特別研究 生成AIの活用とガバナンス上の留意点
2022 年11 月にChatGPT が公開されて以降、地域金融機関においても生成AIの積極的な活用が進められている。しかし生成AI からの出力内容の精度が
低いことや、AIガバナンス態勢構築が取組み途上であるなど課題も多い。本稿では生成AIが業務効率化・高度化につながるための活用とガバナンス上の留意点を解説する。
KPMG /あずさ監査法人 金融統轄事業部 金融アドバイザリー事業部
ディレクター 秋場 良太
1.生成AIの急速な進歩
筆者は、生成AIは18世紀後半から始まった「産業革命」に匹敵するインパクトを現代にもたらすと考えている。OpenAI社が22年11月にChat GPT(注1)を公表して以降、GoogleやMeta等も生成AIの開発を進め、各社の生成AIの性能についても数年で劇的な進化を遂げている(図表1参照)。
(注1)Open AI OpCo. LLCの商標登録である。
そして、22~23年時点では主にテキスト情報のやり取りが主であったが、24年に入り画像や音声にも対応できるようになり、いわゆる「マルチモーダルAI(注2)」の開発が進んでいる。24年5月に公表された「GPT-4o 」は、あたかも人間と会話しているように音声同士で人間とAIの間で会話ができるようになった(注3)。24年9月に公表された「Open AI -o1」は、大規模自然言語モデルが苦手とされる数学・科学分野にも強い能力を有するといわれており、生成AIは僅か2年という短期間で従来の常識を覆す進化を遂げている。
(注2)テキストや音声、画像、動画など複数の異なる種類のデータをまとめて扱うことができるAI。
(注3)https://www.youtube.com/watch?v=DQacCB9tDaw
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