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優しさだけで包めない者たち2
年老いた者。
自分には、確実に「死が近づいてきている事」を知る者たち。
これまでの人生から作り出された、年老いた者たちそれぞれの「経験の貯金」「出来上がった人格」「厚く積み重ねられた自尊心」「マンネリ化した思考パターン」「格差のある経済力」等々…
そして作り出された「自分が一番正しい」という信念に基づいた発言と、行動。
いろいろな年老いた者、が存在する。
だから必ずしもそうではないが、得てして、そうである者が多いように感じる。
年を取って、体が思うように動かせず、できないことが増えていく。
時代がすごい早さで進んで、ついていけない。
衰えてきた自分、自分を置いていく時代。
自分でできないことが増え、人の助けが必要になる。
助けに頼るしかない…それはわかっている。
わかっているが、現実を受け入れられない。
かたくなに、自分の方針を貫く年老いた者たちが非常に多いと感じる。
そんな中、必ずではないが…様々場面での認知が歪み日常が壊れていく現実が…知らないうちに始まっている年老いた者たち…
認知機能が低下する。
日々自分の能力が衰えていく。
苛立ちや悲しみ。
自分自身がわからなくなっていくような恐怖。
自分のしていることが突然わからなくなる。
出掛けて家に戻れない。
最後まで物事をやりとげられない。
壊れていく日常。
そんななかで「よく知らない人」が、自分にあれこれ言ってきたり、誘ってきたり、何かさせようとする。
何を言ってるんだろうこの人
どこに連れていく気?
まさかどろぼう?
財布はどこにやったかしら…無い…!
この人?この人がどこかへやったの?
やめてやめて、私はここから動きたくない!!
あなたは誰、財布はどこにやったのよ!!
お風呂?トイレ?自分の行きたいときに行くから、ほっといて!!
…支える人たちは疲弊していく。
丁寧に親切に支えたいのに、受け入れてもらえない事に、心身ともに疲れていく。
優しさだけで、年老いた者を包み込むことが困難になっていく。
この人たちにも、かつては若く美しく、はつらつとしていた時代があった。なんだって自分でできていたし、自分のペースやタイミングで様々なことをこなしていた…
好きでこうなっているわけじゃない。
わかってる、わかっているけど。
静かに、穏やかに、楽しく、余生を過ごさせてあげたい。
これまでたくさんがんばってきたのだから。
でも。でも。優しさだけでは、包めない。