「MZDAOコミュニティに思う」no.2
MZDAOコミュニティの提案者である前澤友作さんが、本日(2022年10月20日Twitter)、「私たちがやろうとしていることは一部の資本家から会社を自分たちの手に取り戻すこと」とツイートされ、詳しい内容を無料記事として、mzdao.jpに公表されたことを明らかにされた。今までの会社とMZDAOが作る会社とはどこが違うのか、図で明らかにされている。筆者は読みました。この提案の内容が、改めて、実に平易に巧みに解説されている。また、理解できていない思われる部分が丁寧に正されている。筆者も再度、理解を新たにした。このように語られれば、大学の講義ももっと分かりやすくなること請け合い間違いなしである。あくまで筆者の感想に過ぎない。
ところで、今回の筆者の下記の記事は、直接にはMZさんの記事の内容とは全く関係のない「一般論」に過ぎないことをお断りしておく。日本の経済社会を改善しようと思えば、結局は起業に行き着く。何故か。それは、日本の経済社会が、戦後の高度成長、成熟中成長、成熟低成長へと3段階、構造変化を遂げる中、一億総企業社員(雇用)社会、徹底した企業社会と農林漁業の縮小と限界産業化の経済社会構造となったからである。経済社会の革命的変化は、多数派である企業社会の改革によってしかなし得ない。既存企業の担う部分が小さくなりつつあるし、新興企業の勃興によって新陳代謝が進行しなければならない。起業の在り方が新しい経済社会像をきめることになるであろう。90年代から2000年代の米国経済社会のように。社会的起業にはコミュニティは必要条件である。歴史を遡ればわかるように、いつの時代も成否にかかわらず、起業家は経済社会の改革者である。
マーケティング研究の泰斗であり同時に経済学者でもあるフィリップ・コトラーは、資本主義に希望はあり、改善の余地があるとし、直視すべき14の課題について、2015年4月刊行の下記の著書で論じた。その課題は、SDGsの17の基本目標と重複することは明らかである。SDGsの取り組みが開始されたのは2016年1月であり、その議論はそれ以前に国連で議論されていたものであり、コトラーがそれらを踏まえて書いたことは容易に推測される。14の課題とは、次のようなものであり、社会的課題にソーシャルマーケティングの手法を取り入れるというものである。
1.貧困問題は未解決である 2. 拡大する所得格差 3. 搾取される労働者
4. 機会が人間の仕事を奪っていく 5. 誰が社会的費用を払うのか
6. 環境破壊を防げるのか 7. 乱高下する市場 8. 利己心の是非
9. 借金で豊かになれるのか 10. 政治に歪められる経済
11. 短期的利益を重視する弊害 12. マーケティングの功と罪
13. さらなる経済成長は必要なのか 14. モノだけでなく幸福も生み出そう フィリップ・コトラー著『資本主義に希望はある 私たちが
直視すべき14の課題』邦訳 ダイヤモンド社、2015年11月
コトラーの著書の内容について、いちいち論じることはしない(機会があれば、別稿で論じたい)。しかし、多くの格差論や貧困論が、その是正の処方箋について、「資本主義に希望はある」というほど実現可能なものを提案しているとは思えない。分析を読めば読むほど心根が凍り付いていく人も多いと思われる。筆者も残念ながらコトラーの著書にも、綺麗ごと以上の期待をもつことはできなかった。逆に、BOPビジネスやマイクロファイナンスなどが起業と結びついて、それらの処方箋になっているとする見方を多くの著書から学ぶことができた。これらの是正に政治に期待をかける人々も多くいるであろう。しかし、解決に前のめりなるも、いたずらに時間稼ぎが多く、やがてそれらのソリューションは絶望の淵へと落ちていくのが常である。そのような中にあって、前澤さんがやられている大学生や一人親世帯への支援などは、困窮している個人にとってはどれほど助けられているか明らかであろう。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏の貧困をなくすための寄付をみるまでもなく、日本の寄付常態社会(再分配社会)の醸成は大きな課題であるだろう。
日本資本主義経済の立役者渋沢栄一「論語と算盤」の起業精神を掲げた岸田政権が登場している。成長と分配の好循環を政策目標として挙げるが、そのための必要条件でしかない名目賃金率の引上げだけを政策目標とすることに落ちてしまっている。時間稼ぎしても意味がなく、重要なのは、実質賃金(率)と労働分配率である。そのために資本と労働の生産性の上昇が必須条件である。筆者は、それらの好循環を達成するためには、戦略が重要であって、その一つがマクロ政策目標として起業戦略であると考える。ケインズは国家の起業を重視したと言えるが、上記の政策目標実現のためには、現代的には、コミュニティによる起業が重要である。安倍政権二期目に入り、経済成長率の目標が明らかになるにつれて、「起業戦略による地方創生」が重視されるようになったことには理由がある。官邸で開催された地方創生本部会議においてもこの実例とそれからの学びが極めて重視されたはずである。こうしたことが岸田政権にも受け継がれていくべきであると切に願う。
以下、閑談に過ぎないが、最近TVドラマでも起業ドラマの視聴率が高い。ユニコーンに乗ってに主演した女優永野芽郁さん、フリービジネスとしてのネット教育プログラムの会社をなぜ立ち上げたかのプロット。現在継続中の、ファーストペンギン主演の奈緒さん、漁師と組んだ魚販売の事業になぜのめりこむかのプロット、六本木クラスの竹内涼真さん、平手友梨奈さん、なぜ六本木で居酒屋なのかのプロット、すべて感動の演技でした。これらのドラマを見ても、パートナー、さらに進んで、コミュニティが重要であることが感じられるであろう。起業戦略によって社会は変えられる。社会的課題のソリューションを目指した起業ははじめからコミュニティが形成されるはずである。SDGsもも一人一人の取り組みがやがてコミュニティの結成へ。起業により形成される経済空間はまさにコミュニティであり、通貨やトークンなどの決済手段までもつことが考えられる。そのコミュニティは同時に会社によってつくられる経済空間に存在しているはずである。会社形態は株式会社でもLLPでもありうるであろうが、大規模なコミュニティを有する場合には、株式会社が適合的であると思われる。本日はここまでとしたい。