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「カルナの死」解説


 インド神話・叙事詩『マハーバーラタ』の「カルナの死」の配信終了いたしました!

 お聴きくださいました皆様、ありがとうございました。

 お話した内容について、わたくしの所感と参考文献を記しておきますね。


1.ひとつめのおはなし

 冒頭にカルナさんの紹介で3つお話をしましたが……

 「カルナさん、生きてる環境が悪いな?!」

というのがカルナさんの印象です。
 御者の子は御者という考え方のもと、見下されて当たり前という環境。
 見た目キラキラで、能力高くて、めちゃめちゃ素敵でも、身分で貶められるカルナさん。
 まあ古代インド的に当たり前なんでしょうが、辛いものは辛いだろうな……

 そこへ颯爽と王子様ドゥルヨーダナが登場!

 あれよあれよという間にカルナを国王にしてくれます。すごいぞドゥルヨーダナ。そんな権限持ってるんだ?!
 そしてその後も熱弁を振るって、観衆を沸かせ!カルナの心も沸かせ!
 すごいぞ、すごいぞドゥルヨーダナ!!

 カルナはインドで人気があるよ、という話を小耳に挟むことがありますが、そりゃあこんなディズニープリンセスな話、人気になるよ!!

 そして(みっつめのはなしになりますが)神クリシュナに「お前は実はアルジュナの兄なんだよ。さあ、家族の元においで。暖かく迎えられるから」な誘いをかけられても、友ドゥルヨーダナのために誘いを蹴るカルナさん。

 最高に友だち甲斐のある男!!
 !!!!カルナ!!!!!

 カルナさん最高だな……
 あとやっぱり身分低いところをね、上に昇っていけるお話って、大衆には人気出ますよね。
 ディズニープリンセース✨(キングだけど)

 あと、これは私見ですが、今回語りをするまでドゥルヨーダナにあんまりいいイメージなかったんですよ。「アルジュナたちに嫌がらせしてた性格悪い人だ……」と思っていて。

 でもカルナさん視点になるといきなり、

 俺の最高の友✨✨✨

 になるんですよね。
 すごい。本当視点が変わるだけで変わるものですね?!
 観衆の前で熱弁振るうシーンめちゃめちゃかっこいいもんな……
 ドゥルヨーダナのカルナさんのための熱弁、最高なのでちょっと紹介しましょう!

「そんないい方はあるまい、ビーマ。闘うことがクシャトリヤ(武士階級)の宿命ではないか。相手が自分より下位であろうとなかろうと、雌雄を決すべき時には避けるべきではない。  英雄も河も源は同じではないか。両方とも源流は分らないのだ。世界を覆った火は水から生じ、アスラを破滅させるにはダディーチャ(*)の骨の方がインドラの雷電より優るといわれる。偉大なカールティケーヤ神の出自は神秘のベールに包まれ、あるものはアグニの子、あるものはスバル座の子といい、あるものはルドラ、あるものはガンガー女神の子といっている。クシャトリヤに生れバラモンとなった聖仙は幾らもいる。あの有名なヴィシュヴァーミトラがそのいい例だ。わが師ドローナは水壷から、同じくわが軍師クリパは草叢から生れている。お前だってそうではないのか?  生れながらにして甲冑とイヤリングを身につけ、太陽の光輝に包まれたこの猛虎がどうして鹿から生れたりするものか。彼はアンガ国のみならず、全世界とわたしの友情をほしいままにする値打のある男だ。わたしの言葉に不満のあるものは、彼の戦車に上り、彼と共にその弓をへし折ってみるがいい」

マハーバーラタ 第一巻 山際素男訳 グーテンベルク21 p.221

「英雄も河も源は同じではないか。両方とも源流は分らないのだ。」はなかなかすごいなと思うんですよね。身分制度の根幹が揺らいだりしないのでしょうか。
 こんなことを王子様が言うんですよ。観衆が熱狂するのも当然!!

「彼はアンガ国のみならず、全世界とわたしの友情をほしいままにする値打のある男だ。」はカルナへの評価がすごい。お前は世界征服するだけの男だ!カルナ!!!な言葉じゃないですか。

 アツい、アツいぞ。こんな言葉いきなり浴びせかけられたカルナの心、どうなると思います?!?!?

 この二人の友情すごいな……
 最高だな……
 もう話、終わっていいかな……(ダメです)

2.ふたつめのおはなし

 続いて、二つ目のお話。ドラウパディーの花婿選抜編。

 これは今回、「カルナの死」のシーンで、ドラウパディーをカルナさんが笑ったことをクリシュナがdisってくるシーンがあるんですが。
 前振りとしてはここらへんにあるのかなあ、と。カルナさんが先にね、貶されてるのはあるんですよね。

 まあドラウパディーの気持ちもわかる(わかる)ので、なんとも言えないですが。
 実力行使で無理に妻にしようとしなかったカルナさん、そこは立派だな、と思ったりなどしました。
 とはいえ、月経中の女子が衣剥がれるのを笑うのは完璧に有罪ですが。それはそう。
 ただ、人は、一面だけを見て裁けないという話ですね。
 このお話は『マハーバーラタ 第一巻』山際素男訳 グーテンベルク21のp.279周辺にあります。

3.みっつめのおはなし

 俺を捨て子にした家族より!
 友を選ぶ!!
 カルナさん!!!

