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「母はソバの実のカーシャ、父はライ麦のパン」〜ウクライナ料理教室とウクライナカフェとそばの実料理
昨年12月。
日本ウクライナパートナーシップ協会主催のウクライナ料理教室に参加させていただいた。
講師はウクライナカフェのシェフ、コワレンコ・ロマンさんで、料理もウクライナの伝統料理ボルシチとデルヌィの魅力的な二品、収益金はウクライナの子どもたちへリクエストのプレゼントを買って寄付をするというその趣旨にも賛同、とても有意義な料理教室だった。
豚肉の塊からストックを取って作る具沢山のボルシチのほっこり滋味深い味、じゃが芋と玉ねぎなどで作るポテトパンケーキのデルヌィはちょっとしたスナック感覚で何枚でも食べられるおいしさで、随所にプロの工夫を習うことができた。
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ウクライナ料理教室
写真上中央:シェフのコワレンコ・ロマンさん
写真上左&右:ボルシチ
写真下真ん中:デルヌィ〜ウクライナのポテトパンケーキでデルヌィはすりおろすという意味だそうです
(料理教室開催で得られた収益金は全てウクライナ支援物資調達のために使われました)
料理教室のあと、武蔵野市にあるカフェ・クラヤヌィにウクライナ料理を食べに行きたいねという話になり、先日、ランチに伺った。
カフェ・クラヤヌィはウクライナからの避難民に雇用の場を与えるのと同時に日本の皆さんにウクライナ文化を体験してもらうことを目的として、NPO法人日本ウクライナ友好協会 KRAIANYによって運営されているレストランだ。
ちなみに KRAIANYとは同胞という意味のウクライナ語。
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バスは農協前下車
ウクライナ国旗が目印です
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ウクライナの写真パネルが飾られています
ウッディーな茶色、赤、白の爽やかでアットホームなお店です
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ウクライナ国旗といっしょに飾られたコーナー
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シェフのコワレンコ・ロマンさん
スタッフのかたのおススメの「今月のおすすめセット」を注文
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きのこボルシチ
ライ麦パン
スパイシーマリネ人参サラダ
ソース入りミートボール&マッシュポテト
ケシの実入りレモンケーキ
麦茶
(1,600円)
ボルシチは具沢山でやさしい酸味、スパイシーマリネ人参サラダはガツン!とニンニクが効いていていくらでも食べられるクセになる一品。
ライ麦パンももちろんおいしくて、メインのミートボールがまろやかマッシュポテトと相まって美味。これぞウクライナの家庭料理といったランチを満喫!
かなりお腹いっぱいになります!心地よい満腹感です。
店内は途中から満席。
コスパも味もいいので、お近くにお住まいの方はぜひ!
ケシの実入りレモンケーキもこんなにたくさんのケシの実入りケーキって初めてで、甘さもちょうどいい!
もう一品、これだけは食してみたかったのがそばの実を使ったウクライナの郷土料理です。
◇グレチアヌィキ トマトソース添え
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特にレムキウ地方で人気を誇る一品
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ヴィーガンのレシピもあるそうです
想像していたよりかるい食感で、ハンバーグというよりコロッケ?
お肉よりそばの実のふうわり味が残りました
「そばの実のカーシャは好きですか?」
「もちろん!昨日もカレーといっしょに食べたんですよ」
「よくカーシャに牛乳と蜂蜜をかけて食べるっていうけれど?」
「いやぁ、そういう食べ方より、なんにでも合うから、お肉でもお魚でも料理にライスみたいに盛り付けていっしょに食べますよ」
なるほど。
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食後にあたたかいドリンクを飲みたくてウクライナの飲み物のサジーを注文
サジージュースにローズマリーと蜂蜜を入れてあたためてあり
やわらかな酸味で身体の芯からあたたかくなりました
サジーは植物界で最も栄養価が高い果実の一つであると言われるスーパーフルーツ
午後一時半。
ウクライナならではの飲み物を注文し、あっ!これは柚子茶とかそんな感じの飲み物で、風邪のときとか寒いときに飲むというのも同じなのねと、月並みだけど人類みな兄弟という言葉が浮かんだ。
ああ、はるばる来てよかったですねとみんなで店を出たのだった。
ウクライナには「母はソバの実のカーシャ、父はライ麦のパン」という諺がある。
カーシャは粥のことで、黍や米、そばの実で作る東欧の代表的な家庭料理。
中でもそばの実のカーシャがウクライナではよく食されているそうだ。
そばの実のカーシャもライ麦パンもウクライナの人々にはなくてはならない食べものだということを表したのが、この 諺なのだろう。
(ちなみに古代以来ウクライナ人の主食は小麦やライ麦のパン)
(世界の蕎麦 生産量 国別ランキングはロシア、中国に続き三位がウクライナ、日本は七位〜2022年までの統計です)
私がそばの実のカーシャを作ってみたいと思ったのは、数年前、ビーフストロガノフをそばの実のカーシャで食べてみたいと思ったからで、それが初そばの実のカーシャだった。
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絶対的信頼!荻野恭子さんのレシピで
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雑穀やいろいろな穀物が好きなこともあり、そばの実のカーシャはほんとうに美味しいと思った。
炊飯器で炊けば簡単だし、ちょっと金時豆の旨味もあり、何よりルチンが豊富なスーパーフード!
