「為替相場の不安定性理論」no.1
筆者の新しいテーマによる論考の連載である。
(直物)名目為替相場は、第二次安倍政権が誕生した2013年以降、ラフに言えば、趨勢的な円安トレンドの軌道の近傍で不安定な変動を繰り返して現在に至る。現在は、巣性的な円高トレンドが新たな為替相場の軌道として現れているのか定かではない。趨勢的な円安トレンドを決定している要因は何であって、短期的な変動を決定している要因は何であるのかが、為替相場決定の核心的な問題である。前者が重要であって後者が重要でないということは決してありえない。両者は相互に影響を及ぼす。
経済学には「為替相場決定理論」というテーマがあり、多くの理論モデルが存在する。しかしながら、一部を除いて、それらの多くは部分(均衡)的モデルでマクロ一般均衡モデルではない。為替相場は短期的にはマネタリーサイドで決定されるとしても、やや長めの中期的にはリアルサイドが決定に加わることは明らかである。このタイムラグは重要でかつ難しい問題であるが本質的ではない。まず初めに、両サイドが趨勢的な為替相場にも短期的な変動にもかかわる一般モデルが存在しなければならない。それは、統合モデルと言い換えても差し支えない。
今回は、問題提起も兼ねて、学説史的な議論を離れて、筆者の、そして筆者にも全く初めての試論を以下展開する。筆者にとってはこのテーマは真打なのであるが、今がそのタイミングであろう。そのうち、既存理論も、不安定性に絞って取り上げ改めて再考していきたい。
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