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100)大根おろしは寿命を延長する?

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術100

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【体は毒を解毒する酵素を持っている】

体内に毒が入ってくると、体を守るために、それらの毒を解毒する必要があります。

通常、薬物や発がん物質などが体内に摂取されると、肝臓などの細胞内にある酵素の働きによって解毒されて体外に排泄されます。このような解毒酵素は大きくフェース1酵素群(phase 1 enzymes)とフェース2酵素群(phase 2 enzymes)に分類されています。

フェース1酵素(第1相解毒酵素)は物質を酸化したり加水分解して物質を変換します。フェース2酵素(第2相解毒酵素)は抱合反応などによって解毒する作用を持っています。このような薬物代謝酵素は多くの場合薬物の作用の消失を導くことから、解毒反応と呼ばれています。しかし、フェース1酵素群は場合によっては、発がん物質の前駆体を活性化し、発がん性を持たせるように働くこともあります。


一方、グルタチオン・S・トランスフェラーゼ、 キノン還元酵素などのフェース2酵素は、DNAの変異を起こす発がん物質を不活化する作用を持っているので、フェース2酵素の量を増やす作用がある食品や薬物はがんを予防する効果があります。

アブラナ科の野菜にはがん予防効果が報告されていますが、その最も大きな理由は、アブラナ科の野菜に多く含まれている辛味成分にフェース2酵素の量を増やす作用があるからです。
 
ジョンズ・ホプキンス大学のポール・タラレー博士らは、ブロッコリーに含まれるスルフォラファン(Sulforaphane)という辛味成分がフェース2酵素の合成を誘導する効果が強く、がん予防に効果があることを1994年に発見しました。その後も多くの研究でアブラナ科野菜に含まれる成分のがん予防効果が確認され、そのメカニズムの研究が行われています。



【スルフォラファンはアブラナ科植物の生体防御物質】

アブラナ科の植物はグルコシノレートという物質を含むのが特徴です。グルコシノレートは分子中にイオウ(硫黄)原子を含み、グルコースが結合しています。グルコシノレートにはグルコース以外の部分の構造が異なる多数の種類が知られています。

このグルコシノレートはミロシナーゼという酵素によって分解され、イソチオシアネートという非常に辛い物質に変化します。グルコシノレートは細胞内ではミロシナーゼと接触しないように安定して蓄えられていますが、昆虫などの捕食者にかじられると、細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼが接触して酵素反応が起こり、イソチオシアネートが生成するのです。
 
イソチオシアネートはアブラナ科植物が昆虫などの捕食者から身を守る防御物質です。ワサビや大根を擂り下ろすと辛みが出てくるのは、イソチオシアネートが生成するためです。


図:グルコシノレート(①)は分子中にイオウ(硫黄)原子を含み、グルコースが結合している。グルコシノレートは植物内でミロシナーゼ(②)と接触しないように安定して蓄えられているが、昆虫などの捕食者にかじられると、細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼが接触して酵素反応が起こり、イソチオシアネート(③)が生成する。


がん予防物質として有名なスルフォラファンは、グルコシノレートの一種のグルコラファニン(glucoraphanin)という物質がミロシナーゼによって分解されて生成します。つまり、スルフォラファンはイソチオシアネートの一種です。細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼが反応して生成するイソチオシアネートは昆虫などの捕食者を忌避させる効果を発揮します。

グルコラファニンはブロッコリーやカリフラワーやキャベツに多く含まれています。スルフォラファンは抗酸化酵素やフェース2解毒酵素の活性を高めて、強いがん予防効果を発揮することが知られています。


図:グルコシノレートの一種のグルコラファニンがミロシナーゼで分解されるとスルフォラファンというイソチオシアネートが生成する。
 
 
アブラナ科の植物に見られるグルコシノレートとミロシナーゼのシステムは、最もよく研究されている植物の化学的防御の1つです。
 
ミロシナーゼ(myrosinase)はβ-チオグルコシダーゼとも呼ばれ、グルコシノレートのグリコシド結合を加水分解して、硫酸基を離脱させることでイソチオシアネートを生成します。
 
グルコシノレートとその加水分解酵素であるミロシナーゼは、無傷の植物組織の別々の区画に保管されています。組織が破壊されると、グルコシノレートの生物活性化が開始されます。
 
