離島フェチの私が唸った、トカラ列島の話~悪石島編~
私は離島フェチである。
1年に1島以上!を目標に、ここ5年で9島に行った。
私が行く離島にはいくつかの条件がある。
・日本国内
・陸地から完全に離れている(橋などはない)
・基本的には船でしかアクセスできない
・飛行機便があるとしても本数が少なく不便
・観光地化されていない
・周囲の人にその島の名前を言っても大抵「どこ?」と言われる
・徒歩、もしくは自転車で島をまわりきれる
・絶対独りで行く(これは条件じゃないか笑)
これらの条件を満たした島、これまで9島。
最初に断っておくと、私は「みんなも島に行ってみてね!楽しいから!」と言う理由でこの記事を書いてはいない。
私が上に書いた条件をクリアする島に期待しているものは「お客様」としての扱いではなく、「なんか島に知らない人来たぞ」的扱いだから。
この「扱い」が好きなので「フェチ」と自称している(笑)
とかく、内地(離島の人は陸地のことをこう呼ぶ)で旅行をすると、やれ「おもてなし」だの「お客様は神様です」だの、ビジネスにまみれた歓迎をされがちだが、離島は違う。
「なんでわざわざそんな遠いところから…まあご飯あるから食べなさい」と、まるで島に迷い込んで来た謎の人を、自分たちの家に迎え入れるように自然にもてなしてくれるのだ。
※実際は事前に民宿も船便も手配して、自分の意志で島に行ってるわけだが(笑)
この「ビジネス感の全く無い、もてなし」がたまらなく好きなのだ。
「東京から来た」と言えば大抵の人は驚く。そして「なんで来たの!?」と聞かれる。
そして話をしているうちにいろんなことが巻き起こる。
「一期一会の醍醐味」と私は勝手に呼んでいるが、この「何か巻き起こる」感じが楽しすぎて、離島は止められないのだ。
そして、どこまでも続く海。潮の薫り。波の音。夜には満天の星空。
無理に楽しもうとしなくても良い。予定も立てなくて良い。気ままに過ごしていたら必ず何か起こるから。
離島最高!(笑)
そんな離島フェチの私がベストキングオブザ離島に勝手に選んだのが「平島(たいらじま)」だ。
トカラ列島にある、小さな島。
ボゼ祭りで有名な悪石島と平島を2017年の秋にハシゴした時のことを書こうと思う。
「2等寝台を1枚、悪石島まで。」
鹿児島港で夜の20時頃、チケットを買った。
フェリーが出発するのは23時だが、21時から船に入れると言う。
今回はほぼ下調べが出来ておらず、ぶっつけ本番だった。
21時。船が開いた。
荷物を置いた後ハイテンションで船の中を探検し、写真を撮りまくる。
二等寝台はとても快適
一通り探検を終えてベッドに戻り、さっき待合所でもらったトカラ列島のパンフを眺める。
悪石島。ボゼ祭りの島。しかし、祭りはとっくに終わっている。さて、何をしようか…
23時の出航は必ず甲板で見届けようと思っていたのだが、パンフを握ったまま私は寝落ちていた。
朝、汽笛の音で目が覚めた。
「間もなく口之島ー」
艦内放送が流れる。口之島はトカラ列島最初の島。外はまだ暗い。
波の音。潮の香り。波止場から手を振る人々。
あぁ、島に来たんだ。
脳が「離島旅モード」にようやく切り替わった。
その後はだいたい1時間刻みで中之島、諏訪の瀬島、平島…と到着し
次は悪石島…と言うところで朝ご飯。
陸で買っておいたパンを甲板で食べる。海を全身で味わうひととき。
そしてついに悪石島到着!
