連続短編小説集[int i]
【1:私は】
「 int i 」
それは私の中で一番好きなフレーズだった。
ただのプログラムの言葉の一つなのに、私はそれが好きだった。
int iは、ループ文などを作るときに一番よく使用される。
ただ、それだけ。
そんなことだけ。
でも、私はそんな単語が好きだった。
なぜかはわからない。
わかる必要もない。
でも、思い浮かぶのは、ほかの変数は「他者」関数は「社会」数字は「時間」をあらわしている、と私は思っている。
変数名が長いほど深く考え込んでいると単純化ができる。
ちなみに、既存のequalsなどのものは「単純化された作業」として認識している。
そこまで単純に考えれば気が楽になるから。
そして私の変数名は「i」。
立った一文字。
それまで私は単純なのだ。
褒められれば嬉しいし、怒られれば悲しい。
恋人も欲しいし、将来的に結婚もしたい。
でも、私は絶対に言えない奇病を患わっている。
——先天性終末性昏睡症候群——
この疾患は世界でも有数の難病で普段通りに睡眠をしていたらいつの間にか何か月も、何年も睡眠に落ちている、いわば昏睡になってしまう極めてレアな指定難病だ。
現代でも、進歩していても、治せないほどの難治性が余計に混乱を招く。
その中でも、私は普通の人間と同等の生活をしている。
何も苦がないから本当にそんな病気があるのかさえも疑ってしまう。
そして、その難病の唯一の治療法が婚約者以上の人間を作ることだ。
幸いにも、私は片思いしている人がいる。
その人と結ばれれば、この摩訶不思議な病気も治るのだろう。
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