見出し画像

「経済雑感」no.9

 2024年7月末の金融政策決定会合後とその後の日本銀行の政策金利の引き上げのフォワードガイダンスについては、筆者は基本的に正しい路線を歩んでいると考えている。国債購入の減額と政策金利引き上げのセットは政策的整合性からして当然である。しかしながら、金融市場の受け止め方は、サプライズであったと言われる。市場との対話が欠けていたとの指摘があるが、そうではない。投機筋は売りのタイミングを見計らっていた。日経平均株価はこの間市場最高値を更新して、株価は、全体として未踏の高値水準にあったわけだから、このサプライズと先行きの見通しの不確実性増大は、とりあえずのポジション調整を誘発し、暴落した。
 後からみれば、当然の帰結であり、金融当局としても織り込み済みであったと思う。影響したのは、日本の政策金利引き上げだけではない。アメリカの景気後退懸念からの利下げ予想も影響している。この段階では、アメリカの利下げは予想に過ぎなかったが、2024年8月下旬のジャクソンホールでのFRBパウエル議長の政策金利引き下げの確約は、アメリカが段階的利下げの局面に入ったことを予想させる。日米金利差の縮小はほぼ確実に予想されることであり、名目為替相場については、大局的に見て円高ドル安局面に転換したことは明らかである。問題は、その軌道であり、オーバーシューティングがどの程度か、短期的には不安定で定常水準近傍で安定することはありえないのか、中期的なトレンドは。これらの論点が明らかにされなけれはならない。

ここから先は

647字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?