大田区ひき逃げ事件と車両保険の関係@弁護士(5月25日更新)
5月20日、大田区で悲惨な事件が起きてしまった。報道によれば、東京・大田区で歩行者をはねて死亡させ、そのまま逃げた疑いで、加害者は逮捕されている。当時、加害者は、警察官から職務質問を受けて逃げている途中であったとのことであり、同人は「事故前に薬を飲みすぎた」などと供述し、尿鑑定では違法薬物の使用が疑われる結果が出ており、職務質問が行われた現場近くから注射器が見つかっているらしい。加害者は厳罰に処されることは間違いないだろうし、厳罰に処すべきだろう。
一方で、加害者は、SL63AMGという高級車に乗っていたようであり、車両は大破しているが、車両保険金は支払われるだろうか。
ここで車両保険に係る自動車保険約款には通常、薬物免責を規定している。
そして、真実、報道のとおり薬物を使用していた場合、裁判例では「保険契約者等が、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤、シンナー等の影響により正常な運転ができないおそれがある状態で被保険自動車を運転している場合に生じた損害については、車両保険金の支払が免責される旨定めており、ここに言う「麻薬、大麻、あへん、覚せい剤、シンナー等」とは、使用の影響により正常な運転ができないおそれがある状態を生じさせる薬剤を例示したものと解されるところ、前示のとおり、マイスリーもソセゴンも、使用の影響により正常な運転ができないおそれがある状態を生じさせる薬剤である上、医師である原告は、そのことを十分認識していたというべきであるから被告は、本件約款の同条項に基づき、本件事故による本件車両の損害について、車両保険金の支払を免れることとなる。」と判示している。
したがって、本件でも、❶薬物使用の事実(5月25日の報道で覚醒剤が検出されたとのことで立証は容易)❷薬物等を体内に保有しながら運転していることを加害者が認識していたことが立証されれば、車両保険金は支払われることはないだろう。
悲惨な事故状況、ひき逃げという事故の行動を見れば、当然の帰結であろう。