 最高だな!!!!!

 友に、俺と同じの「捨てられた」境遇を味わわせたくないカルナさん。
 なんという友達甲斐のある男……

 こちらのおはなしの参考文献は↓のp.47〜p.49のところです。 

『インド神話物語マハーバーラタ 下』 デーヴァダッタ・パトナーヤク著 沖田瑞穂監訳 村上彩訳 原書房

 ドゥルヨーダナの表情を想像して、思いとどまるカルナさんに泣いてしまう……
 訳してくださってありがとうございます……

4.カルナの死

 そしてとうとう。
 カルナVSアルジュナ。

 最初からアストラをぶっぱしてて、もういきなり終わりそうなんですが大丈夫なんですかこれ。

 アストラも、一体どんなものなのかよくわからない謎なもの。

 そういえば川村先生が前にシンポジウムでお話されていたような……と思い出し、資料を読み読み。

 前に↓のようなシンポジウムがありまして、それを拝聴したことがありまして😌

(公開シンポジウム「『マハーバーラタ』研究の最前線―伝承の形成と物語の展開―」 (2024 年 3 月 26 日、京都大学人文科学研究所)古代インド叙事詩の神器戦における記憶と呪句の役割川村悠人)

 うーん、なんかドラゴンボールの元気玉みたいななんかド派手なのかな……
 こう、大衆からもらう元気でなく、神からもらう元気玉みたいな……??

 川村先生の資料を拝読するとこのように書かれています。

インドの二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』において、英雄たちは弓矢・剣・棍棒・槍といった通常の武器だけではなく、神的な超兵器――本稿では神器と呼ぶ――を振るって多彩な戦いを繰り広げる1。そのような神器は多くの場合、アストラ(astra)「飛び道具」という言葉で言及される2。

公開シンポジウム「『マハーバーラタ』研究の最前線―伝承の形成と物語の展開―」 (2024 年 3 月 26 日、京都大学人文科学研究所)
古代インド叙事詩の神器戦における記憶と呪句の役割 川村悠人
資料より

 超兵器……ミサイルかな……

 あと心に念じればファッと出てくるもので、特に詠唱は必要ないらしい。無詠唱。

 呪句(マントラ)は強化に使うものみたい……FGO(スマホゲーム)のスキルみたいなものかな……

 さらに理解を深めるためブラフマーストラについて検索。

 理解。

 そしてカルナさんもアルジュナさんもいろんな神のアストラを使えるつよつよ戦士なんですね。理解。

 射出の方法は「矢に合体させて放つ」ものらしく、そのあたりも川村先生のシンポジウムの資料が大変参考になりました。多謝。

 本編そのものも、川村先生と髙橋先生の書評に依っております。書評に原典の翻訳が収録されているのです。すごかった。
 しかも、ネット上で無料公開されています。
 皆様も是非。
 アストラでドンパチやりまくってるアルジュナさんとカルナさんが見られます!!

リンク↓↓↓
(32/50のところからが「カルナの死」です)
カルナとアルジュナ,そして『マハーバーラタ』研究のこれから : 川尻道哉『カルナとアルジュナ—『マハーバーラタ』の英雄譚を読む』書評論文

 めちゃめちゃ丁寧にカルナVSアルジュナがわかるので見応えばっちりですが……戦い、すっごい長いです。
 かなりパワーを使います!!
 パワフルに読みましょう!!

 わたしが初めて読んだときの印象は「赤」。

 赤い。
 とにかく赤い。
 カルナさんが血まみれだから……

 でも。
 西に沈む太陽のごとく、赤い日輪のごとく、美しい。
 かんばせは千の花びら持つ蓮のように美しい。

 そう!カルナさんのかんばせ、お顔、蓮の花に喩えられてるんですよ!!
 美!!!!!
 美!!!!!!!!

