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連続短編小説集[int i]

【9:童話の御噺】

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 今は昔、いじめられの子供がいた。
 その子供は、目標を掲げていた。

 ——立派な大人になると。

 でも、世界はそれを許さないらしい。
 その子供は勉強は普通程度、顔もそれなり、声質も凡人のいわば「平凡」が目立つ子供だった。
 しかし、その子供はもっと幼いころにはかなりの頭の良さで知られていた。
 でも、中学生になるにつれ、皆の者との差が激しくなり、ワーストランキングに入ってしまった。
 その時からだった。
 —―いじめが始まったのは。
 それ以降彼は外に出なくなった。
 家で本を読んでいるだけの存在になってしまった。
 書庫のみが自分を守ってくれる世界になった。
 書庫と父親のみが自分を守ってくれる存在になった。

 * * * * *

 しばらく年月が流れその子はふと思いついた。
「そうだ、一流の試験を受けよう」
 と。
 でも、その試験は彼にとって何もかもが簡単すぎた。
 彼は筆記問題、実技問題など、すべて満点で合格をしていった。
 そして彼は過去に自分をいじめたものに告げた。


『俺は自力でここまでやってきた。お前らには抜かせない壁だ』


 しかし、彼が威張ったことで彼は殺害されてしまう。
 彼は何が起こったかが理解できなかった。
 意味も分からなかった。

 何故、自分が——

 それ以来、彼は星となって彼らを見ていた。
 どんな悪行を行っているのかを確認していた。
 でも、しばらく見ていると思った。

「彼らは何も悪いことをしていない」

 と。

 確かに自分には悪行を働いているのかもしれない。
 でも、たったそれだけだ。
 そしてたまに聞こえるんだ。

「——俺ら、あいつに悪いことしたよな」

 そう言っている姿が確認できた。 

 彼は涙をした。
 それ以来、彼は人間を邪心に見ることをやめた。
 ほかの星たちにたずねられたことがあった。

「君は何をそんなに数千年もふてくされているんだい? そんなの、時間の無駄じゃないかい?」

 その時の彼はストレスでどうにかなりそうなんだと一生懸命伝えたが何も理解されなかった。
 それの意味がいまさら理解できた。
 そしてその星に伝えた。

「俺、変にすねることはやめるようにするよ。自分のやっていたことがどれほど愚かか認識していなかったよ」

 彼は何も言わずに親指を立てた。

「そういうことだ。やっと理解できたんだね」
 不意に誰かにそう言われたような気がした。



「……これが俺に似た御伽話だったりします」
「そんな御伽話が……」
「こんな御伽話があるからこそ、俺は負けていられない。そう誓ったんです。だから俺はいじめっ子には負けなかった。負けたくはなかった。そうして乗り切って、俺が勝った。そんなイメージです」
 春さんは何も言わずに静かに聴いている。
 どんな印象を持たれているのかはわからないが、悪い印象を持たれている感じはしない。
「それと、医学を勉強していく上でもう一つわかったことがあるんですよね」
「というと?」

 「告白病」という奇病に関してです。

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