見出し画像

でんさい利用によるDX推進

金融界は、2026年度末までに手形・小切手をゼロとする目標を掲げている。
中小企業においては、決済のデジタル化によりコスト削減をはじめ周囲の業務もまた変化し、金融機関においては融資推進につながる。本稿では、手形・小切手からでんさい利用による周辺業務の変化、期待を解説した。
                  株式会社全銀電子債権ネットワーク

1.発生記録請求件数は年々増加

 「でんさい」は、株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称でんさいネット、以下当社)が取り扱う電子記録債権であり、手形債権や売掛債権等の課題を克服した金銭債権である。
 でんさいは、手形と同様の方法で利用できることに加え、事務負担軽減、コスト削減、リスク低減、場所を選ばず利用可能および資金繰り円滑化という5つのメリットを有する。
 でんさいの発生記録請求件数(手形でいう振出件数)は、2013年の開業以来増加傾向にある。2023年度は717万件(前年度比+ 125万件)となり、利用者も企業規模に関わらず満遍なく増加している(図表1、図表2参照)。

図表1 でんさいの発生記録請求件数の推移
図表2 企業規模・業種別の比率

2.全面的な電子化に向けた動き

 「手形・小切手機能の全面的な電子化」とは、紙の手形・小切手を電子記録債権またはインターネットバンキング(以下、IB)による振込等の電子的決済サービスに移行し、最終的に約束手形・小切手の利用廃止につなげることで「紙」による決済を削減し、産業界および金融界双方の生産性向上を目指すことをいう。
 手形・小切手機能の全面的な電子化は、国策に基づく取組みであり、「2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする」ことを金融界における自主行動計画の最終目標としている。
 手形・小切手は複数の関係者間で流通するため、その処理には物量に応じた人手が必要となる。これが電子化されることで、業務時間が大幅に削減されるほか、ペーパーレスにも寄与するため、わが国の人手不足解消や社会全体のコスト削減につながる意義ある取組みといえる。
 金融界としても、産業界・関係省庁と連携し協力を得ながら、手形・小切手機能の全面的な電子化に向けて積極的な取組みを行っている。
 具体的には、金融機関において手形帳・小切手帳の発行手数料の見直しや当座預金の新規口座開設停止、2027年4月以降を期日(振出日)とする手形・小切手の代金取立受付の停止等と併せてでんさいやIBの導入提案のきめ細やかな実施、あるいは手形・小切手の発行先に対して電子的決済サービスへの移行予定時期や移行に当たってのボトルネックのヒアリングを行うといった取組みがみられる。
 また、当社主催の企業向けオンラインセミナーやキャッシュバックキャンペーンの案内を配信する金融機関などがある。

3.でんさい導入によるDX事例

ここから先は

2,454字 / 7画像

¥ 300

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる