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スタバではグランデを買え!
「前置き」
日頃から面白そうな本、自分にとって勉強になる本はどこかにないかなと思い探している中で、この本に記載してあった「値段から社会の仕組みが見える」「経済学を通して社会の裏側を知ろう」というキャッチコピーもさることながら、なにより題名の「スタバではグランデを買え!」に釣られて買ってしまった。
かくいう私はアメリカで生活する経験をして以来、スタバに行った際はベンティ(スタバの最も大きなサイズ)しか頼まないようになってしまった。
それはスタバだけではなく、基本的にどこのカフェに入った際であっても一番大きいサイズを頼む。向こうの食べ物・飲み物は何でも大きくて、日本の標準サイズに物足りなくなってしまったことがなによりの理由だ。
だが理由はこれだけではなく、何の根拠もないが「大きいサイズを買う方が実際お得なのではないか?」という貧乏精神・元を取りたい精神が働いていた側面もあった。
本の題名を読んで「私のこの考えが本当に合っているのか否かをこの本から知る事ができる!」と考え、購入に至った。
実際答えは見つかったのか。
ぜひ今回のまとめも最後まで読んで見て欲しい。
「注意点」
本書は2012年1月10日第一刷発行の通り、今から12年前の本になる。
その為、わかりやすいようにとして例題で出される内容が古い。
経済学的な観点で描かれているが故に、コロナ以降の急激なインフレによって様々な変化をした2024年11月現在に読むとズレを感じざるを得ない。例えば、「企業の価格戦略」の例として取り上げられた「携帯電話料金」に関して、本書執筆時点(2007年5月末)になっていると本書でも記載があるなど(本文で取り上げるコーヒー料金もそう)
例として取り上げられる時系列が古いことは認識しておく必要あり。
しかし、「世の中が全てコストによって説明できる」という経済的な視点を学ぶ上で全く問題になることはないのでぜひ読むべきだと思う。少なくとも私は本書で様々な発見をしたことで、世の中の見え方と株投資に関する視点・視野が広がった。この事実だけは伝えておきたい。
「以下本文」
本書の中心課題の一つは「同じものが全て違う価格で売られている理由を探ること」であり、そういった価格差はすべて「コスト」に着目して説明できる。
「コストによって説明できる」とはどういうことか。
それは「私達が生活していく中で購入する物やサービスの原価を突き詰めて考えていくと、私達の消費支出の大部分は広い意味での取引コストに対する支払いになっている」
ということ。
それを理解できる一つに第五章の「スターバックスではどのサイズのコーヒーを買うべきか」がある。
本書のように長文を用いて細かく説明すると非常に理解しやすいが、私の手が壊れてしまうのでここではなるべくわかりやすく簡単に説明する。
スタバのような店は「シアトル系エスプレッソカフェ」と呼ばれ、同じような品揃えで全国展開しているものにタリーズコーヒーなどがある。
この「シアトル系エスプレッソカフェ」には概ね共通した価格設定ルールがある。
それは、「Sサイズの価格が相対的に安い飲み物でも、相対的に高い飲み物でも、サイズが2倍ならば価格は100円だけ高くなる」というものだ。
(以下の図のような感じ)
![](https://assets.st-note.com/img/1730793611-tzYwmjfsgkQ4ARFKGaLBqui5.png?width=1200)
このような価格設定はコストの面から合理的に説明できる。
「カフェが1杯のコーヒーを提供する際にかかるコストのうち、コーヒー豆やミルクなどのコストが占める割合は非常に小さい」
「カフェでコーヒーを飲みたい時の私達は「自分が飲みたいタイミングで美味しいコーヒーを淹れて貰い、雰囲気の良い店内で飲むことができるサービスを買っている」
という点がミソだ。
コーヒー豆にかかる原価は非常に小さく、Sサイズのコーヒーに使う量の豆が店に運び込まれた段階での原価は大まかに10円~20円程度。そこにミルクやチョコレートなどのトッピングが入ったメニューを考慮しても、Sサイズ=240CCの飲み物の原価は1杯15円~40円程度と想像できる。
(押さえておくべきは、本書では2007年5月末時点での価格を元に説明しているので、現在ではインフレの影響もあり価格が上昇していると考えられる)
ここにカフェで働く定員・家賃・電気・水道・ガス・コーヒーを入れる容器やストローなど、様々なコストを入れて計算した際、1杯当たりの利益は微々たる物になる。
なので、カフェの経営者は「来客数」と「客単価(1回の来店で注文する金額)」が大きくなるように努力する。
ここで上記で記載した価格設定を考える。
注文が普通サイズからWサイズに変わった際(サイズを2倍にする事で追加された240CC)にだけ注目すると、それがどんな飲み物でも、ほぼ飲み物の原価分しかコストはかからないと考えられる。
よってWサイズを頼んでくれる客は店側から見て「効率良くたくさん儲けさせてくれる客」となる。店にとって一番儲かるので、売れて欲しい商品はWサイズになる。
このことから普通サイズとWサイズの価格差を100円以内に抑えることによって、Wサイズを魅力的に見せ、できるだけ注文して貰おうと誘導する。(そのほうが合理的)
だからと言って、Wサイズを頼む客が普通サイズを頼む客より損しているかというとそうではない。追加の240CCを+100円で飲めるので、1度にたくさんのコーヒーを飲みたい人にとってお得になる。
いろいろな物やサービスを取引(売買)する際に、取引される物やサービス以外に生じるコストを本書では「取引コスト」と呼んでいる。
カフェで出されるコーヒーでは、コーヒーなどにかかる原材料は非常に小さく、人件費のお占める割合が大きい。しかし、コーヒーを淹れるという1~2分の作業だけ見れば、人件費もさほど高くない。来店に備えて待機する・準備や片付けにかかる時間に対する人件費が大きい。
様々な形で生じる取引コストだが、上手に節約する方法があればその分だけ消費者や企業は利益を得ることが出来る。
その為「取引コストの節約」という視点から分析する事で、色々なビジネスの本質が理解出来ることがあり、消費者は「自分が負担するコスト」「店やメーカーが負担してくれているコスト」など、「色々な割引コスト」を意識する事が大切だと言える。
このような「取引コスト」に焦点を当てて展開される本書は、スタバの例に限った話だけでは無く、本当に広く様々なジャンルに焦点を当てて展開している。
私が個人的に面白かったのは、
・高機能品ほど高い利益率になる価格設定をしている
・100円ショップはどのようにして経営されているのか、その仕組み
・経済格差が現実的になかなか是正できないのはなぜ?というテーマで、所得格差より資産格差のほうが問題
・経済学を学ぶ際、「比較優位と実質金利」の2つだけ覚えておけば将来役に立つ
・「何か資格があると仕事をするのに有利」「容姿が美しい方が仕事をするのに有利」 ではない理由
一押しだったのはこの二つで
・「子供の医療費の無料化」は本当に子育て支援になるか?
一見ぱっと聞いたら良いことのように聞こえる各政党における公約も、深くしっかりと考慮すると、学のない国民がどれだけ多くだまされているのかという事実を理解する事ができた。
自分はアホだ!。けど勉強したい!と思う私のような人はぜひ見て欲しい。
・財務省や政府の無駄金、無駄遣いが具体的にどれほどひどいのかの実態理解
国が本来投資しなければならないものを削減して、大きく宣伝効果のある目で見えやすいもの(しかし必要性という意味で懐疑的な案件)に私達のお金を利用している事実を確認できる。
ぜひ気になった方は本書を実際に読んで理解してみると、より世の中の見え方が変わって面白いと思う。
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