ただほとんどのスーパーには置いてないのが難点だけど、ネットでいくらでも買うことはできる。
「母はソバの実のカーシャ、父はライ麦のパン」というウクライナの素敵な諺を知ったのだから、ネットを検索して、ウクライナ料理を作ってみた。
◇そばの実のカーシャ きのこソース添え
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そばの実を洗ってからそばの実の2~2.5倍の水に浸けて1時間置き、炊飯器で炊いたカーシャです
仕上げに発酵バターを少し混ぜました
きのこソースは小麦粉は使わず、最後に火を止めてからそば粉を振り入れ混ぜてから再び弱火でとろみがつくまで加熱しました
あとマッシュルームと玉ねぎを炒めた後に純米酒を加えています
仕上げの白胡椒は多すぎかな?
いえ、私はこれくらいが好き!
リッチな味が好みなら生クリームとヨーグルトを少し加えてもいいし、肉団子やサーモンステーキを添えても豪華です
これ、びっくりするほどおいしい!
マッシュルームと牛乳、バターがカーシャにぴったり!
ウクライナ料理のレシピではないけれど、そばの実のカーシャで作る炒飯もおススメです。
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残りものアルモンデ ランチプレート
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いくらでもアレンジできそう
◇鶏肉とそばの実のスープ
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じゃが芋を菊芋にして、白菜も加えました
味付けは塩と胡椒、最後に塩麴!
香菜ではなくてイタリアンパセリとマジョラム
味付けはチキンストックや野菜ストックでもいいし、トマトを加えてもそばの実に合いそう。
ニンニクがいい仕事しています。
ウクライナ料理の「鶏肉とそばの実のスープ」って、野菜を和の根菜にして、干し椎茸を加えて、味付けを醬油味にすれば、徳島県祖谷地方の郷土料理「そば米雑炊」なわけで、国は変われど人々のおいしい物の組み合わせや調理法は共通なのだということが、面白いですよね。
今回もそばの実や蕎麦食から、いろいろな気づきをもらったのだった。
料理を美味しくいただく。
そのひと皿が 誘い、見せてくれる景色をちゃんと見ようと思った。
最後に一冊の本を紹介させてください。
世界有数の穀倉地帯で、“世界のパンかご”とも呼ばれてきたウクライナには、四季折々の豊かな食材や人々の暮らしのなかで培われてきた食品加工や保存の技術、そして、多彩な食文化があります。
日本ではロシア料理に分類されがちなボルシチが、実はウクライナ発祥だったりと、東スラブの伝統の源とも言える存在。そんなウクライナ料理を重要な文化財として発信するプロジェクトのもと制作されたのが本書です。
「甘味」「酸味」「塩味と塩漬け」など味覚の特色から、「乳製品」「サーロ」などウクライナ料理に欠かせない食材のこと、おもてなしや祝祭日の食の伝統・慣習までを専門家が詳しく解説。レシピはボルシチ,ワレヌィキ(ウクライナ風餃子)、ホルプツィ(ロールキャベツ)、キーウケーキなど、ウクライナの食卓に欠かせないメニュー80点を収録。すべてウクライナ国内の有名シェフたちが伝統的な料理をもとに、本書のために考案したものです。
食は言語であり、土地の歴史や人々の暮らしを映し出す文化。眺めて、読んで、作って食べて。ウクライナ料理の世界を堪能できる一冊です。
昨年初めて手に取り、料理の写真の美しさやレシピの充実、ウクライナ文化について丁寧に記された中身の濃い一冊に魅了され、 翻って日本、日本人についても考えさせられた本です。
ぜひ一読を!
食は人と人をつなぐ。食事をしながら、わたしたちは友情を築き、話し合いをし、問題を解決する。食卓でのことば、表情、しぐさがわたしたちの気分、意図、互いの関係性を示すように、料理はわたしたちの嗜好、好み、信念、アイデンティティを示す。食はわたしたちについて語る言語だ。
ウクライナ料理は、ウクライナ人の声であり、誇りであり、ウクライナの文化と価値を表すものだ。
Eijyoさん主催の蕎麦食推進クラブさざれ石です。