君と見た、あの丘でもう一度桜を
割引あり
君と見た、あの丘でもう一度桜を 《上》
【序章】
「私は——」
そんな言葉をもう何十と重ねてきただろう。
聞き飽きた、その台詞を吐き捨てるように反芻する。
「……そうだね、もうそろそろ、行かなきゃね」
そう言って彼女はサンダルを履き、海辺へと消えていった。
「…………」
それを、間近で観ている一つの男の影。
「葵……」
その名を知る人は、彼女の故人であり、元恋人だったりする。
しかし、彼女は直近三ヶ月間、行方不明者であった。
なぜ、見つかったか?
否。
わからない。
これは、僕が余命宣告をされてから、彼女を探すための、掛橋の日記である。
【終章】
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