アレクサンドロヴィッチに殺されちゃう!(笑)」
ロングサイクルは7分目からスピードを上げるようにしています。でも私は本当は5分過ぎたらスピードを上げるべきなのでしょう。でもそれが少し怖くて思い切って追い込み切ることが出きません。結局7分過ぎにスピードを上げて、競技が終わった後も少し体力に余裕が残っています。もし仮に「もっとやれ!」と言われてもきっと出来てしまうくらいには体力が残っています。
スナッチに関しては、私自身、何が足りないのか分かっていません。2018年のワールドチャンピオンシップではロングサイクルとスナッチの両方の世界新記録を更新することは簡単でした。しかし今は違います。いつも「今度こそ負けてしまうのでは」と不安になってしまいます。競技が始まる前からメンタル的に負けてしまっていることが多いです。子供の頃、同じような状況になって試合でアリーナ・バスキナに負けてしまったことがあります。私と彼女の記録は2~3ほどしか離れていませんでしたが彼女は最後にスピードアップしてそれで負けてしまいました。メンタルが大きく関わっていたと思います。
○ Valentin
ロングサイクルに自信があるのは、2位以下の選手を大きく突き放しているからかもしれませんね。
● Irina
そうかもしれませんね。それと私はまだロングサイクルを「新競技」と思っており、いつも新しいペースや新しい何かを試しています。1分間に8回行うペースはパスしたので次は1分間に9回、つまり90回の記録を達成したいです。今よりもペースを上げなければいけませんが、それと同時にまだ私にはそのペースで10分間行うフィジカルが足りていないのではないかとも思います。でもライバルも実力を伸ばしてきていますしこんなこと言っていられませんね!(笑)
○ Valentin
そうですね!今よりも強い強度でやらなくてはなりませんね!
● Irina
はい!
ロングサイクルを始めた時について
○ Valentin
ロシアでは以前ロングサイクルは公式種目ではありませんでしたね。公式種目となったのは2018年からです。ロングサイクルが公式種目になるとすぐにあなたはロングサイクルに着手しました。そして初めての大会にも関わらずもうすぐ50回に手が届くという素晴らしい記録を達成しました。どうしてすぐにそのような素晴らしい成績をおさめることができたのですか?
● Irina
実は私あまりロングサイクルは好きじゃないんですよね。(笑)
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○ Valentin
え!今でも好きではないのですか?
● Irina
はい。(笑)でも慣れました!でも今一番嫌いなのはジャークですね。(笑) 私が初めてロングサイクルで競技をしたのは地方の大会でした。その時の記録は43回でした。次に競技をしたのはロシアジブアチャンピオンシップで記録は45回でした。前回の大会より少し楽に出来るようになっていました。会場でミハイル・アレクサンドロヴィッチが「あげろ!」と檄を飛ばしてくれたのが良かったようです。
2018年ワールドチャンピオンシップのキンバリーとの激闘について
○ Valentin
2018年のワールドチャンピオンシップに向けてロングサイクルはどのような準備をしましたか?
