FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 105:我がアンセム特集(最終回)
さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第105回(2023年9月29日(金)20時~
(再放送:10月1日(日)19時~)
清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。
さて今週で最終回となりますので、今回は我がアンセム的な曲やどうしてもかけておきたい曲をお届けします。当然ながら絞り込むのにもの凄く苦労しました。セットリストも二転三転しました。前回アメリカの最近の音源をたっぷり特集しましたから、今回はイギリス7曲、カナダ1曲、アメリカ4曲ということにして、割り切ることにしました。
1曲目
「Giddy-Up」Mick Taylor (1979)
まず大好きなミック・テイラーです。とにかく寡作の人です。ソロ名義のスタジオ・アルバムは1979年にリリースされたファーストと、1999年にリリースされた「ア・ストーンズ・スロー」の2枚しかありません。アナログ期はファースト1枚のみです。それでもこれが超名作と申しましょうか、大好きなアルバムです。ベーシストのクマ原田さんの訃報が飛び込んできたとき、1曲目「レザー・ジャケット」をかけましたが、それ以外はかけそびれました。最も好きな曲は「スパニッシュ/Aマイナー」ですが、12分ありましてラジオではちょいとかけにくいわけです。
以前ビルボードライヴ東京でライヴを観ましたが、もうサイコーでしたね。その日の演奏がDVDにもなっておりますが、最前列におりました私のツンツン頭が各所で映り込んでおりまして、凄い邪魔でしてね、ホント申し訳ありません。
2曲目
「Can’t Find My Way Home」Blind Faith (1969)
ブラインド・フェイスで「キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホーム」ですが、昔から大好きな曲で、高校生の頃には歌詞を訳してみたりしておりました。こういう考えさせられる英語の歌の歌詞の魅力に気づかされた曲でもあります。今回7インチ盤を持ち込んでおりますが、これ10000円近い値札がついております、コレクターズ・アイテム、貴重盤です。この番組は「番組でかけたレコードは買える」という他にはあまりない面白いコンセプトも持っておりました。これまで1000曲以上かけましたが、売れたのは20数枚ですかね。この盤はもう少し値上げしておこうかなと思っております。
最近の7インチ盤の市場ですが、2~3万円などという貴重盤はざらでして、10万円越えも多く見られるようになってきました。コロナで外出できないような時期に整理した方が多いんですかね?コロナで亡くなった方の遺品なんですかね?ここにきて一気に価格が上がってきておりますし、昔では見たこともないような盤がオークションなどに出回るようになりました。嬉しいような嬉しくないような、微妙な状況です。ウチの店舗では100円盤を大量にストックしてありまして、アナログ初心者にもお楽しみいただけるようにしております。ぜひご利用ください。
3曲目
「Everybody’s Got To Learn Sometime」The Korgis (1980)
先般ウチのお店で「夏バテ対策、元気が出る曲特集」というトーク・イベントを開催しまして、90曲ほどご紹介しました。その中で、この曲もご紹介したのですが、今年の夏は異常なまでに暑かったので、チルアウトな曲というのも元気が出る曲の中でいろいろかけまして、私にとってはこの曲は元気が出る曲でもあるし、チルアウトな曲なんだということをご紹介しました。曲調は静かで心穏やかになれる曲なのですが、なんせタイトルからして「Everybody’s Got To Learn Sometime」です。「みんなそのうちわかるさ」という実に唯我独尊なスタンスです。脳捻転と言われたひねくれ者の高山はこの曲が大好きで、聴くと元気になっておりました。この曲、ベックがカヴァーしておりまして、「エターナル・サンシャイン」という映画で使われたようです。観ておりませんので詳しくは分かりませんが、このカヴァーがまた非常にいいテイクです。YouTube等にフツーに載っておりますので、チェックしてみてください。
4曲目
「Caravan」Joe Jackson (2012)
ジョー・ジャクソンは1970年代の終わりごろにパンク/ニューウェーヴの一人としてデビューしてきましたが、「ステッピン・アウト」をはじめとしたヒット曲が出る頃には「ニューウェーヴに擬態していたな」ということが判り始め、ずっとフォローしております。
2012年にデューク・エリントンのナンバーを集めたカヴァー集「デューク」をリリースしましたが、これが私的にはツボと申しましょうか、思い切りハマりました。当時ファーストコールだったジャズ・ベーシストのクリスチャン・マクブライドが参加しているかと思えば、ギターのスティーヴ・ヴァイがいたりします。この世界観、アナログで聴きたいことはもちろんですが、それ以前に柔らか頭的な部分を猛烈に刺激されます。途中でスティーヴ・ヴァイのギターが切り込んでくる瞬間が実にスリリングです。
5曲目
「Before I Forget」Jon Lord (1982)
ディープ・パープルのキーボーダー、ジョン・ロードのソロです。1982年に象の鼻が結ばれているワケのわからないジャケットのアルバム「ビフォー・アイ・フォゲット」がリリースされました。ここにはポール・ロジャースを除いたバッド・カンパニーのメンバー全員が参加している曲があったり、コージー・パウエルやイアン・ペイスといったドラマーも参加しておりますから期待してしまいました。しかし、アルバム全体はまあまあの面白さでしたね。それでも、これ邦題が「時の過行くままに」という沢田研二みたいなタイトルだったんですけど、原題は「ビフォー・アイ・フォゲット」といいます。「フォゲット・ミー・ノット」でも「ドント・フォゲット・ミー」でもなく、「ビフォー・アイ・フォゲット」なんです。これ、リリース当時から心の奥深くに刺さりまして、還暦過ぎた今となってはもっともっと、グサグサに刺さります。別に物忘れがひどくなってきたことを嘆く歌というわけではありません。でも考えてしまいませんか?「時の過行くままに」だと逆のような気もしますし、それじゃあ悲し過ぎないかという気もします。地味な曲ですが、ベースはニール・マーレイ、ドラムスはイアン・ペイスです。
