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もしも太宰治が猿蟹合戦を書いていたら
太宰治の直筆原稿が見つかったというニュースが流れた。
前書きには「猿蟹合戦」の文字を消し「舌切雀」に書きかえた跡があり、別の構想があったことがうかがえる。
というわけで、もしも太宰治が猿蟹合戦を書いていたら…の書き出しを妄想してみました。
※あくまで妄想であり、太宰治さん本人とは何の関係もありません。
猿は親の愛情といふものを知らずに育った。自分に親がいるのかも分からぬ。とにかく記憶のある限りずっと孤独でいた。食べる物も食べられず腹も減っていた。たまたま柿の種を拾ったが、柿の実がなるまで待てるわけがない。
「しめた、向こうからおにぎりを持った蟹が来るぞ」
この握り飯を逃したら、次いつ食べ物に巡り合えるか分からぬ。命が尽きるが先かも知れぬ。猿は震える声でこう言った。
「蟹さん、その、おにぎりと柿の種を交換してはくれませんかね」
蟹はこともあろうにこの提案を渋った。猿は激怒した。目の前で握り飯を呑気に持って歩く蟹と、飢えで目が回りそうな自分の落差に腹が立ったのだ。しかし、ここで怒りをぶつけてはならぬ。猿は可能な限り優しい声でこう続けた。
「そのおにぎりは、今食べたらそれでおしまいだ。ただ、この柿の種は違う。大事に育てれば木いっぱいに柿の実がなる。これは良い話ぢゃありませんか?」
きっと、太宰治は「猿=悪者、蟹=善人」の根底を歪めて書きそうな気がしたので、こんな書き出しにしました。
貧しく哀しい生い立ちの猿と、何不自由ない裕福で円満な家庭で暮らす蟹。
しかし無情にも猿は蟹にメッタメタにされて息絶える…
「僕は、産まれてきてはいけなかったのですか」
とか言って。
この妄想が、熱狂的太宰治ファンの友人に好評だったので載せてみました(笑)
ちなみに私は「人間失格」「走れメロス」「斜陽」ぐらいしか読んだことがない、薄っぺらい奴です(^◇^;)
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