 とにかく美しいカルナさん✨✨

 そしてカルナさんは、自分の戦車の御者のシャリヤさんと仲が悪い。シャリヤさん、やる気削ぐこと言ってくるんですよね。

 対するアルジュナは御者クリシュナと大親友です。最高に仲良し✨✨

 この構図、ケルト神話の『トーイン』のクー・フーリンVSフェルディア戦でも見ました。
 フェルディアの御者さん(悪気はないかもしれないのですが)フェルディアのやる気を削ぐことを延々と言ってきます。フェルディアがやめてくれ……ってなって体調悪くなるレベル。
 対してクー・フーリンの御者のロイグはクー・フーリンを励ますため(クー・フーリンの要望により)わざとからかってやる気ださせてくれたり、心が折れたクー・フーリンを励まし続けたり、とにかく世話を焼いてくれます。
 相棒は大事ですね。

 そして、めーちゃくちゃ良かったのが。
 カルナは西方の山に沈む太陽。
 アルジュナは東方の山を照らす太陽。

 夕陽と朝陽!!

 そう、カルナさんは沈む太陽……夕暮れの英雄……
 良い……

 しかも千の花びらの蓮の花に喩えられるかんばせでしょう。
 美しすぎる……

 とにかくカルナさんの尊みにふるえる「カルナの死」でした。
 英雄の死をね、語るのがね……私は一番心にきます……


 さて、今回ですが、もうね、いきなり企画していきなりやったんですけども。
 もともと気にはなってたんです。翻訳をね、拝読したときから。

 ただ、普段のフィールド、ブリテン島とアイルランドなんですよ。
 北欧もなんとか音楽に触れたことはある。

 でもインド全然わからない。
 プラスして山際先生訳の『マハーバーラタ』、あまりの長さに挫折して、完読できてるの沖田先生訳のデーヴァダッタ・パトナーヤク版だけなんですよ。そして上村先生訳はまだ途中……

 それで語って大丈夫なのか??
 と思ったのですが。
 「詳しくなってから!」と言ってたら、人生が先に終わるな??
 と思いまして。
 もうとにかくやってみよう。やってみてからだ!!
 とて、やってみました。

 良かった……
 ますますカルナさん(とドゥルヨーダナ)が好きになりました。

 次はリアルのライブでやってみたいものです。

 リアルのライブの仕事のご依頼ありましたら是非こちら↓までご連絡を!
 ginyushijin@ymail.ne.jp

 配信だと、画角の問題で、動き回れないんですよね。
(私はしょっちゅう竪琴を置いて、歩き回って語ったりする)
 ドゥルヨーダナの熱弁とかめちゃめちゃ立ち上がって語り歩きたい!!

 あとはインド音楽を初歩の初歩の初歩だけでも修めたいですね……今回音楽どうしていいのかわからずヨーロピアンになってしまったので(できるだけ東方っぽい曲にはしましたが)
 インド音楽、昔はシタールをよく聴きにいっていたので、好きは好きなんですが、まったく勉強してないので演奏できず。うぅ、レベルを上げたい……

 インドの楽器をやってる方で、私の即興語りに合わせられる方で、私もその方の演奏大好きだ!!という方がいらしたら一緒にやりたいところではあります(注文の多い料理店みたいに注文が多いのですが、これを満たさないと語りが瓦解するので)。
 これは幸運にもそういう巡り合わせがあれば、ということで。
 まずは自家発電で、ハープで出来うるかぎりのインドの音楽を(ハープで可能なものなのかすらわからない……)

 あとはアストラの効果音……そしてもっとマハーバーラタに詳しくなりたい……もっと音楽的に韻を踏んだりとか音の調子を整えたりしてみたい……あとドゥルヨーダナが気になって仕方ないので、FGOのドゥリーヨダナの旦那をチェックしたい……FGOといえば奏章Ⅲでバーソロミューのために怒ってくれたカルナさんがすごく良かった……(いろいろ私情が出ている)

 『マハーバーラタ』そのものについても理解を深めたいです。
 と思っていたら、なんか外国の映画?の『クルクシェートラ』というものがYouTubeにあるらしい??

 一番左の人かっこいい……

 ちょっと覗いたら、ccを押したら英語の字幕だけ出てきます。なんとなくはわかる……

 『マハーバーラタ』は豊かですね。これからも付き合っていきたいです。

 お聴きくださった皆様、お読みくださった皆様、ありがとうございます!!
 ご感想のコメントいただけたら嬉しいですが、ちょっと書いてる暇が…という方は、いいねだけでもいただけましたら幸いです☺️

 吟遊詩人の妙遊でした。
 また、お会いしましょう。


《今後のライブ予定》

◎12/13東京 ご予約受付中(残席1名様)

◎12/14 東京 アーサー王学会 支部大会内
 ブルターニュ古謡集バルザス=ブレイスより
 ハープ演奏


◎2025 1/12 大阪 ご予約受付中

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吟遊詩人 妙遊
吟遊詩人は皆様の心で成り立っております。今ちょうどお金がない方はスキ🩷を置いてくださるので十分嬉しいです。そしてお金のあるおしのびの円卓の騎士様、通りすがりの王族のお方、ちょっと地上に遊びにきた神々の皆様!気前良くチップをいただければ幸いです!!