● Irina
私はあの時コーチの指示に従って1分間に6回のペースの練習をしていまた。57~60回くらいが当初の目標だったのです。ちょうどその頃アメリカのキンバリー・フォックスがロングサイクル70回の動画をソーシャルメディアに投稿しているのを見ました。それを見て私は「こりゃ勝てないな」と思ったことを覚えています。
2018年のワールドチャンピオンシップは1日目がスナッチで2日目がロングサイクルでした。1日目は無事にスナッチの世界新記録を樹立することができました。これが2日目の良いモチベーションとなり、私はロングサイクルを1分間に7回のペースで行うことにしたのです。1分間に7回ロングサイクルをする私を見て周りは「ダメだ!速すぎる!」と叫んでいましたが、この時私は内心「1分7回できそう!」と思っていました。そして最終的に73回あげて世界新記録を樹立することができました。試技の後、コーチのミハイルは私に「お前は強い。もう1分間に7回なんて生ぬるいことは言わない。これからは1分間に8のペースでいくぞ!」と言ってくれました。
※参考写真
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○ Valentin
あれは素晴らしいフライトでしたね。実に劇的な勝利でした。
● Irina
あの大会のことは忘れることが出来ません。競技が始まった時、観衆はキンバリーの味方でした。 私とキンバリーは同じペースで始まりました。時折キンバリーが私より優勢になることもありましたが、10分まであと数十秒というところでキンバリーがケトルベルを置いてしまったのです。これによりなんとか勝つことが出来ました。あの時キンバリーは1番のプラットフォームで私は5番と離れていたので、競技が終了した時に私は自分が優勝したことに気づいていませんでした。
※参考写真
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○ Valentin
相手の姿が見えないのは大変だったことでしょう。それともお互いのプラットフォームが離れていたことが功を奏したのでしょうか。
● Irina
私にとっては良かったようです。あの時はロシアにここまで強い選手はいなかったので本気で戦いました。2018年はスナッチでも良い記録が出せて本当に良い年になりました。
思い出の大会
○ Valentin
もっとも記憶に残る大会はどの大会ですか?
● Irina
私は全ての大会をはっきりと覚えています。すべての勝利が私にとって大切な思い出です。最後のロシアジュニアチャンピオンシップでスナッチで2位になってしまった大会でさえはっきりと覚えています。だからどれか1つと聞かれると答えるのが難しいのですが、でも強いてあげるなら2017年のソウルで開催されたワールドチャンピオンシップですね。私と地域からはウラジミール・グロフ、ウラジミール・スミルノフ、そしてナタリア・ポベレズナヤが出場しました。みんな親友です。この時はコーチは一緒ではなかったのでウラジミール・グロフが私のコーチの役目を果たしてくれました。 ソウルとは大きな時差があるので、私は眠気がある中プラットフォームに行かなければなりませんでした。記録は156回で決して良い成績ではありませんでしたが、なんとか優勝することができました。そして翌年には2つの世界新記録を樹立することが出来ました。この2つの大会は本当に記憶に深く刻み込まれています。
ケトルベルスポーツの今後の目標
○ Valentin
2つの世界記録を樹立した2018年のワールドチャンピオンシップの後も、あなたは少しずつ記録を伸ばし続けていますね。これからの目標はなにかありますか?
● Irina
私はロングサイクルは100回、スナッチは220回を目指します。でもこの記録を出すためにはフィクセイションがしっかり出来ないとダメです。フィクセイションはとても難しい、だからこの記録に挑戦する前にまず厳格なジャッジがいるロシアチャンピオンシップで213回の自己記録をもう1度出したいと思います!こんなことコーチに聞かれたらますますトレーニングが厳しくなって家に帰れなくなっちゃうかもしれませんね。(笑)
○ Valentin
コーチは幸せだと思いますよ!
● Irina
そして最近はジャークにもチャレンジしています。昨年の大会では40回しか出来ませんでしたが今年は100回できました。来年は120回にチャレンジしたいです。とはいえ、これはそれほど難しいことではないと思っています。 最もチャレンジングなことはロングサイクル100回ですね!
○ Valentin
素晴らしい目標です!私たちも本当に期待しております。
● Irina
まだすぐには出来ないですよ!(笑)
○ Valentin
でもジャークに関してはあなたはもうすでに1分で10回のペースをチャレンジしていますし、実際に遂行も出来ていますよね。
● Irina
そうですね。でもまだ1分に12回のペースでトレーニングをもっと積まなくてはなりません。
○ Valentin
イリーナ、私たちは今私の出身地であるルイビンスクの街を歩いています。あなたはしばしば旅行するようですが、最も思い出深い国と地域はどこですか?
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● Irina
思い出深い国、それはもちろんロシアです。地域はサンクト・ペテルブルグ…でもそれはちょっとベタなのでヤロスラヴリということにしておきます。(笑)
○ Valentin
ええ!!ヤロスラヴリですか!!どのような思い出がありますか?
● Irina
2019年のロシアチャンピオンシップですね!