つまり、ミロシナーゼはそのグルコシノレート基質にアクセスし、グルコシノレートの加水分解により、毒性のあるイソチオシアネートおよび他の生物学的に活性な生成物が形成されます。グルコシノレート-ミロシナーゼ系の防御機能は、さまざまな昆虫や草食動物を用いた多くの研究で実証されています。



【スルフォラファンは転写因子のNrf2を増やす】

フェース2解毒酵素の遺伝子の発現調節領域には、抗酸化反応エレメントという領域があって、Nrf2という転写因子が結合するとフェース2解毒酵素の発現が誘導されます。 
 
イソチオシアネートなどのフェノール性抗酸化剤はmitogen-activated protein kinases (MAPK)を活性化して、転写因子のNrf2が細胞核内に蓄積し、遺伝子の抗酸化反応エレメントへの結合を促進して、抗酸化に働く種々の遺伝子の発現を誘導して酸化ストレスを軽減させる作用があります。転写因子のNrf2は、抗酸化機能や解毒機能を持つ様々な遺伝子の転写を誘導します。


活性酸素種の産生によりもたらされる酸化ストレスは,DNAやタンパク質や脂質などの生体高分子を酸化することで細胞や組織に傷害を与え、がんや糖尿病や腎臓疾患や神経変性疾患など様々な疾患を引き起こす原因になります。
このような酸化ストレスに対する防御機構において重要な機能を担っているのが、Keap1-Nrf2システムです.

正常細胞において酸化ストレスの無い状況では、Nrf2はKeap1(Kelch-like ECH-associated protein 1)というタンパク質に結合することによりユビキチン化を受け、分解しています。
 
しかし、酸化ストレスにさらされるとKeap1のシステイン残基が修飾を受けて構造が変化し、Keap1からNrf2が離れて核へ移行し、遺伝子上流に存在する抗酸化剤応答配列(antioxidant response element: ARE)に結合することによって、このARE配列をもつ様々な遺伝子(抗酸化酵素やグルタチオンの合成に関与する酵素やフェースII解毒酵素など)の発現を誘導し、抗酸化や解毒に関するタンパク質や因子の合成を高めます。


このような作用によって、正常細胞や前がん細胞においては、Nrf2の活性を亢進するNrf2活性剤は発がん過程を抑制するので、がん予防物質として認識されています。このようなNrf2の活性化を介したがん予防物質としてスルフォラファンやクルクミンやレスベラトロールなどが報告されています。


図:Keap1-Nrf2システムは酸化ストレスや有害物質に対する防御機構において重要な役割を担っている。転写因子のNrf2は細胞質でKeap1によって分解が促進されることによって活性が抑制されている。酸化ストレスが加わると、Keap1の構造が変化してNrf2から離れ、フリーになったNrf2が核内に移行して、抗酸化酵素や解毒酵素の遺伝子の上流に存在する抗酸化剤応答配列ARE(antioxidant response element)に結合して、これらの遺伝子の発現を亢進する。



【スルフォラファンはヒストン脱アセチル化酵素を阻害する】

スルフォラファンにはヒストン脱アセチル化酵素阻害作用が報告されています。例えば、以下のような報告があります。

A novel mechanism of chemoprotection by sulforaphane: inhibition of histone deacetylase.(スルフォラファンによる化学予防の新たなメカニズム:ヒストン脱アセチル化酵素の阻害)Cancer Res. 2004 Aug 15;64(16):5767-74.

スルフォラファンはヒストン脱アセチル化酵素を阻害する作用があるという報告です。

ヒストンはリシン(リジン)やアルギニンといった塩基性(プラスの電荷をもつ)のアミノ酸が多く、酸性(マイナスの電荷をもつ)のDNAと強い親和性を持っています。

ヒストンは、長いDNAをコンパクトに核内に収納するための役割と同時に、遺伝子発現の調節にも重要な役割を果たしています。ヒストンによる遺伝子発現の調節は複雑ですが、簡単にまとめると、「ヒストンとDNAの結合は転写に阻害的に働く」ということです。

遺伝子がmRNAに転写されるためには、転写因子やRNAポリメラーゼなどの他の蛋白質がDNAに結合する必要があり、ヒストンが結合していると転写に邪魔になります。したがって、転写の活発な遺伝子の部分ではヒストンとDNAの結合が緩くなっています。


図:細胞核内でDNAとタンパク質(ヒストンなど)の複合体をクロマチンという。クロマチンが凝集している部分はDNAが強く折り畳まれており遺伝子転写が抑制されている。一方、クロマチンが緩んでいる部分は、遺伝子の転写が活発になっている。
 