船から島の全貌を見ると、ちょうど島の頂上に雲があり、島全体にもやがかかっていて
まさに「神宿る島」と言う感じだった。
と、同時に下調べが出来てないことを痛感した。
「予想外にデカいし、標高差も激しい…どうしよう…」
車の免許も原付の免許もない私は、島を散策するのは徒歩、もしくはレンタサイクルの2択。
この高低差ではどちらも厳しそうだ…(レンタサイクルとかそもそも無さそうだし)
まあ最悪、宿の周りだけでもいいかーと船を降りた。
民宿のおかみさんが車で迎えに来ていた。
おそるおそる「あの…私、車の免許なくてですね、歩いて見て回るのは難しそうでしょうか…」とおかみさんに聞いてみると
「歩いて?無理ですよこの島は広いし坂も急だし。」
ですよねー泣
宿について荷物を部屋に置いてパンフを眺める。
幸い、宿の周りに観光スポットらしきものがいくつかあるので
とりあえずそこを見て、お昼を食べて午後は少し足を伸ばしてみよう。無理なら引き返せばいいし!と簡単すぎるプランをたてた。
午前中、宿の周りにあるスポットを一通り周りパシャパシャと写真を撮る。しかし
「…なーんか離島旅って感じがしないんだよなあ…」
宿に戻りお昼を食べて、そして13時頃「行けるところまで行ってみる」と言う無謀なお散歩に出掛けた。
「岬に灯台…行くとしたらこの辺かなあ。」
地図を見ても全く距離感がつかめない。それもそのはず、地図にはそもそも縮尺がない(笑)
途中に分かりやすいヘアピンカーブがあるので、14:30過ぎてヘアピンカーブまでたどり着けなかったら戻ってこよう!と、これは歩きながら決めた。
歩けども歩けども、ヘアピンカーブはやってこない。
島歩きの醍醐味は常に視界に入る海…のはずなのだが、海側は竹が繁っていて景色は見えない。
左手に山。右手に海(があるはずの竹やぶ)。
歩いているうちにあっという間にタイムリミットの14:30近くになってしまった。
「景色見えないから位置把握できないし、そもそも地図もどこまで正確なのか…」
さすがに不安になっていると、だんだん下り坂が急になってきた。
「これ、登って戻れるか…?」立ち止まって戻るべきか考えていると、そう言えば左手に竹やぶ、右手に山と左右が逆になってることに気づいた。
もしや、ここがヘアピンカーブ!?
まだゴールの半分も来ていないことに愕然とした私は、引き返すことに決めた。
「離島旅ってこんなんだったっけ…」
「誰ともすれ違わないし、景色も見えないし…」
肩を落として歩いていると前方からトラックが!
トラックに向かってぶんぶん手を振ってる私を見てトラックは止まり、中から白髪頭のおじさんが顔を出した。
おじさん「嬢ちゃん、歩いて岬まで行ったと…?!」
私「いえ、とても歩ける距離じゃないことが分かって引き返してきた所です」
おじさん「今から灯台横のミカンの様子を見に行くけん、」
そう言うとおじさんはトラックの助手席をポンポンと叩いた。
おじさん「乗ってきんさい」
私「助かりましたーー!!ありがとうございます!」
それからおじさんはまず岬まで案内してくれた。
途中に立ち入り禁止と書かれた柵があり
おじさんは「頑張って歩ったとしても観光客はここで引き返すけんね」と、柵をあけて車を走らせた。
柵を躊躇なくあけるオジサマ(笑)
なにそのトラップ!(笑)
じゃあどんだけ時間と脚力があっても島民と一緒に行かなきゃそもそも岬も灯台も行けなかったのか!
唖然としてると、
おじさん「せっかく遠いとこば来てくれたとに、大変な思いばさせてすまんね、よしじゃあ今日は特別に普段観光客ば案内せんとこに…!」
おじさんは車をすっ飛ばすと、岬のあと灯台、灯台のあと周辺に自生してるミカンをもいで食べさせてくれた。
予想より酸っぱくなくて美味しかったよ!
さらに、悪石島のてっぺん、御岳の頂上まで連れていってくれて、さらにはボゼ祭りのボゼの脱け殻(笑)まで見せてくれた。※非公開だそうなので写真は自粛しました
御岳の頂上からの眺め。凄い高低差だ!
私は「うわあー!うわあー!」しか言えなくなっていた(笑)
とてつもない一期一会に感謝。
おじさんは翌日平島で宿泊予定の民宿のご主人とも友達だから自分の名前を出してくれ、と言って去っていった。
14:30まで絶望してたのが信じられないくらい幸せな気分で「やっぱ離島サイコーーー!!」と心の中で叫び、宿に戻った。
明日は朝イチで平島に移動だ!
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