運命に抗おう!
ケルトもののお話として、ちょくちょく見かけるピーター・トレメイン作の7世紀のケルトの修道女フィデルマのシリーズの短編を読んでみた。
読んだのは「自分の殺害を予言した占星術師──修道士フィデルマのミステリ―」(『ホロスコープは死を招く』アン・ペリー=編著 山本弥生=訳 ヴィレッジブックス 収録)。
おはなしのはじまり……占星術を使える修道士が自分の死をホロスコープで予言して死んだ。ホロスコープには院長が殺したと出ていた。だから院長が犯人である。裁判官もそれを信じている。
……現代日本だと「お前は何を言っているんだ?」な案件だが、ここは7世紀のアイルランドである。
7世紀のアイルランドでどこまで占星術が信じられていたかは私は知らないが、占星術を信じこんでしまう、まあそういうこともあるだろう。そう思ってよんでいると、
「みずからの運命を変えることはできません。(後略)」と言う人が出てくる。
うっ、こういう考え方キライ。
するとフィデルマがそれに抗弁して「とんでもない。わが国の偉大なるペラギウスは『自由意志について』のなかで、運命を従順に受け入れることは人間の進歩を破壊するものだといいませんでしたか。(後略)」と言う。
こういう運命に抗う意志を持つ人好き!
私が円卓の騎士を好きになった一番の理由もそれなので。
自分の意志を持ってない人は死人みたいで気持ち悪いので私は嫌だ。ゾンビがうろうろしてるようにみえる。
できれば引用無しの自分の言葉のみが好きだが、修道女で学がある人ならそりゃあ引用するだろう。あと引用できないと舐められるんだろうな……異端で糾弾されるのの牽制もあるか。政治が大変だ。
フィデルマさん、派手さや動きはあまりないのだけど、淡々と大事なことをいう感じで好感が持てます。
あとは細かいところでは、さらっとドルイドについて言及されてたり、登場する人の名前がアイルランドだなああ、という感じで読んでいて楽しい。
一番のポイントはフィデルマが王の妹なところですね。私はアイルランドの王の妹というと、英雄クー・フーリンの母のデヒティレさんを思い出してワクワクしてしまう。ぜひ神ルグとエンカウントしてほしい。
最後は鏡リュウジさんがあとがきを書かれていて「そういえば、ホロスコープって現代は生まれたときのものを見るよね?」と思い出す。いや、ホロスコープなんにもわからないんですけども。
フィデルマに出てくるような予言の使い方をされているのを初めてみたかもしれない。予言につかえるんですね、ホロスコープ。
私自身といえば、かつて占いを全く信じていなかった。
しかしあるとき本気でタロットをがしがし自分でやったとき、何度も当たった。空恐ろしかった。タロットは他人にやってもらってもまるで当たらない。しかし自分で本気でやると当たるのだ。これはだいぶ怖い。
それからは少なくとも占いは全部否定できるものではないと考えを改めている。自分で証明したのだから、信じるほかないといったところだ。
おそらく、なにか自分でうまくあてはまる答えを自動筆記してるような感じなのだろうが……でもタロット裏返して引いたんだがな……うーん、まあ、科学は全然万能ではないので、そういうこともあるか!くらいのほどほどで生きるのが一番いいと思う。
大事なのは中庸だ。
まあそんな私の話はさて置くとして、この修道女フィデルマシリーズ、中世アイルランドの雰囲気を楽しむのにはとてもいい作品だと思う。
お好きな方はぜひどうぞ。
私もちょこちょこ続きを読んでみようっと。
吟遊詩人は旅するもの。我が旅の軌跡が少しでもあなたの心に響きましたら、ぜひとも旅の路銀を投げ銭くださいませ🪙