 

DNAとヒストンの結合を緩くする機序として、「ヒストンのアセチル化」という現象があります。アセチル化というのはアセチル(CH3CO)基が結合することです。


ヒストンのN末端領域のリシン残基のアミノ基(-NH2)がアセチル化という修飾を受けるとアミド(-NHCOCH3)に変換し、リシン残基の塩基性が低下して酸性のDNAとの親和性が無くなり、DNAからヒストンが離れ、DNAが露出することになります。



図:ヒストン・アセチル基転移酵素によってヒストン・タンパク質のリシン(リジンとも言う)のアミノ基(-NH2)にアセチル(CH3CO)基が結合するとアミド(-NHCOCH3)に変換し、リシン残基の塩基性が低下して酸性のDNAとの親和性が無くなり、DNAからヒストンが離れ、DNAが露出することになる。その結果、遺伝子の転写が起こりやすくなる。

 
 
 
一般的に、ヒストンが高度にアセチル化されている領域の遺伝子は転写が活発に行われていることを示しています。すなわち、ヒストンのアセチル化は遺伝子発現を促進(正に制御)し、 反対に、ヒストンが脱アセチル化(低アセチル化)されることにより遺伝子発現は抑制(負に制御)されると考えられています。


ヒストンのアセチル化と脱アセチル化の反応は「ヒストンアセチル基転移酵素(=ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)」と「ヒストン脱アセチル化酵素(=ヒストンデアセチラーゼ)」によってダイナミックに制御されており、遺伝子発現のON/OFFのメインスイッチになっていると考えられています。アセチル基はグルコースや脂肪酸の分解によって産生されるアセチルCoAが使われます(下図)。


図:ヒストンアセチル基転移酵素はヒストンをアセチル化することによってクロマチン構造を緩めて遺伝子転写を活性化する。一方、ヒストン脱アセチル化酵素はヒストンのアセチル化を減らすことによってクロマチン(DNAとヒストンの複合体)を凝集して遺伝子転写を抑制する。アセチル基はグルコースや脂肪酸が分解して産生されるアセチルCoAから供給される。
 
 
 
 細胞のがん化の過程で、ヒストンや非ヒストンタンパク質の脱アセチル化が進むことが明らかになっています。そして、がん細胞ではヒストン・アセチル基転移酵素の発現や活性が低下し、逆にヒストン脱アセチル化酵素の発現と活性が亢進していることが明らかになっています。


図:ヒストンや非ヒストンタンパク質のアセチル化の状況はヒストン・アセチル基転移酵素(HAT)とヒストン・脱アセチル化酵素(HDAC)のバランスで決まる。がん細胞ではヒストン・アセチル基転移酵素(HAT)の発現や活性が低下し、ヒストン・脱アセチル化酵素(HDAC)の発現や活性が亢進して、タンパク質の脱アセチル化が亢進している。
 
 
 
ヒストン脱アセチル化酵素の活性亢進は様々なヒストンアセチル化によって遺伝子発現に影響し、さらに非ヒストン・タンパク質の働きに影響し、これらの作用によって、がん細胞の脱分化、細胞増殖、浸潤・転移、細胞接着低下、アポトーシス抵抗性、血管新生を亢進し、がんの発生や悪性進展を促進する方向で作用しています。

したがって、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害すること、あるいはヒストンのアセチル化の亢進はがん治療の有力な方法になります。


図:アブラナ科野菜の摂取で体内に吸収されるスルフォラファンは、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することによってヒストンのアセチル化を促進して、遺伝子発現状態に変化を及ぼす。その遺伝子発現の変化は抗がん作用と関連している。



【スルフォラファンは寿命を延ばす】

前述のように、スルフォラファンはNrf2の活性化によって抗酸化力や解毒力を高め、さらにヒストン脱アセチル化酵素の阻害によって遺伝子発現を制御しています。これらの作用はがんを予防し、寿命を延ばす効果があります。

さらに、インスリンやインスリン様成長因子-1(IGF-1)のシグナル伝達を阻害して寿命を延ばす効果が報告されています。以下のような報告があります。

Sulforaphane promotes C. elegans longevity and healthspan via DAF-16/DAF-2 insulin/IGF-1 signaling(スルフォラファンは、DAF-16/DAF-2 インスリン/IGF-1 シグナル伝達を介して C. elegansの寿命と健康寿命を促進する)Aging (Albany NY). 2021 Jan 20;13(2):1649-1670.

