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選定の剣はエクスカリバーじゃない?

 こんばんは、吟遊詩人の妙遊です。

「選定の剣はエクスカリバーじゃない、カリバーンだ!」

 最近そういう説をネット上でよく拝読します。
 特にこのあいだ、ガンダムアニメ『水星の魔女』で「キャリバーン」というガンダムが出てきたときに、大量に拝読しました。

 ついでに言うと、ネット記事でも。
 Kindle本でも拝読しました。

(ちなみに選定の剣というのは、ブリテンの王座につくものを決める、石に刺さった剣。アーサーが抜き、アーサーは王になりました)

 しかしこの説、出典がわからないのです。
 ネット記事で見ても、Twitterで見ても、さらにはKindle本で見ても。

 わからない……。

 たとえば「この研究書で唱えられている説」「この作品で採用されている説」というような、確たる出典が書かれていません。

 まあ普通は出典……書きませんよね……それはそう……それが普通だ。

(出典をモリモリ書かれているWikipediaはこの説をとなえられていませんでした)

 ちなみに中世ヨーロッパ文学では「石から抜いた剣をエクスカリバーとしたのは誤り(湖の姫から貰った剣がエクスカリバー)」というのを研究者かつ翻訳家の厨川先生がおっしゃっています(出典『アーサー王の死』サー・トマス・マロリー作 厨川文夫厨川圭子訳 ちくま文庫p.48 の注釈に「この剣をエクスカリバーとしたのはマロリーの誤り。エクスカリバーは、後にアーサー王が湖の姫から貰う。」とあります。この剣というのは、アーサー王がロト王と対峙していたとき抜いた剣ですが、おそらく石から抜いた剣と思われます。)。

 また厨川先生の説の後に、これまた研究者の小路先生が「石から抜いた剣も湖から貰った剣もどちらもエクスカリバーである」というのを書かれています(出典『続剣と愛と』中央大学出版部 中央大学人文科学研究所編 「エクスカリバーの変遷」小路邦子より マロリー以前の作品でも石から抜かれた剣がエクスカリバーと呼ばれているかを調べた上で、どちらもエクスカリバーであるとしている。その説明として湖の姫から貰う剣は、もともとの石から抜いた剣が鍛え直されたものでは……という展開つき)。

 しかし、中世ヨーロッパ文学で『選定の剣はエクスカリバーでなく、カリバーンである』というのは見たことがない(わたしが知ってるかぎり。まあ、わたしの知っていることは一部のため、もし「いや、見たことあるぞ!」という方はお教えくださいむしろ読みたいそれが知りたいオタクなので)。

 そもそも。
 カリバーンって「エクスカリバー」が言語や時代によって名前が微妙に変わっていくうちのバリエーションのひとつ……なんですよ。

 たとえるなら「ジャパンとかジャポンとかジパングとか書いてあっても、それは日本ですね」と同じで。
 「カリブルヌスとか、カリベオルネとか、カリバーンとか、エスカリボールとか書いてあっても、それはエクスカリバーですね」なのです。

 ちなみにエクスカリバーが初めて出てきた文献はは『ブリタニア列王史』ラテン語名・カリブルヌス《現代英語:カリバーン》なので、歴史的にはカリバーンの方が昔です。エスやエクスは後でくっつきます。

 カリバーンもエクスカリバーも呼び分けるようなものじゃなく、同じものを指してる。ただ、言語が違ったり表記揺れしてるだけなんですね。

 ジャパンと日本は、別物じゃないのと同じく。
 カリバーンとエクスカリバーは、別物じゃない。

 石から抜いた剣と湖から貰った剣を「カリバーンとエクスカリバーで呼び分ける」というのは、中世では(たぶん)ありません。

 むしろ中世作品で「カリバーンとエクスカリバーで呼び分ける」設定あるものがもし存在してるなら知りたいです(二回目)。

 いや。中世でなくても近世でも近代でも現代でもいいので、

「この時点を分岐として『カリバーンとエクスカリバーで呼び分ける』設定ができたのだ!」

というのがわかるなら知りたい。
伝説の発生源がどこなのかを知りたい。

 一番可能性が高い予想としてはこうです↓

 石に刺さった剣と湖の腕からの剣を「カリバーンとエクスカリバーで呼び分ける」をしてるのはFate作品が最初。

 わたし自身、Fateで初めて見た設定ですし、Fate以前のものを見たことがないのですよね。

 ただ、この説を採用しようにも。
 あまりにも「Fateの設定」としてではなく「アーサー王伝説としてそういう説がある」という感じで発言してる人が多い。あまりにも多いのです。
 しかしながら、この現象が存在していても、以下↓の流れで「Fate起源」の説明はつきます。

①Fateで「カリバーンとエクスカリバーで呼び分ける」という設定を見て、「もともとアーサー王伝説でそういう設定がある」と思い込んだ人がネット記事とかまとめ本に「アーサー王伝説として」書いた。
②そのネット記事やまとめ本を読んだ人がこれは「一般的なアーサー王伝説」と信じた。
③結果、伝説として定着してしまった。

 ……かくして伝説はつくられる😌

 もしかしたらわたしがオバアチャンになってる頃には、世界中でアーサー王伝説のひとつになってるかもしれません。

 ただ、Fateはそんなに古いものじゃあない。もしかしたら。もうちょっと前に先行作品とかあるんじゃないか??という可能性もやっぱりなくはないのですよね。

 独断専行はよくない。うむ。

 ので。
 皆様!!!!!!!!

 もし「Fate以前で『カリバーンとエクスカリバーで呼び分ける』してる作品があるよ!」とか「研究者さんの〇〇がそういう学説をとなえているよ!」とかありましたらお教えください!!

 もしくは型月すごぉぉく好きな方で、Fateの生みの親の奈須さんの発言全部おさえてるような方もいらっしゃると思うので(わたしはFateはニワカ程度にしか知りませぬ……数作品しか見てない……)「奈須さんが〇〇でこう言ってたよ!」とかがありましたら是非。

 さらにもしくは「いやいやいや、中世ヨーロッパの文学作品で既にあるから。ほらほらほらほらほらここに!」「中世じゃないけど近世でこういうのがあるんだよねぇ」とかが!もし!ございましたら、作品名などの諸情報を是非是非是非。

 ないですねぇ。ありますかねぇ。
 雲をつかむような話。

 もしお心当たりあります方はよろしればコメントくださいませ。

 もし、一切コメントが来なかったら……
 もしくは「Fateだよ」「FateFate」「原木はFate」というコメントしかなければ……
 そのときはFateという原木から生えた伝説ということで!!!!!

 そしてこのまま、わたしがオバアチャンになったときにも、世界で『カリバーンとエクスカリバーで呼び分ける』説が残留していたら。

「それはじゃな、オバアチャンが若い頃、日本で生えた伝説なんじゃよ……」

 と。世界での吟遊で、伝説の生き証人として語っていこうと思います😌

 なにかしらご存知の方は、是非コメントをばくださいませ。

 吟遊詩人の妙遊でした。
 またお会いしましょう。

 あと大阪近郊にお住まいの方は、7/15にライブ&講座がありますので、どうぞどうぞいらっしゃいませ。
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吟遊詩人は旅するもの。我が旅の軌跡が少しでもあなたの心に響きましたら、ぜひとも旅の路銀を投げ銭くださいませ🪙