6曲目
「Sitting」Cat Stevens (1972)
キャット・スティーヴンスの「人生はさすらい シッティング」です。これぞ我がアンセムでして、いろいろなところでそのことを書いております。キャット・スティーヴンスはイスラム教に宗旨替えして、現在はユスフ・イスラム・a.k.a.キャット・スティーヴンスとなっております。世界平和を唱えたことで、アメリカから入国拒否されておりました。今はどうなんでしょうね。ただこの曲は、6枚目のアルバム「キャッチ・ブル・アット・フォー」収録曲でして、宗旨替え前、仏教に入れ込んでいた時期のアルバム収録曲なんです。つまり禅の十牛図の教えをテーマに持っているんです。もうこの人の生きざまが迷いながらも信ずるものを求めて突き進むようで、尊敬してしまいます。歌詞は実に哲学的なものですが、リフレインが「上手く行けばスタート地点に戻るのさ、上手く行けばスタート地点に戻るのさ」という、輪廻転生なんでしょうか、何とも考えさせられる歌詞です。
7曲目
「Perfect」Fairground Attraction (1988)
英国勢最後はフェアグラウンド・アトラクションです。「パーフェクト」は1988年のヒット曲ですが、この時期の7インチ盤は今となっては、大変貴重なものとなっております。アナログ・オーディオ技術が高音質の頂点を極めていた頃に、実に懐かしい印象をもつこの曲がヒットしまして、時代感覚を狂わせてくれました。いつ頃の曲か分からなくて、新曲だと知ったときは驚きました。ヴォーカルのエディ・リーダーの声も大好きですし、この曲の作者マーク・ネヴィンは何故かSNSで私のことをフォローしてきまして、大変親近感を抱いております。フェアグラウンド・アトラクションの唯一のアルバムのジャケットは、エリオット・アーウィットが1955年にカリフォルニアで撮影したものの部分なんですけど、これが大好きでして、時々お店の壁面を飾っております。
8曲目
「Mining For Gold」Cowboy Junkies (1988)
カナダから1曲。前職江東区職員のとき、姉妹都市派遣研修というプログラムがありまして、半強制的に応募させられまして、しばらくカナダのヴァンクーヴァ―郊外にありますサレー市役所に放り込まれました。そこで面倒をみてくれたお姉さんが教えてくれた曲です。炭鉱労働者が歌う労働歌ですが、これも1988年リリースです。カウボーイ・ジャンキーズというカレッジ・チャートで大人気になっていたファミリー・バンドですが、アルバム・タイトルが「トリニティ・セッション」と言いまして、トリニティ・チャーチ、三位一体教会の中にマイクを一本立ててライヴ録音した音源です。よーく聴くとクルマの音とか街の騒音が聴こえる部分があったりします。録音技術云々ではない、音楽の素晴らしさが封じ込められた、大変魅力的なアルバムです。
9曲目
「Wilco」Wilco (2009)
さて、アメリカです。まずはジェフ・トゥイーディ率いるウィルコです。2009年にウィルコが「ウィルコ」というアルバムをリリースしまして、その冒頭に「ウィルコ」という曲が収録されております。ラクダが立っているジャケットの、全く持って人を喰ったようなワケの分からないレコードです。でも他にない、強烈な個性です。
10曲目
「Something In The Air」Tom Petty & The Heartbreakers (1993)
お次は大好きなトム・ペティです。彼の音源もあまりかけられませんでした。中でも最も好きなのが、93年にリリースされたベスト盤にのみ収録されているサンダークラップ・ニューマンのカヴァー・ソングです。オリジナルの方はかけましたけどね。この曲をさも自分の曲かのように、自分たちのテイストに染めてしまっている様が素晴らしいです。
11曲目
「Queen Of Suffolk County」The Dropkick Murphys (2021)
ケルティック・パンクのドロップキック・マーフィーズです。ボストン・レッドソックスの応援団みたいな人たちでもあります。ガラの悪いオヤジどもが、実に品のないヴィデオを作っておりまして、これが最高なんです。先ほどもちょいと触れました「元気が出る曲特集」というイベントを先般開催したのですが、その時も大トリがこの曲でした。どうしても今年の夏は酷暑だったので地球温暖化のようなことに目が行きがちですけど、山火事とかの自然災害も多いですし、暑すぎるからかヘンな事件ばかり起こりますし、戦争をやりたくてしょうがない政治家連中もいたりして、何とも不安と閉塞感が満ち満ちた生きずらい昨今ではないでしょうか。そんな日々を少しでも楽しく生きるため、とりわけ我々のような世代にとっては、高齢社会のモチベーションを得るヒントがこの辺にあるのではないかという気がしておりまして、ここしばらく、繰り返しご紹介している連中です。まあ奥さま方のものだと思われる昔の写真が出てきたりするわけですが、そのタイトルが「クイーン・オブ・サフォーク・カウンティ」と言います。あんなものを晒して奥さんに殴られてないか心配になるような微笑ましいものです。
12曲目
「Tom Traubert’s Blues」Tom Waits (1976)
最終回ラストの曲です。いろいろウンチク臭い番組を2年もやらせていただきました。どうもお付き合いいただきまして有り難うございました。最後の最後はウンチクではなく、単純にイチバン好きな曲かなというのをとっておきました。
さて、長らくお付き合いいただきまして、有り難うございました。お店はいつまであるかわかりませんけど、遊びにきてください。よろしくお願いいたします。ではでは。