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起業は「自分らしく働く」選択肢のひとつ。4人の実体験から知る、女性の起業の可能性

こんにちは。前回の記事「【イベントレポート】「性差の視点」が新たな製品・サービス開発につながる。女性起業家たちへメッセージ」に続き、10月26日(木)27日(金)の2日間にわたって開催された『起業みつかるマーケット for mama ―好きな仕事と暮らしの体験会―』のレポートをお届けします。

本記事では、実際に子育てやライフステージの変化を経て起業された女性たちの「起業の最初の1歩」に関するトークセッションの内容を紹介します。


服づくりを介し、新しいライフスタイルを提案

まずは、機能的な授乳服で知られる『モーハウス』代表・光畑由佳さんの講演から。

「子連れ起業はオーダーメイドの働き方」というテーマで、ご自身の経験を語っていただきました。

光畑さんは1997年、2人目の子供を出産後、資金5000円で創業し、自宅で授乳服を作り始めました。いまでは日本橋とつくばの直営店ほか、通販事業も展開。機能性の高い授乳服は、自治体や企業でも子育て支援に取り入れられています。

光畑由佳(みつはた・ゆか)倉敷市出身。 お茶の水女子大学卒。美術企画、建築関係の編集者を経て、1997年、産後の新しいライフスタイルを提案する「モーハウス」の活動を開始。

「もともと、私のキャリアのスタートは、会社員でした。大学を卒業してから新卒で採用された企業は、仕事も楽しく、やりがいもありました。しかし、当時は子育てをしながら働くことがとても難しく、結婚を機に退職。その後、自分のキャリアを模索し続けていました。

そのなかで、子育てを通じて多くの人に会い、自分自身の経験も照らし合わせながら、“子連れで出勤し、授乳しながら働くことができれば、母子ともに幸せだ”と確信したのです。

それには授乳服が必要です。いつでもどこでも子どもにおっぱいを上げられれば、電車の中でも、歩いていても、そこが人の授乳室になる……そんな“建築物のような服”を作ろうとしたのです」
(以下「」・光畑さん)

そこで光畑さんは、自宅で授乳服を作り発表しつつ、産後の新しいライフスタイルを提案するモーハウスの活動をスタート。提唱する“子連れワークスタイル”を多くの社員が実践し、授乳させながら働く姿は、多くのメディアで報道されました。

「数年前まで青山に直営店を構えており、20年間で300人ものスタッフが授乳しながら勤務を続けました。現在、直営店は日本橋に移転していますが、今もモーハウス以外での働き方のサポートも含め、子連れワークスタイルの取り組みを続けています」

育休期間中こそ、起業に目を向けてみては

時代を先取りした取り組みは国内外から注目され、経済産業省のアワードなど、さまざまな賞を受けます。そんな光畑さんは、子育て期間こそ起業のチャンスでもあると言います。

「ここには、育休中の方や出産してすぐという方もいるでしょう。子育ては大変だとは思いますが、同時にこの期間は、今後についてまとまって考える時間も確保しやすく、起業する絶好のチャンスでもあるんです。

困難にぶつかって解決したいと感じたこと、今までやってみたいと考えていたこと、チャレンジしたいことを書き出したり、誰かと話すところから始めましょう。その準備過程で気が付くことは多々あるはずです。

それが社会課題にも繋がっているかもしれませんし、そこにアプローチすることがビジネスチャンスにもつながっていきます」

光畑さんも、自ら気付いた社会課題を事業に反映し続けます。そして、3人の子どもを育てながら、会社も大きくしていきました。

モーハウスが販売する授乳服は、ただの服ではなく“ライフスタイルと人の意識を変える服”であるとも言えます。

「ですから、目先の数字ではなく、社会に対して何をどう訴えていくかということに軸足を置いています。

今のあなたの困りごとは、あなただけの問題ではなく、社会全体の問題かもしれない。それに対してアクションを起こすことが、みんなの力になり、それが喜びに繋がっていく。まずは気付いたことを、誰かに話してみてください」

そして、起業に伴うリスクの考え方も、少し変化してきていると言います。

「かつては自己資金で賄うことが当たり前でしたが、今はネットで情報発信ができますし、クラウドファンディングなどの手段もあります。

起業化支援も盛んに行われており、金融機関の融資も受けやすくなっています。

起業、してみたいかも、と思った人は、ぜひモーハウスの拠点がある茨城県つくば市に遊びに来てください。今度、つくばにカフェを開きます(11月7日オープン)。私でよければいつでも相談にのりますよ」

おひるねアート、パンづくり、手工芸…きっかけは身近なところから

ここからは、趣味や好きなことから始めて起業した女性たちのトークセッションを紹介します。

登場するのは『日本おひるねアート協会』 代表理事・青木水理(みのり)さん、パン作りの楽しさを発信する『日々のパン』代表・吉永麻衣子さん、カルトナージュ教室『アトリエキーム』主宰・萩谷麻衣子さんです。

眠っている赤ちゃんに背景や小物をつけて撮影する「おひるねアート」を事業とする青木さんは、起業のきっかけを次のように語ります。

青木水理(あおき・みのり):16歳長女、11歳長男、4歳次女の3児の母。長男の誕生後おひるねアートを趣味で撮り始めブログを開設、4ヶ月で初の写真集を出版。TVCMや雑誌広告の作品制作を手がけ、2013年に日本おひるねアート協会を設立。現在は家族写真の撮り方やパートナーシップなど数々の子育て支援、家族問題にも関わる。