【要旨の抜粋】
ブロッコリー由来のイソチオシアネートのスルフォラファンは、炎症、酸化ストレス、がんを抑制するが、寿命への影響は不明である。
野生型と 9 つの変異株の線虫(C. elegans)にスルフォラファンを投与して老化や寿命に対する効果を検討した。

スルフォラファンは、可動性、食欲、および食物摂取量を増加させ、リポフスチンの蓄積を減らすことにより、寿命を延ばし、健康関連の表現型を促進した. メカンズム的には、スルフォラファンは、DAF-2 を介したインスリン/インスリン様成長因子シグナル伝達と、その下流の標的である AGE-1、AKT-1/AKT-2 を阻害した。これは、FOXO 転写因子ホモログ DAF - 16の核移行の増加と関連していた。一方、ストレス耐性と寿命を高めることが知られている標的遺伝子sod-3、mtl-1、およびgst-4の発現が亢進した。これらの結果は、スルフォラファンがインスリン/IGF-1 シグナル伝達の抑制を介して、C. elegansの全寿命と健康寿命を延ばすことを示している。私たちの結果は、健康的な老化と病気の予防を促進するための栄養豊富なスルフォラファン戦略の基礎を提供します。
 
 
線虫のDAF-2という遺伝子は哺乳類のインスリン受容体に相当します。線虫のDAF-16は哺乳類のFOXOという遺伝子に相当します。

線虫やショウジョウバエを使って寿命に関わる遺伝子の研究が行われています。すなわち、線虫やショウジョウバエの突然変異系統(ミュータント:変異体)の中から寿命が延びた変異体を見つけ、どの遺伝子に突然変異が起きているかを解析すれば、寿命に関連する遺伝子を見つけることができます。
そのような研究によって寿命に関わる遺伝子が多数見つかっていますが、見つかった線虫やショウジョウバエの遺伝子の哺乳類の相同体を解析すると、それがインスリやインスリン様成長因子-1(IGF-1)の受容体やそのシグナル伝達系に関与する遺伝子だということが明らかになっています。
 
例えば、線虫の遺伝子でins-7とdaf-2と名付けられた遺伝子に突然変異がある変異系統の線虫は寿命が延びていました。そして、これらの遺伝子は哺乳類では、それぞれインスリンとインスリン受容体に相当するものでした。そして、インスリン受容体の下流に存在するシグナル伝達系に関与する遺伝子の突然変異も寿命を延長することが明らかになったのです。

このメカニズムはやや複雑なので、詳細は省きますが、簡単にまとめると「インスリン/IGF-1シグナル伝達系の活性化はがんを促進し、寿命を短縮する」そして「スルフォラファンはインスリン/IGF-1シグナル伝達系を阻害して寿命を延ばす」ということです。

スルフォラファンが抗酸化作用と抗炎症作用などによって循環器疾患やがんを予防し、寿命を延ばすという研究結果は多数報告されています。



【ブロッコリースプラウトを摂取するとヒストン脱アセチル化酵素の活性が低下する】

食事からブロッコリースプラウトや大根おろしを食べて、体内でスルフォラファンが生理活性を及ぼすレベルに達するかどうかを確認する必要があります。例えば、これらの食品を数kg摂取しないと効果が出ないのであれば、意味がありません。
 
実際に、通常の摂取量で、ヒストン脱アセチル化酵素の活性が低下することが確かめられています。以下の様な報告があります。

Sulforaphane absorption and histone deacetylase activity following single dosing of broccoli sprout supplement in normal dogs(正常な犬にブロッコリースプラウトサプリメントを単回投与した後のスルフォラファン吸収とヒストン脱アセチル化酵素活性)Vet Med Sci. 2018 Nov;4(4):357-363.

この報告でh、ブロッコリースプラウト サプリメント (活性型ミロシナーゼを含む) を 10 匹の健康な成犬に 1 回経口投与しました。投薬前および投薬後の様々な時点で、血液および尿サンプルを採取しました。血漿総スルフォラファン代謝産物レベルは、消費後 4 時間でピークに達し、消費後 24 時間までに排泄されました。尿中の スルフォラファン代謝産物は、摂取後 4 時間でピークに達し、サプリメント摂取後 24 時間および 48 時間で検出可能なままでした。

