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邪気

独断


前回より

思いもよらない流れが招いた急激な状況変化、、、
それによってフツフツと湧き出てきた邪な思いが僕の仕事への執着を
高めていったことは間違いありません。

そして、それはやがて間違った方向へ舵を取られていきます。

。。。。。。。。。。。。。。。

必須事案の商品のリニューアル、、、
大凡の事はそれまでの取引先の尽力で出来るとわかりました。

でも、そもそも商品をどう作り上げていくのか、、、
        つまりブランディングの一から十までです。
例えば、
新商品のイメージカラーをどうする?
ボトル選びは?
カタログ作成やパッケージデザインは?、、、
ネーミング、ロゴ、意匠はどうするの?
販売戦略、宣伝広告は?
、、、etc

女性相手の美容商材となればそれなりのデザイン性が求められる。
到底僕には手に負えず、かといって頼れる伝手も全く無かったのです。

更に、そもそも問屋対応はどうするのか、、、。
売行きが順調な現行商品をそう簡単に入れ替えさせてくれるのか?
最も重要な経営基盤の事です。

次から次へと“現実的な難題”を突き付けられた僕は一人空回り状態、
もう本当にストレスチックな状況の中でキリキリ舞していたのです。

独断


 〜新たな社員雇用

とどのつまり、、、ただの独りよがり。
一人では何もできない事に気づいたわけです。

それで僕は、新たに女性2人と男性1人の社員を雇い入れました。

伝手に伝手を辿ってようやく繋がった一人の女性。
ある有名なデザイン事務所でバリバリ働くデザイナーさんです。
彼女は快く商品作りの手伝いを請け負ってくれたのです。
とても頼りになる女性、、、
当初は2足の草鞋の約束でしたが、僕はなんとか口説き落として
社員になってもらったのです。
他の2人は求人募集で雇用。
男性は本格的な営業職として、もう一人の女性は企画や全体の補佐を担当
していただいたのです。
この3人がいなければ何も前に進まなかった。
これでようやく小さな会社の体が整ったのでした。

社内の雰囲気は一変しました。

古参のパート2人と倉庫番の男性社員にとっては心中穏やかではない、、、
のんびり平穏な就業時間とはいかなくなってきた訳ですから当然です。
もちろん社長に相談して決めた事ですが、相談したところで僕の考え通りに
事は運ぶわけで相談ではなくただの事後報告。
つまり僕の独断で進めたわけです。

 〜事務所の移転

3人の社員を雇用した事で事務所は手狭になりました。
で、僕は事務所の移転を決めたのです。
これも僕の独断、、、社長への事後報告で進めた事です。

そもそも社長の自宅の一部を事務所使いしていたわけです。
本当は新たな3人分のスペースなどどうにでもなった、、、
つまり移転の本当の理由は他にあったのです。

●当たり前の営業活動をするには利便性に欠けていた事。
●何より、煎餅を口に咥えながらの仕事環境を変えたかった。

その時、僕は本当にそう考えたのです。

それで一気に都心部への事務所移転を図ったのです。
古参の3名が辞める事は想定内。
僕の気持ちの中では都心部にオフィスを持つという見栄と優越感が
かなり優先していたはずですが、一方では会社を会社らしく変えて
いきたいと思っていたのです。
諸々の判断は間違っていなかったと今振り返っても思います。

歪み、、、妄想


事業資金も潤沢にあり、毎月の売上も順調で、毎年節税を理由に
例えば高級外車を購入したりとお金を使うほどです。
そんな会社が突如自分の好き勝手になった。
これは勿論、社長と深い関係になったからに他なりません。

“既に会社は僕のもの、、、”

急激な状況変化、大きな勘違いが僕の心に“歪んだ妄想”を呼び込んだのです。

はっきりと憶えています、、、
時期を重ねるように、何かの飲み会の席の事でした。
大手証券会社の人(名前も憶えています)に「”上場”のお手伝いしますよ」
そんな冗談混じりの話をされたのです。
きっと僕は大風呂敷で歪んだ妄想を語っていたのでしょう。
そしてこの時、間違いなく僕は“過去の起業のしくじり”を思い出した。

今度こそ、、、再び上昇志向に火がついたのです。

僕は会社の将来をただ漠然と大きく描いていったのです。
ああしよう、こうしよう、、、ああなってこうなって、、、。
何一つの知識もないくせに ただ漠然と妄想に浸っていった。

潜む火種


社長との関係は相変わらずでしたが厄介な事もありました。
いつまでもホテル暮らしは出来ないという現実です。
この頃、ホテルに“避難”したことでM氏からの連絡も無くなり心に
落ち着きを取り戻した社長は住まいの事を含め今後の事を口にする
ようになっていたのです。

それで、まず元のマンションは賃貸契約を解約する事になりました。
でどうするか、、、。
事務所を移転する事で自宅に住むことはできるが、それではいつまた
M氏がやて来るかわからない、、、
独り住まいじゃ余計に怖いから住めないと、、、。
さてどうするか、、、。
仕事に専念したい僕にとって、それは少し荷が重い疎ましい解決事項
でもありましたが、僕に対する依存度がますます高まっている社長の
プラーベートも実は僕にとって大切な事でもあったのです。


そしてこれが後々大事に発展していく事になる、、、。
陰に潜んでいた大きな火種だったわけです。

次回に続く




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