「私は子どもが本当に大好きで、趣味の延長線上での起業でした。

当初は『おひるね? アート?』と質問をいただくことも多かったのですが、10年も続けていると、知っている方が大半に。

現在はアートディレクションや企業のビジュアルなどの事業も展開しています。

また私たちは講師を育成し、全国で撮影会を行ったり、企業と連携してファミリー層への訴求を強めるお手伝いもしたりしています。

日本おひるねアート協会もブース出展し、当日も子どもの撮影で賑わいました
(写真は認定講師の方が撮影)

講師も現在は630人以上おり、これまでに延べ40万人の赤ちゃんの撮影をいたしました」(青木さん)

青木さん同様、講師の育成を事業の柱にしているのは、『日々のパン』の代表を務める吉永麻衣子さん。

現在300名の講師を育成し、講師たちは自宅でパン教室を開発したり、全国の保育園や幼稚園で無料のパン教室を開催するなどの活動をしています。

吉永麻衣子(よしなが・まいこ):パン研究家。兵庫県宝塚市出身。聖心女子大学卒業後、(株)インテリジェンス(現パーソル)を経てパンの世界へ。現在、幼保施設にてパン教室を開催する「日々のパン」の活動を中心に、企業や雑誌へのレシピ、書籍出版、広く活動中。Youtube、オンライン教室にてレシピ公開中。3人の男の子のママ。

吉永さんのパンづくりは、生地を冷蔵庫で作りおきでき、トースターで焼ける手軽さが特徴。簡単かつ美味しいパン作りを探求し続け、これまでに約20冊のレシピ本を出版しています。

「私が目指しているのは、親子でパン作りをしていただくこと。これにより、コミュニケーションが生まれ、双方の幸せにつながるからです」(吉永さん)

吉永さんも青木さんも、3児の母。特に吉永さんは「子育てをしながら、パン作りに支えられてきた」と、育児真っただ中の時代を振り返ります。

「終わらない夜泣きの日々を過ごす中で、パン作りという小さな達成感を得て乗り切ることができました。夜中のキッチンにパンが焼けるいい匂いが広がると、心が満たされていくんです」(吉永さん)

カルトナージュ教室『atelier Keym(アトリエキーム)』(以下・キーム)を主宰する萩谷麻衣子さんは、結婚後に勤務していた会社の先輩の机で見たカルトナージュの美しさに心惹かれ、2010年に現在の事業を立ち上げました。

萩谷麻衣子(はぎや・まいこ):株式会社Keym 代表。2010年よりカルトナージュ教室〝アトリエキーム〟を主宰。初心者向けのキット販売や、オンラインスクールの運営を行い 幼保〜高齢者施設では4歳から100歳と幅広い世代にカルトナージュを指導。年間延べ6000人が受講中。カルトナージュを通して「〝好き〟を持つこと」の大切さを伝えている。

「カルトナージュとは、フランスの伝統手工芸で、厚紙や布で作品をつくります。

バリエーションは、箱、キーケース、カードケースなど多岐にわたっており、誰でも簡単に挑戦することができるのです。

現在は、小人数制の教室のほかに、オンラインスクール、コミュニティの運営、専用グッズの販売、学校や高齢者施設での講座の開催など多岐にわたる活動をしています」(萩谷さん)

その他にも荻野さんは、映画の小道具監修、海外アパレルブランドGAPとのコラボ、自治体と共同でモノづくり講座を開講するなど裾野を広げています。

三者三様の背景。共通点は「やりたいことに正直に」

青木さん、吉永さん、萩谷さん、起業のきっかけはそれぞれ違いますが、3人とも「最初の1歩のときは、右も左もわかりませんでした」と言います。

お昼寝アートの青木さんは、20代前半で結婚してからしばらくは専業主婦を続けていたそうです。

「専業主婦の生活は私には向いていて、子どもはかわいく、子育ては楽しく、毎日が充実していました。

でも、社会と隔絶されているような孤独感はあり、また働きたいという思いも強かったんです」(青木さん)

そこで、青木さんは育児にまつわるスキルを主宰する協会で学び、フリーランスとして活動するなど、さまざまな経験を積んでいきます。

「あるとき、おひるねアートを思いつき、ただただ楽しいと思いながらブログに写真や記事を上げていたんです。

すると、それを見たテレビや雑誌などのメディアが取材に来てくださって、『おひるねアート』(宝島社)の出版も決まりました。

そこからはあっという間に今があるような気がしています」(青木さん)

『日々のパン』の吉永さんも、結婚してから仕事を辞め、家族優先の生活をしていました。ただ、大好きなパン作りを広める活動はコツコツと続けていたと言います。

「夫の働き方に合わせた生活を希望していたので、会社も辞めました。

子どもも3人生まれ、子育てしつつ、自宅でのパン教室を開催。子どもと一緒にパン作りをすることはとても楽しいんです。これを世の中に伝えて行かないとダメだという使命感もありました」(吉永さん)

『キーム』の萩谷さんも、「カルトナージュの楽しさを広める」という軸は、創業当時から変わらないと言います。

「カルトナージュに出会った当時は、保育士から保険会社の社員になった直後で、結婚もしていました。

仕事は楽しくやりがいはありましたが、“子供が生まれたら、またキャリアを変えなくてはいけない”と思っていたときでもあったんです。

カルトナージュを仕事にすれば、時間と仕事のハンドリングもできるのではないかと思い、起業へと踏み出しました」(萩谷さん)

「ライフスタイルに合わせて仕事を続けられることは、起業の大きな魅力。自分で決めて、自分で進み、自分で開拓し続けることもできますし、ときには休むこともできます」(萩谷さん)

三者三様の起業ストーリーをお話してくれた青木さん、吉永さん、萩谷さん。

共通するのは、「やりたいことを考えてみる」こと、そして「まずは何か発信をしてみる」こと。

それぞれ立場や時期は違えど、自分らしく働く選択肢としての起業を選んだ3人の「起業ストーリー」に、来場者たちも熱心に耳を傾けていました。

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