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《SS》時殺


注:これは息抜き程度のものです。
  原曲はSeeka様のものです。
  これは二次創作です。


 あなたは知っているか?
 大事な人が本当に考えることを。思うことを。
 もしその人が苦しんでいたらあなたの差し伸べる手がどれほどの力を持つかを——

死ねばいいんだ」

救えなかった」

 街が喧騒している。
 その中に鳴き声や嗚咽おえつが混じる。
 どこかで誰かが今日も自殺を計画している。
 今日も、何十、何百もの命が自らの手で失われている
 こんな誰かが苦しむ世界はずっと変わらないままなのか——。

「気分はどう? 自分の胸にナイフを押し付けて、これから俺が死ぬ瞬間をじかで見るのは」
 僕は思ったことがそのまま声に出てしまう。
「何してんの⁉」
「何って、自殺だけど」
「なんでそんなに平然とできるのかが理解できない」
「ま、君はそんなもんだよね。誰に対しても優しくて手を差し伸べる。俺は、そんな君が死ぬほど嫌いなんだよ
 突き放したような言い草に苛立いらだちがつのる。
「……でも、僕は君を失いたくない。君居なくなったら僕はどうすればいいの……?」
 そう。
 僕が止める理由。
 彼が居なくなったら独りぼっちになってしまうからだ。
「僕は君を止められない。だけど、君の手を放したくない。この気持ちが理解できるかい?」
「そうかい」


「俺には理解できないな」


 突き放した言い方。
 完全に「お前には関係ない」と言わんばかりの態度。
 腹が立ってくる。
「だって、俺のことは何もわからないくせに。わかってるぶりのことを言うのやめろよ。わかってるなら今さら止めたりはしないだろ? 正しいこともろくに言えないくせに」
 突き放すような言い方止まらない。
 さすがに言い返す。
「そうかもしれないけど、『人はを前に涙を流すと思うかい?』 間違った選択だとしても、僕は君をたすけだす」
 僕は思う。
 今、泣いている人をあざ笑い、バカにする愚蒙ぐもうな奴が今を謳歌おうかしているんだと。
 悪に気づけ。
 生きれないと確信しても今を耐えてる人がたくさんいる。
 こんなくだらないことに尽力する意味がない。
 そうだ、自殺なんてこんなことだ。
 君が生きてさえくれれば僕はそれでいい。
 この日々を変えてみようじゃないか。
 目指すは世界の最前線だ。
 とあることを彼に伝える。


 2008年~2019年の過去9年間の中での若年層(10代~30代)の死因最多数を占めるもの:自殺
 30代、20代、10代の順に多く、どの年代も30代が最多だった。
 中高年の死因最多は悪性新生物となっている。

 ここ5~10年程度、自殺者数が10代、もしくはそれ以下でも希死念慮をはじめ自殺について考えることが増加傾向にある。

 某年度のアンケート(小学生~大学生が対象)には「自殺について考えることがたまに、もしくはしばしばある」に回答した比率が6割~8割という結果も出ている。

 若年層の死因が自殺最多なのは日本だけという見解まである。


  一旦考え直さないか。
 ——君には死んでほしくないんだ。

 君は真剣に聞いたそぶりを見せてくれた。
 ナイフをいったん下ろしたから考え直してくれたのかと思った。
 そしてその刃を——僕に向けた。

「——お前の自己満足エゴを押し付けんな。このまま生きて苦しめっていうのか?」
 僕は言葉を失った。
 でもすぐに言葉が浮かんだ。
「君が苦しまない道を必ず見つけ出すから」
「綺麗ごとばかり言う偽善者ピエロなんだよ。君
 言葉が同時のタイミングでハモる。
「僕はただ君に」
「何もわかってないくせに」
 ここで負けてはいけない。
 また、一つの尊き命が無くなってしまう。
「僕は悔しいんだ。君が、大切な人が失われるこの世界が」
「だから何だっていうんだ。自由にさせてよ」
 またもや言葉がハモる。
 彼は再びナイフを己に向ける。
 一度切ってしまえば出血過多になりやすい頸動脈に。
 そして投げやりに言葉を吐き捨てる。
「だから僕はあきらめない——」
「もういいから構わないで」
 僕はこれまでの声をはるかに超える声量で彼に当たる。
 いや、怒鳴りつけた。
「綺麗ごとなんて! 僕もわかっているんだ!」
「だったら! 手遅れだって!」
「でも、希望を捨てることが、人のさだめなのかよ! 漠然とした感情で、人が死ぬのを見続けなきゃいけないのかよ!!
 取っ組み合いになる。
 男の人の力は女の僕にかなうわけもなく。
 純粋に投げ飛ばされる。
「そうするしかないんだ!」
「うるさい、バカ!」
 怒鳴りつけをやめ、冷静な態度で反応する。
 一度深呼吸をし、冷静さを取り戻す。
「——僕はそうは思わない」
 僕は一度開いた口を止められずにいた。
 僕は、君がどれほど苦しみ、耐え抜き、今の思考になっているか知っているから。
 他人ごとでも何でもない。
 何も情報がなければ他人事かもしれない。
 だけど、同じ感情になったことがあるだけでも他人とは言えないから。
 僕は彼の背中をそっと撫でる。
「穢れた言葉でえがかれた世界は、きっと、いや、確実に君のことは助けないだろう。だけど、いずれわかるんだ。見つけ出すんだ」


「——君が世界を殺す、その時まで」


 彼は言葉を失った。
 ナイフを落とし、訪ねてきた。
「……俺にできるか? こんな糞喰らえな世界を滅ぼすことが」
「できる。いや——やるんだ。君が満足するまで。この世界をグチャグチャにしてやろうじゃないか」
「……なら、しばらくは生き延びてやる。ただし、満足ができなかったらすぐにまた死ぬからな」
「いいさ。その時はまた僕が殴ってでも止めるだけさ」
 己と闘うか、世界と戦うか。
 その判断は難しく世界に負けてしまい、このような結果になってしまうことが現状としてある。
 でも、此れは貴方を救うための「曲」であり、唄うよ。

 ——君が生きると決める、その時まで。

「これからは僕が君を助ける。何かあればすぐに言って」
「……わかった」
 この場はとりあえず収まった。
 帰路につき、家に帰った。
「——君が、時殺じさつするまで」


貴方の力が必要だ。
綺麗ごとでも何でもない。
貴方が差し伸べるその手がどれほどの力を持つのか。
私は知っている。
綺麗ごとでも良い。
私は見知らぬ誰か、君の生きる選択肢を決してあきらめない。

by Seeka 時殺



はしがき。

 勝手ながらSeekaさんのオリ曲「時殺じさつ」を二次創作で書かせていただきました。
 ほとんど歌詞だけど気にしたら負けだ☆
 時殺がMVで見ても音源だけで見ても神曲だったから「いつか執筆してみたいな」という気持ちが続いてかれこれ1年以上……
 やっとかけてよかったぁ。
 というわけでぜひSeekaさんの「時殺」聞いてみてください。
 お疲れな人から病んでる人におすすめです。
 自分も結構病んだりしてるんでその時に聞くとまじで泣きます(?
 以上です!

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