地獄蛙
赤黒く照らされた鍾乳洞に流れる川の上を小さな舟に揺られている。
あぁ、ここはなんか来たことある。
匂いは何もしないがきっと酷いものなんだろう。
「なぁ、あんた。俺のこと覚えているかい?」
振り返ると口の尖った体長六十センチメートル程のカエルに話しかけられていた。
「いいえ、全然」
「だろうなぁ。人間は丁寧に前世の記憶を抜かれるから。俺は一個前にあんたにあったことあるんだよ」カエルは先輩ぶって話している。しかし僕はどうして死んだのか全く思い出せないし、それこそ魂を抜かれたような無気力感しかない。
「この先は地獄ですか?」