非親族承継における所有と経営の分離 〜中小企業の事業承継におけるケーススタディ〜 Separation of Ownership from Management Observed in Business Successions to Non- Family Persons 〜A Case Study of Business Successions among SMEs〜 久保田典男 横浜国立大学大学院 Norio Kubota Yokohama National University
前置き
中小企業の事業承継に関して、経営能力の高い第三者への承継が近年注目されている。
非親族の承継者が事業承継を契機に経営革新を遂行した事例分析を通じて
①非親族承継において何故所有と経営の状況に違いがみられるのか
②所有と経営が分離した中(承継者が創業者一族から株式を買い取らない中)で、何故承継者が経営革新を遂行できるのか
を考察する論文となっている。
上記の考察の背景に
① 何故か所有と経営の状況に違いがみられるのかなどについて、踏み込んだ考察がなされていない。
② 所有と経営が分離した状態の中でも、承継者が経営革新を遂行する企業が存在する。
がある。
要約
考察の結果、「非親族承継の企業で所有と経営の状況に違いが生ずる要因」について、個々の事例分析からは「創業者一族との関係」が影響していることが示されていた。
(創業者一族による経営への関与や影響がほとんどない状態で、現社長に経営の重要な事 項に係る意思決定や施策運営が委ねられているなど、創業者と経営者の距離感を指している)
「所有と経営に違いが生ずる背景」は、企業の状況によって様々だが「承継時の事業環境」なども関連していると考えられる。
「所有と経営が分離した非親族承継の企業」が「経営革新を遂行できる要因」としては
・創業者一族との間に信頼関係が構築されていること
・事業承継までの十分な準備期間が確保されていること
が示されている。
創業者一族との信頼関係構築は、これまでの後継者の経営手腕発揮の実績に加え、後継者がオープンな経営を志向したり、従業員・取引先・金融機関などのステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを図ったりすることによってもたらされる。
所有と経営が分離している状況下では、このような取組みが特に強く求められると考えられる。
概要
この論文、サラ3(サラリーマンは300万円で会社を買いなさい)、実際に会社を経営している私の身の回りの人を通して思うのは、結果として外部からのM&Aを行い成功に繋げるには、経営力や思考力といったものよりも「コミュニケーション能力・打ち解ける力」が最も必要だと私は考える。
要約でも記載したが、筆者は「経営革新を遂行できる要因」に、「信頼関係と事業承継までの十分な準備期間の長さ」を挙げている。準備期間はコミュニケーション力の有無によってより短い期間で充実した時間を確保する事ができるか否かが決まると考えられる。すなわち、準備期間は打ち解ける早さを早くすればするほど短く短縮できると言える。
中小企業に関する外部からの事業承継に関して、様々な提案や議論が行われているが、政策的な視点ではなく、「コミュニケーション」により焦点を当てた支援方法があってもよいのではないかと思う。