ユーザーインタビューの体験設計
こんにちは。ノムラ(@nomjic)です。
BASE株式会社でUI/UXデザイナーをやっております。
先日、「PMと並走するデザインリサーチ」という記事をお書きしました。
本記事では前回記事の補足にあたる、「ユーザーインタビューの体験設計」をお書きしたいと思います。
ユーザーインタビューを行う際、ただ用意した質問を問うだけでなく、話しやすい状況づくりや、社内メンバーが気軽に様子を観に来れる環境づくりなど、様々なことを意識しています。
いろいろ試行錯誤して知見が溜まってきたので、ご紹介します。
インタビュイーエクスペリエンス
参加可否を聞く時は、2択でなく3択
インタビュー自体ではなく、インタビュー参加の同意を事前にもらう際の工夫なのですが、「YES / NO」の二択から「積極的YES / 消極的YES / NO」の三択にしたら、劇的にYESの数が増えました。
具体的に申しますと、以下の通り。
以前は、「Q. インタビュー調査へ協力いただけますか?」「A. はい / いいえ」という形で質問していました。この場合、「はい」と答えてくれるのは3〜4割程度。
ふと思いついて、「Q. インタビュー調査へ協力いただけますか?」「A. 是非とも協力したい / 都合が合えば参加可能 / 協力しない」と回答の選択肢を変えてみました。
そうすると、「是非とも協力したい」(積極的OK)と「都合が合えば参加可能 」(消極的OK)の合計割合が7〜8割程度に。「はい / いいえ」の二択ではいと答えた方の倍程度となりました。
考えてみれば、人の予定というのは流動的なものです。土壇場で都合悪くなるかもしれないし、体調崩すかもしれない。「インタビュー受けてもらえますか?」と言われて「はい」と即答しづらい場合はたくさんあるかと思われます。
「協力したいとは思ってるよ(協力するとは言ってない)」という消極的OK選択肢を入れるのはとても有効でした。
インタビュワー側、好ましい人数は2人
リサーチインタビュー時の、インタビュワー側の好ましい人数って何人でしょう?
一般的に、多人数で囲むような形は圧迫感があって話しづらくなります。
聞く側の人数はなるべく少ないほうがいい、と思うのですが、では1対1が良いかと言うと、これは良い場合も悪い場合もあります。
話が噛み合ってテンポよく会話が進んでる場合、聞き手と話し手以外の誰かがいると邪魔に感じます。
が、インタビューを受けていると、けっこう「なんか話が噛み合ってないな」という瞬間があります。
これは、多くはインタビュワーが何か(次の質問にどう繋げるかとか、どこをどう深掘るかとか)を考えつつしゃべるために、テンポが合わなくなって起きることなのですが、この時インタビューを受けてる側は「なんか自分おかしなこと言ってるかな?」と不安になります。その時に、その会話を客観視している人が傍に1人いれば、だいぶ安心できます。
なんというか、1体1だと逃げ場がないと言うか、そもそも初対面の人と2人きりになるのはなんか不安です。(オンラインのビデオ会議であっても1対1は少し怖い)
というあたりから、インタビュワー側の人数は2人が好ましい、と考えています。私がインタビューするときは「インタビュワー+書記役(インタビュワー補助者)」というペア体制をとっています。
なお、複数の関係者が同席したがる場合、オフラインのインタビューの場合は別室でカメラ越しやマジックミラー越しに会話の様子を見つつ、質問したければインタビュワーのインカムに質問投げてもらったりします。
これと近い環境をオンラインで実現するために、SlackのHuddleを使っています。
ZOOMでのインタビュー画面および音声を、Huddleを使ってSlackのインタビュー傍聴chに流して、傍聴者側から質問とか感想あったらそのままchに書いてもらう、という方法です。
HuddleでZOOMの画面と音声を共有するには、この二つを同じWebブラウザで開いている必要がありますのでご注意ください。
さらに言うなら、見えない議事録係を置いた3人体制がベスト
インタビュワーとして動くメンツとしては、「リサーチャー+PM」という組み合わせが多いのですが、この2人が知識を補い合いつつインタビューを進行するのが好ましいです。(詳しくは後述の「書記役と見せかけて、実は本命インタビュワー」参照。)
ただ、この形をとると議事録を取ることに注力できなくなってしまいます。
上述のHuddleを使った傍聴者の立ち位置に議事録取りに専念する人を起き、「インタビュワー / インタビュー補助者 / 議事録取り」の3人体制とするのが、高いクオリティのインタビューを実現するにあたってベストであると考えています。
画面共有で斜向かい的な状態に
心理学豆知識で、会話するときは斜向かいや横並びの位置関係をとるとリラックスして話せて良い、というトピックがあります。
「カウンセリングの時は正対せずに斜めの位置関係で座りましょう」とか、「バーで異性を口説くときはカウンターに座りましょう」みたいな話です。
この豆知識、オンラインのインタビューにも通じることだと思っています。
最近では、ZOOM等のビデオ会議システムが一般したために、リサーチインタビューは多くがオンラインで行われます。非常に手軽で便利なのですが、顔面アップを真正面から見据える風になってしまうので、どうも落ち着きません。
なので、基本的に話すときは画面共有で何かしら表示することにしています。
表示されてるお互いの姿は正対のままですが、自身の目線が画面共有に向きますので、「真正面から向かい合ってる」感はだいぶ薄れます。
リサーチのテーマに合った何らかの情報を表示するでも良いし、次項に述べるホワイトボード画面でもOKです。
BASEでのリサーチの場合は、相手はネットショップオーナーである場合が殆どですので、そのショップの画面を表示することが多いです。
