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日本人の選挙行動綿貫譲治 ・三宅一郎猪 口 孝 ・蒲島郁夫著

今回、本書籍を取り上げた理由としては日本人の選挙に対する考え方や価値観といった知見を広げたいという点が主な理由だ。
近年の日本において、若者の投票率が極めて低いことが社会問題化されており、その影響によって政治家達も高齢者に焦点を向けた政策ばかりを打ち出す結果となっている。
少子高齢化の影響で若者が減り高齢者が増える為、高齢者に向けた政策を打ち出す事自体は理解できる。だが、今後の日本を担うのは若者であり、若者がいつの時代も重宝される時代で無ければ、その国自体はやがて滅んでしまうと考えられる。
おそらく今後も日本で生きて行くだろう自らの人生を考える上でも、日本人の選挙行動については理解をしておく必要があるだろうと考えた。

 本章では、日本では極めて早くから体系的数量的に日本人の投票行動研究をはじめ、これまで日本の投票行動研究をリードしてきた二人を含む、政治学・社会学・政治経済学を専攻する4人の著者が、これまで国内及び国外の研究者達によって投票行動を規定する要因として考えられてきたほとんどすべての要因を問題にして分析している。
この投票行動を規定する要因として考えられるものの具体例としては、有権者のデモグラフィックな属性・価値観・イデオロギー・政党支持・政治的シニシズム・選挙動員・候補者の認知及び評価・政治参加・経済状況・選挙の争点・政党帰属意識などが挙げられる。
今回の分析は日本の投票行動研究を踏まえた上で、さらに欧米の研究を踏まえている事から、分析を進めていくためのデータの収集にあたって大切な調査票の質問文の作成にこれまでの内外の研究が十分に生かされている。

 上記からも理解できるように、本書は実証的数量的な国勢レベルの選挙の投票行動研究のあり得べきはほとんどすべてのものを網羅しているといっても過言ではない。
しかし、それだけに課題も見つかっている。
その一つに、それぞれの研究者が分担した領域でそれぞれの分析と執筆をしている感が強く、投票行動に直接影響を与える様々な要素が全体として統合的に分析されたように感じにくい仕上がりになっているという点が挙げられる。
その為、全体を通した一つの結論が導き出されるような仕上がりにはなっていない。

 だが、これには理由も存在しており、長期的な「日本人の選挙行動」についての理論化あるいはモデル化を目指すことこそが最初の目標として設定されていたからという背景が存在する。
その為、本書では同一研究機関に所属していない複数のメンバーが大きな企画に取り組むという点が一番重要視されているとも捉える事ができる。その為、まだ制作途中の段階であると考えられる。

 よって、数量的分析の方法に関する問題・選挙ごとの社会状況の違いやそれに伴なう争点の変化を、政党支持や投票行動の変動とどう関連づけていくのか・諸外国のデータと比較検討していく場合、欧米とは異なる選挙制度、政党構成がどのように日本人の選挙行動に作用しているのかなどの問題点が複数残されている。

 まとめとして、本書では日本人の選挙行動について明確な結論を見いだすことはできなかったが、その行動を分析する上でどのような手法をとればよいのかなどをはじめとして、様々な知見を広げる結果となった。また同時に最終的な結論を明確に語句として記載する事の必要性を改めて理解する事もできた。

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