4話*河川敷のブラザー
ボンさんたちは昼間は何してるんだろうと思い会いに行くと、
昼間は夜と違って人が多い河川敷。
ボンさん達の姿はなかった。
仕方なく河川敷を散歩していると、横の草むらがガサガサ音がし始めた。
不思議に思い見ていたら、
なんと、ボンさんが顔を出した。
たまたまいたのか?私達に気付いて、人に見つからないように草むらをかき分け追いかけて来てくれたのか?
分からないけど、
そのままボンさんは草むらの中を並歩して、いつもの階段まで出て来てくれたのだった。
いつもの場所につくと、ホウホウもどこからかやって来た。
お腹が空いていたらしく、
ボンさんがニャーニャー鳴いて膝に手を乗せて私の唇を前足でチョンチョンして来た。
なんという、分かりやすい意思表示!!猫初心者には有り難し神猫!!
「わ、わかった!ご飯買ってくる!まかせとけ!」と言うと、
明らかに「やった!」ってホウホウと頭を擦り合わせて喜ぶんだから、人間の言葉をちゃんと理解している。
だってさらに、私が帰って来るまで私が来る道をずっと見ながら待っているなんて、
『なんか、なんか……猫ってこうだったっけ』って不思議になった。
ご飯をあげるとボンさんブラザーズは仲良くガッツいていた。
ボンさん達はそれ以降も、「待っててね!」と言った時はいつも同じ場所から動かずちゃんと待っててくれ、戻ると走って迎えに来てくれた。
本当に賢い猫ブラザーズだった。
別のある日、ボンさんがいつの間にか立てられた看板を倒そうとしてるみたいにかじったりガシガシしていた。
なんだろうと思って見てみたら、知ってか知らずかこの場所の工事の予告看板だった。
ボンさん『くそお~~~~っ!オレ達の場所を~~~~!!』ってガシガシしているように見えた(笑)
私もボンさん達の時間が無くなるのか?………ショックを受けたものの、無情にも始まった工事。
変わり果てた風景。
私達がいつも座っていた階段は封鎖され、代わりに別の場所に鉄の階段ができていた。
でも、ボンさん達は変わらず現れてくれてホッとした。
ボンさんは「みてよーこんなんなっちゃったんだよ」って感じで、
工事現場の中を探索したり、それなりに楽しんでいた。
ボンさんと階段を登ってみたり、工事の様子をチェックしたり…
私がいつもボンさんを膝に乗せていた階段を、フェンス越しに恋しそうに眺めていたら、
ボンさんがテクテク中に入って行って階段に座り、こちらを見た。
「みてみて、ここ入れるんだよ」って、まるで誘っているようだった。
私が「人間は入れないよ、ボンさん」って戻ると、
ボンさんは「えー!来ないの?!なんでなんで?!」って慌てた感じで走って出て来て私の傍に来て、
「入らないの?楽しいよ?」って顔した。
入ろうと思えば入れるけど入らない、変なルールに縛られて楽しむ事を優先できない、ザ・自分にションボリした。
ボンさんみたいになりたいのに。
工事が終盤の頃、昼間に遊びに行くと芝生育成のため作業員さんが作業していた。
河川敷に上がって見てたら、ボンさんがその作業内に堂々と入って行った。
隠れようがない更地ゆえ、ボンさん目立っていたのだけど、ボンさんはおもむろに用を足し始めた。
作業員さんが近くにいるのに。
私は気付かれたらきっと「こらー!」って追い払われるだろうと、ハラハラして見ていたら。
なぜか気付いているのかいないのか、作業員さんもボンさんも何事もない様子で、ボンさんは優雅にトイレを済まして出て来た。
その光景が、シュールで爆笑した。
なにも気にしないボンさんの魔法のようになんだか見えた。
ボンさんは、何だかとても大事な事を教えてくれている気がする。
野良の生活は自由だけど、寒い冬の日は過酷。
膝の上から降りるのを嫌がるボンさんや膝にのらないホウホウが心配で、私は段ボールの家を作った。
すぐ中に入ったボンさん。
これをボンさん達がいつも出て来る団地の植木壇に見えないように隠した。
ボンさんとホウホウは気に入って、そこでちゃんと寝るようになった。
昼間に行くとボンさんとホウホウが仲良く寝てたり、
雨で湿ってしまった段ボールの中でも寝てたりしてたので、何度も改良しながら作り直した。
いつか団地の管理人に怒られるだろうなって、思ってたら、
ある日団地の植木が剪定されていた。
ボンさん達の家がバレた!絶対捨てられてる!と思って、恐る恐る見に行くと、
なんと、ボンさん達の家を残してくれていた…!
粋な人がいたんだな、って感動した。
嬉しかった。