トピックをホワイトボードで見せつつ
以前にインタビューを受ける側の立場になった時、会話の方向性がよくわからなくて話づらかったことがあります。後から思い返すに、「インタビュワーは質問項目を筋道立てて用意してる様子だけど、こちら(インタビュイー)はその筋道がわからなくて話しづらかった」のだと考えました。
また、「あといくつ質問あるんだ?今答えてる質問にどのくらい時間かけていいんだ?」みたいに、変に時間配分を気にしてしまったり。
私がインタビュワーしている時も、相手から「自分の言ってること、質問の意図にあってますか?」とか「この話、細かすぎます?もっと短くまとめて話したほうがいいですか?」と確認されることが結構あります。
インタビュワーの聞きたいことの全容や、時間配分がわからなくて不安に感じる場合があるようです。
インタビュワーが質問の構造(質問の順序や時間配分)をあまり詳細に述べてしまうのは、バイアスを生んでしまいそうで好ましくないです。
とは言え「これ質問の意図を汲めてるか?」「余計な話して時間を無駄にしてないか?」と不安に思いつつ発せられる言葉もまたバイアスのかかった状態のものであるといえます。
「質問の全体像と時間配分をざっくり見せるくらいはしても良いのでは?」と思い、最近ではインタビューのトピックを大まかに書いたホワイトボード画面を用意し、インタビューの序盤やトピックの変わり目でそれを画面共有上に表示して、こちらの知りたいことの概要を示しながら話しています。
以下は、実際に使用したホワイトボード的な画面の一例です。(インタビュー対象によって結構アレンジします。)
同席者エクスペリエンス
書記役と見せかけて、実は本命インタビュワー
特定のプロジェクトからリサーチテーマを提示されてインタビューをする場合、リサーチチームメンバーではそれらPJやテーマへの理解が足りず、解像度の低い対話で終わってしまう場合があります。せっかくユーザーさんに時間を割いてもらっているのに、とてももったいないです。
そういう場合は、テーマ提示者であるPMが自らインタビュワーをした方が、意義ある結果を得られやすいです。
ただ、インタビュワーをしつつ適切な質問をアドリブで繰り出すのは存外難しく、インタビュー慣れしてないPMだと結局インタビューシートに書かれた質問をなぞるだけになってしまい、インタビュー後に「あそこもっと広げればよかった」「あれはもっと深く聞くべきだった」となりがちです。
何より、毎回PMがインタビュワーをしたのでは、PMの負荷が大きすぎます。
そこで、PMには書記役として同席してもらいつつ、インタビュワーの聞き漏らした点や、話が深まっていない点を補足質問する、という形をとっています。(書記することよりも補足に注力してもらいます。)
インタビュワー(モデレータ):リサーチメンバーが行う。インタビューシートに則って質問をしつつ場を進行する。
書記役(実は真のインタビュワー):テーマを提示したPJのPMが行う。拡げたり深掘りしたりすべきトピックが出てきたら、口を挟んで対話の解像度を上げる。
この形をとると、インタビューがとてもうまく回り、また、PM側は落ち着いた気持ちで得たい情報を得られるため、得られる情報の解像度が上がり、インタビューに対するPMの満足度も高まります。リサーチチーム外にもリサーチカルチャーを浸透させていくために、このようにPMに参加してもらい、単に情報を得てもらうだけでなく、満足感を持ってもらうことは大事であると思っています。
ただ、書記役がしっかりメモをとっていない状態になるので、「さらに言うなら、見えない議事録係を置いた3人体制がベスト」で述べた通り、Huddleを用いた傍聴システム側に議事録役を配置するのが最も好ましいです。
傍聴者エクスペリエンス
ふらっと見に来れる状況作りを目指し中
なるべく多くの社内メンバーにユーザのことを知ってもらいたい、という思いから、インタビュー録画の視聴を社内で推奨しています。
しかし、すでに録画データは膨大な量になっており、少々視聴ハードルが上がってしまっています。どこから見るのが良いかわからない状態です。
なので、インタビュー実施の際には「傍聴したい人はSlackの傍聴chに来てね!Huddleでリアルタイムにインタビューを傍聴できるよ」と社内告知しています。
こうすることで、以下のようなメリットを生み出しています。
「どれを見たら良いかわからない」と困ることはない
気になることがあったらそのまま傍聴chに書き込めば、インタビュワーがそれを会話内に取り上げてくれる(かもしれない)、という臨場感
メンバー間のコミュニケーション促進にも寄与する
しかしまだまだ傍聴に来てくれるのはリサーチに興味ある固定メンバー数名のみ、という現状です。
傍聴者が全く人が居ないことも多々あります。
「何十名も見てる」という状態にしてしまうと、それはそれでインタビュワーがプレッシャーに感じてしまって好ましくないのですが、とは言えもう少し多様なメンバーに見に来てもらいたいところです。
傍聴chの存在を社内で広く、強めにアピールすれば、瞬間的には傍聴者は増えるのですが。。。
なかなか「お、インタビューやってる、ちょっくら覗きに行こう」のような空気にはならず、何か気軽に見に来られる工夫が要る模様です。検討中です。
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今回はユーザーインタビュー自体や、その前後で関わる方々の体験向上TIPSについて書かせていただきました。
インタビューを実施してる人や、これからインタビューを始めようとしている人の参考になれば幸いです。
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