スルフォラファン摂取後 1 時間でヒストン脱アセチル化酵素活性の減少傾向が観察され、摂取後 24 時間で有意な減少が観察されました。
 
これらの実験結果は、 スルフォラファンがイヌに吸収され、スルフォラファン代謝産物が投与後に血漿および尿で検出可能であること、およびスルフォラファンとその代謝産物が単回投与後にヒストン脱アセチル化酵素活性に何らかの影響を与えることを示しています。

 
人間での研究も報告されています。以下の様な論文があります。

Comparison of isothiocyanate metabolite levels and histone deacetylase activity in human subjects consuming broccoli sprouts or broccoli supplement(ブロッコリースプラウトまたはブロッコリーサプリメントを摂取したヒト被験者におけるイソチオシアネート代謝物レベルとヒストン脱アセチル化酵素活性の比較)J Agric Food Chem. 2011 Oct 26;59(20):10955-63.

この臨床試験でも、ブロッコリースプラウトまたはブロッコリーサプリメントを摂取したヒト被験者において、血中および尿中のスルフォラファン代謝産物が増加し、末梢血単核細胞のヒストン脱アセチル化酵素の活性低下が認められました。
 
以上のように、通常摂取する量のブロッコリースプラウトや大根おろしで、ヒストン脱アセチル化酵素活性を低下させるレベルのスルフォラファンが吸収されることが明らかになっています。



【アブラナ科野菜を加熱調理するとスルフォラファンができない】

アブラナ科野菜の中にはスルフォラファンは存在しません。アブラナ科野菜に多く含まれるグルコシノレートという物質に、ミロシナーゼという酵素が作用してこれらの抗がん物質が生成します。生の野菜を噛んだり、ミキサーなどで細切して野菜の細胞を壊さないとスルフォラファンは生成しないのです。
 
ミロシナーゼは酵素でタンパク質であるため、加熱調理するとタンパク質が変性して、酵素活 性は消失します。
 
つまり、ブロッコリーやカリフラワーやキャベツを加熱調理するとそのがん予防効果や抗がん作用は低下することになります。したがって、アブラナ科野菜は生で食べたり、ジュースにして摂取するのがベストということになります。

ブロッコリーやカリフラワーやキャベツは生でも食べられますが、加熱調理しても、一つの工夫で抗がん作用を高めることができます。ミロシナーゼ活性を含む生のアブラナ科野菜を一緒に摂取するという方法です。加熱調理したブロッコリーでも、ミロシナーゼを含む食品と一緒に食べれば、ブロッコリーの抗がん作用が保たれるということが報告されています。
 
グルコラファニンを多く含むブロッコリーパウダーを摂取しても、ミロシナーゼが不活性化していると、スルフォラファンは生成しないので、血中や尿中のスルフォラファンの量は上がりません。腸内細菌のミロシナーゼ活性によってスルフォランができる分しか体内に吸収しないということになります。
 
しかし、ミロシナーゼ活性を有する生のブロッコリースプラウトを一緒に摂取すれば、スルフォラファンが十分に生成されることが報告されています。
 
ブロッコリーを煮て、その煮汁を捨てるとグルコラファニンをロスします。煮汁にグルコラファニンが多く浸出しています。ブロッコリーやカリフラワーを煮たときは、その煮汁を捨てないことです。
 
ミロシナーゼの活性の至適温度は 35〜40℃です。1分以上のゆで加熱調理によりミロシナーゼは失活します。つまり、煮汁が40℃以下になってから、ミロシナーゼ活性をもつブロッコリースプラウトや大根おろしを混ぜれば、スープの中にスルフォランが増えます。アスコルビン酸(ビタミンC)はミロシナーゼの活性を高めることが知られています。(下図)。


図:ブロッコリーやカリフラワーを加熱してスープを作ると煮汁にグルコシノレート(グルコラファニン、グルコブラシシンなど)が多く含まれるが、加熱によってミロシナーゼは不活性化し、イソチオシアネート(スルフォラファン、インドール-3-カルビノールなど)は分解している(①)。このスープを40℃くらいに冷やした後に、大根おろし(②)や生のブロッコリースプラウト(③)や擦り下ろしたワサビ(④)を加えるとミロシナーゼの作用によってイソチオシアネート(スルフォラファン、インドール-3-カルビノールなど)が生成する。レモン(⑤)などビタミンCの多い食材を加えると、ミロシナーゼ活性を高めることができる。
 
 
 
以上から、大根おろしやブロッコリースプラウトなど、アブラナ科野菜をスルフォラファンが多く産生する調理法で食べると、がんを予防し、寿命を延ばす効果が期待できます。

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ


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