○ Valentin
2016年ですよ。(笑)
● Irina
そうでした!(笑)あの時は1レップ差で負けてしまいました。あれが私の初めてのロシアチャンピオンシップでした。でも、あの負けを悪いようには思っておりません。あの時は経験が浅かっただけで次に繋がる良い機会だったと思っています。私はヤロスラヴリの街が好きですね。あの時は夏だったかなぁ。緑が多くて全てが美しかったです。特に熊さんが!(笑)
※翻訳者注釈
ヤロスラヴリはヴォルガ川とコトロスリ川の分岐点に位置する河港都市で、1000年の歴史を持つ古都でモスクワの北東250kmに位置します。熊が街のシンボルになっており、街には熊のシンボルが多数あり市旗にも熊があしらわれております。
※参考写真
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○ Valentin
でも実物の熊はいませんでしたね。(笑)
● Irina
そうですね。市旗にもいたし公園にも花で作られた熊がいたのに。(笑) でもルイビンスクの街もきれいですね。ここ5年間で大きく変わったようです。なんて言うかサンクト・ペテルブルグの街並みに似ている気がします。
※参考写真
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○ Valentin
そうですね。多くの人が同じように感じています。
● Irina
この街にも美しい川と街並みがあります。。またここに来たいです!
○ Valentin
それはとても嬉しいです!また私たちの街に来てくれることを楽しみにしております。他に思い出深い場所はありますか?
● Irina
エストニアですね。私が初めてヨーロッパユースチャンピオンシップに出場した思い出の場所です。ワールドチャンピオンシップで訪れた韓国はご飯が美味しい思い出があり、ラトビアは2つの世界記録を樹立した思い出があって、でもエストニアはそれと違って歴史的建造物が本当に美しかったんです。タリン歴史地区が本当に美しかったです。
※翻訳者注釈
タリン歴史地区は、エストニアの首都タリンの旧市街に残る歴史的遺産で1997年ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。
※参考写真
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○ Valentin
タリンはすごく美しかったですね!
● Irina
はい。タリンが大好きです!
将来について
○ Valentin
イリーナ、あなたはオーナード・マスター・オブ・スポーツのタイトルを獲得しましたね。そしてロシアチャンピオンシップとワールドチャンピオンシップを数多く優勝しましたしこれからも優勝することでしょう。これからのあなたの将来について聞かせてください。なにか次の目標はありますか?
● Irina
それはまず来年のロシアチャンピオンシップとワールドチャンピオンシップですね!あと少なくとも2年は選手として活躍したいですね。でもコーチのミハイル・アレクサンドロヴィッチは「お前はいつになったら結婚するんだ?25歳になっても何もなかったらジムから追い出すぞ!」って。(笑)でももうすぐ25歳になっちゃうし25歳になったら本当に追い出されちゃうのかな?(笑)でもロシアチャンピオンシップは今まで6回勝っているのですが、10回優勝の記録も狙いたいですね!
○ Valentin
実に壮大ですね!ロシアチャンピオンシップだけじゃなくワールドチャンピオンシップも10回優勝することができますよ!
年間最高アスリート賞授賞について
○ Valentin
あなたは2021年にロシア非オリンピックスポーツ委員会から年間最高アスリート賞が授与されましたね。これについて教えてください。授賞理由はなんだったのでしょうか?
● Irina
実は全然分からないんです。(笑)授賞式はモスクワで行われて私の名前が入った像をもらいました。表彰は5個あって、年間最高アスリートが男女で1名ずつ、年間最高コーチも男女で1名ずつ、それから年間最高スポーツ連盟が1つ選ばれました。
○ Valentin
オリンプックスポーツではない全てのスポーツの中から選ばれるのですか?
● Irina
はい、そうです。
○ Valentin
ケトルベルスポーツの選手がこれを授賞することは初めてのことでしたか?
● Irina
そうですね。1年以上前からノミネートはされていましたが今回ようやく授賞することが出来ました。
○ Valentin
あなたが授賞したこともケトルベルスポーツの選手が授賞したことも両方とても栄誉なことですね!
