
金融機関からみた「企業価値担保権」活用に向けた実務面の課題整理
事業性融資の推進等に関する法律は、2026年春目途に施行されるが、同法で創設される「企業価値担保権」活用に向けて実務面でどのような課題があるのか、整理が必要な局面となっている。本稿では、金融機関等が企業価値担保権を活用する際に想定される実務上の課題を挙げ、どのように対処すべきか解説した。
株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパン 代表取締役社長 堀内 秀晃
1 各方面で課題整理が進んでいる
企業価値担保権を主たる内容とする「事業性融資の推進等に関する法律」(以下「事業性融資推進法」)が2024年6月に公布され、2026年春にも施行される可能性が出てきた。また、事業性融資推進法の実質的スポンサーでもある金融庁では、各局を横断する組織として「事業性融資推進プロジェクトチーム」が立ち上げ、企業価値担保権の活用が想定されるケース、与信審査、期中管理等の実務上の課題について、金融界との議論並びに意見交換がなされていると聞く。これを受けて、全国銀行協会でも、同協会が事務局を務める「企業価値担保権の活用に向けた勉強会」が2024年10月以
降、毎月開催され、同勉強会の報告書が2025年3月に提出される予定とのことである。
企業価値担保権の前身である「事業成長担保権」を議論した「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」並びに金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」のメンバー、委員として議論に参加した経験に基づき、今後の事業性融資推進法に定められている企業価値担保権を活用してもらうための主たる課題について本稿で論じることとしたい。
本稿では、企業価値担保権の利用者の中でも、貸付人かつ企業価値担保権者である金融機関、中でも銀行の立場で考察する。
尚、本稿における意見、提案等は筆者個人の私見であり、所属する機関のものではないことを付言しておく。
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