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マイナス金利政策解除後の預金の収益性 

 マイナス金利政策の解除後、各金融機関は定期預金の金利を引上げ、預金獲得に動いており、 預金取引の重要性が見直されている。しかし、今後の短期的な、あるいは中長期的な展望はどうなるのか。また、各地域の預貸率の動向は 、どのようになっているのか。本稿では、金融政策変更前の預金取引の動向と、今後の預金の収益性を考察した。

中央大学 商学部 教授 小野 有人

1 マイナス金利政策の解除

 日本銀行は2024年3月19日の金融政策決定会合で、 2016年1月末に導入したマイナス金利政策と、2016年 9月に導入した長短金利操(イールドカーブ・コントロール)の解除を決めた。また、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)が0〜0.1%程度で推移するよう、金融市場調節方針を見直した。これにより、2013年4月に始まった量的・質的金融緩和政策(以下、QQE)はほぼ終了し、金融政策は、短期金利を政策手段とする伝統的な金融政策に戻ることとなった。
 マイナス金利政策の解除を踏まえ、金融機関では、これまで重視してこなかった預金取引を見直す動きがある(注1)。また、地域金融機関のなかには、顧客の相続に伴い預金が東京圏に流出することへの懸念もあるようだ(日本経済新聞「預金60兆円大都市が吸引」2024年4月14日)。
 以下、本稿では、QQEの下での預金取引の動向を振り返ったうえで、マイナス金利政策解除後の預金の収益性について考察する。

(注1)たとえば、みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は「今まで預金口座をつくりたいと言われると『ちょっと……』となっていたが今後は取りなさいといっている」と語ったと報じられている(日本経済新聞「金利ある世界 日本再起動(2)目覚める家計」2024年3月26日)

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