アームレスリングについて
○ Valentin
あなたはケトルベルスポーツ以外にもアームレスリングに熱中しているようですね。そして、ただ熱中しているだけではなく全国大会にも出場するなど良い成績を収めているようです。アームレスリングにどれくらい熱中しているのか、どのような成果を上げたか、それらについて教えてください。
● Irina
数年前はケトルベルスポーツとアームレスリングの2つに真剣に打ち込んでいましたが、今はそれほど真剣に取り組んでいません。でも時々地方大会には出ることがあります。この経験があったから私は握力が鍛えられたんだと思います。アームレスリングでは手首をたくさん鍛えます。ケトルベルスポーツにアームレスリングのトレーニングが活きました。全国大会は年齢別の部門で2014,2015,2016年と出場しました。表彰台に登ることもありましたし、ナショナルチームのメンバーにも選ばれました。けれどケトルベルスポーツの大会とアームレスリングの大会のスケジュールが被るようになってしまい、ケトルベルスポーツの方が優先順位が高かったのでアームレスリングは辞めました。
○ Valentin
年齢別と仰りましたが具体的にはどのように分類されているのですか?
● Irina
ケトルベルスポーツと同じで14~16歳の部門と17~18歳の部門です。
○ Valentin
国際大会とかにも出場しましたか?
● Irina
いいえ、ケトルベルスポーツの大会と時期が重なってしまい出場できませんでした。
○ Valentin
アームレスリングを辞めてしまった1番の理由は時期が重なってしまうからですか?
● Irina
1番の理由はそれですがもう一つの理由はロングサイクルにありますね。以前は週に3回ロングサイクルはトレーニングすれば良かったのですが、今は少なくとも週に4回、時折4回以上トレーニングしなければなりません。それに今はジャークのトレーニングも始めました。これに加えて他のトレーニングもやらなければなりません。ケトルベルのトレーニング量が増えてアームレスリングとの両立が難しくなってしまったのがもう一つの理由です。
トレーニングについて
○ Valentin
今度はトレーニングについて聞かせてください。普段週にどれくらいトレーニングをするのか、大会前はどのようなトレーニングをするのか聞かせてください。
● Irina
私は日曜日以外の6日間トレーニングをします。そして日曜日はランニングをします。これはミハイル・アレクサンドロヴィッチのプログラムなのですが、私はたまに怠けてしまって、ランニングは大会前の日曜日にしかしないこともあります。トレーニングは必ずランニングから始まります。夏の時期は最低でも6kmくらい走ります。
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○ Valentin
トレーニング前に6kmもですか?
● Irina
はい。でもこれは少ない方で、体力強化の期間では1時間走ったり10km走ることもあります。でも1時間で10kmは走らないですよ。
○ Valentin
つまり、そこまで速く走る訳ではないということですね?
● Irina
はい、そうです。ランニングが終わったら更にウォームアップします。ジャンプしたりとかいろいろやります。
○ Valentin
ウォームアップはどれくらいやりますか?
● Irina
15~20分くらいですかね。でもたまに若い選手とおしゃべりしちゃいます。(笑)それが終わったらケトルベルです。月曜と木曜はロングサイクル、火曜と金曜はスナッチ、水曜はジャークをします。
トレーニングについて(ロングサイクル編)
○ Valentin
ロングサイクルのトレーニング内容について聞かせてください。
● Irina
ロングサイクルはいつも24kgでトレーニングします。
○ Valentin
ロングサイクルでは必ず24kgですか?
● Irina
はい。非常に稀に20kgか22kgを使用します。セット時間の合計が10~12分くらいになるようにトレーニングしています。たとえば2分セットを6セットといったようにです。予め回数を決めてトレーニングすることもあります。それが終わったら20~22kgのケトルベルを使用して5~6分セットを行います。これはクールダウンですね。
トレーニングについて(スナッチ編)
○ Valentin
今度はスナッチのトレーニング内容について聞かせてください。
● Irina
スナッチのメインのトレーニングは7分セットですね。それが終わったら20~22kgのケトルベルで5~6分ほどクールダウンを行います。大会が近い時は時々26~28kgのケトルベルでトレーニングすることもあります。
○ Valentin
7分セットの時は片手で3分半ずつ行う感じですか?
