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特別企画 支店長が点検しておきたい“金利上昇局面„での銀行ALMの重要視点特別企画

「金利がある世界」となった近時、硬直した低金利に慣れた ALM態勢が、今後の金利上昇局面で機能するのか、今のうちに点検する必要がある。本稿では、ALM態勢について、リスクの種類や把握、コントロール手段等点検ポイントと、リスク認識の共有について解説した。
     データ・フォアビジョン株式会社 代表取締役社長 大久保 豊

 

1.既に〝金利がある世界〟は到来している

 2013年の黒田日銀総裁による(異次元緩和政策)の発動により、10年を超える長きに渡った“短期金利マイナス〟“長期金利ゼロ〟の異常な世界は、本年3月、植田総裁により終止符が打たれた。日銀は17年ぶりの利上げを実施し、5月に長期金利(国債10年)が11年ぶりに1%超えの水準となった。図表1はこの四半世紀の期間別金利(金利イールドカーブ)の推移を示したものだ。じっくりと眺めて、今までの日本経済の心停止振りとこれからの“金利がある世界〟の金利水準に思いを巡らせてほしい。

図表1 日本の市場金利の推移


 米国景気の先行き不安と8月の株価急落ショックにより、日本の利上げテンポには慎重な見方が広がっており、9月に長期金利は0.9%を切る水準に低下した。石破新総理の誕生を受け、金利は乱高下し今後の不透明感が増している。しかし大事なことは、本稿執筆時点の10月7日においては、長期金利0.926%、短期金利(1年)0.231%となっており、既に“金利がある世界〟は到来していることだ。植田総裁は金利上げのテンポに関し“時間的余裕〟があるとしている。
 銀行・地域金融機関は、この限られた時間的余裕を“戦略的に活用〟しなければならない、待ったなしの状況にあるのだ。


2.四半世紀で〝大変容した資産・負債構造〟-第一地銀だけで総資産が200兆円から410兆円の〝倍増大膨張〟

 図表2は、速水総裁の「翌日物金利はゼロでもよい」との発言を受けた「ゼロ金利政策」発動の前夜である(1999年)を起点とし、黒田総裁の「異次元緩和」が発動される前夜である(2013年)、そして足元の(2023年)の定点比較にて、この四半世紀の資産・負債の構造変化を、“第一地方銀行業態〟にて取りまとめたものである。総資産が200兆円から410兆円の“倍増+210兆円〟の“大膨張〟となっている。

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