● Irina
はい、そうですね。それから時間で区切るのではなく時々回数をあらかじめ決めてからトレーニングすることもあります。例えば片手60回ずつといったような感じに。その後は20kgのケトルベルに持ち替えてトレーニングします。
○ Valentin
1回のトレーニングセッションでそれら全てを行うのですか?
● Irina
はい、そうです。今は1回のトレーニングセッションで24kgで120回と20kgで150回スナッチを行うことを目標としています。時々手のマメが痛むことがあります。そういう時は代わりにジャークをトレーニングしますが、ジャークはまだ分からないことばかりで。(笑)
○ Valentin
ジャークのトレーニングはまだ始めたばかりですもんね?
● Irina
そうですね。ジャークをしていると肩が痛むことがあります。だからあまり追い込みすぎず慎重にトレーニングしています。
リカバリーについて
○ Valentin
トレーニングのリカバリーはどのようにしますか?
● Irina
寝ることとあとはチョコレートですね!(笑)
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○ Valentin
チョコレートですか!(笑)確かに消費したカロリーを補えるし、リラックスもできますね!
仕事について
○ Valentin
次はあなたの仕事について聞かせてください。あなたはトレーナーとしても活動していますね。あなたが指導した選手が大会にも出始めていますね。
● Irina
はい。子供を対象にしたトレーニングのコーチをかれこれ3年やっています。始めはケトルベルではなく基礎的な運動でトレーニングをしていましたが今はケトルベルのトレーニングに切り替えました。これが本当に楽しくてトレーナーの仕事がもっと好きになりました。でも少し問題があるとしたら、この仕事をしていると帰るのが遅くなってしまうのです。いずれ家族や子供が出来たときのことを考えると少し不安ですが、でも今の仕事が好きなんですよね。
○ Valentin
スポーツの分野には他にもたくさん仕事がありますよね。もしかしてトレーナーよりももっと向いている仕事があるかもしれませんよ。
● Irina
私はトレーニングの研究者としての仕事もあります。この仕事も私は好きで、選手としてのキャリアを終えたらまずスポーツ系の学校で研究者として働きたいです。しばらくしてそれが落ち着いたらトレーナーをやりたいですね。
○ Valentin
現在トレーナーもやりながら研究者もやっているんですね。仕事の量が多そうですが、あなたのようなトップレベルのアスリートだとトレーニングに影響はありませんか?
● Irina
確かにトレーニング量を確保するのは難しいですね。時々トレーニング量をカットしなくてはならない時もありますが、なるべくそうしないようにしています。でも選手としてキャリアは永遠ではなく、遅かれ早かれいつか終わります。だから今のうちになにか新しいことを学ぶことも必要だと思っています。
○ Valentin
あなたの1日は非常に長そうですね。仕事を終えてからトレーニングをする。最後にトレーニングした時はどれくらいの時間トレーニングしましたか?
● Irina
4時間くらいですかね。研究者の仕事は3時間半、それからトレーナーの仕事を4時間。それからトレーニングです。
○ Valentin
それはすごい!チョコレートが絶対必要ですね!(笑)
● Irina
そうなんです!(笑)
最後に
○ Valentin
イリーナ、今日は遅い時間までお付き合い頂きありがとうございます。最後にこれを見ている世界中のケトルベルリフターに一言お願いできますか?
● Irina
今若い人はパーティーに出かけたりスマートフォンをいじってばかりいますが、皆さん、スマートフォンを置いて全力でトレーニングをしましょう!パーティーに行くのではなくコーチや先輩チームメイトの話を聞きましょう!頑張ってスポーツの成績をあげましょう!皆さんのケトルベルスポーツが良くなることを祈っています!
○ Valentin
イリーナ、今日はありがとうございました。私たちもあなたが今後もケトルベルスポーツで優勝し続け新しい記録を打ち立てることを祈っています!
● Irina
ありがとうございました