こんな時こそ「情報強者」が一番気持ちいいだろォ！という話

ｼｭｯ ………ﾎﾟｯ
三月末の夜、真っ暗な4畳の部屋の中、「リテラシー」の上がったTLを更新したぎみっくは、満足そうに陰キャまるだしのニチャスマイルを浮かべた。

数年前の震災の際、ガレキの下敷きになったというツイートがデマであることに比較的早い段階で気付き、そのことをツイートしたらFFの賢そうな人にいいねされた快感が忘れられないぎみっくは、コロナウイルス関連のツイートが出回るこのご時世で、再び「情報強者」になって世のインテリに向けて自己顕示をしたいのである。

情報強者になるためには、TLの「リテラシー」を高める必要がある。ぎみっくにはリテラシーという言葉の意味は分からない。しかし長年のインターネット経験から何となく逆張りをしとけばそこそこリテラシーが高いと思ってもらえることは知っているので、やるべきことははっきりしていた。

まず、リツイートやいいね通知で回ってくるツイート主は即ミュートにした。リツイートした人は自分の知り合いだったとしても、元のツイート主は顔も名前も知らない、赤の他人だからだ。知らない人について行ってはいけないというママからの教えを、いい歳した大人なのにまだ守り続けるぎみっくにとって、この作業はお茶の子さいさいだった。

次に、デマだということが分かっているツイートを拡散しているアカウントのツイート内容を一つずつ見ていき、RTばかりで自分自身のツイートの無いアカウントを片っ端からミュートにした。RTばかりのアカウントは自分の頭と言葉を使っていない人間なので、ガセ情報を流しまくる可能性が高いからだ。

一般人の立場から発信します！という注意喚起アカウントもミュートにした。なぜならぎみっく自身が一般人だし、余計なお世話だとカチンと来たからだ。そもそも非常時のSNSなんて頼りにならないのに、どうして専門家でもない一般人の見解に寄り添うのか、ぎみっくには理解できなかった。

普段から政治的なツイートが多いアカウントもミュートした。党派的な考え方は左右どちらにせよ、目を曇らせるからだ。

自由な稼ぎ方/フリーランス/オンラインサロンみたいなBioのやつもミュートした。そもそも普段からうさん臭いからだ。

こうして「リテラシーの低い」ツイートを排除した完璧なTLを作り満足したぎみっくは、欅坂46の情報と小池美波ちゃんの可愛い画像を探しにネットサーフィンを始めた。コロナで気分が滅入りがちな今こそ、心に癒しが必要だからだ。

そんな中で見つけた欅坂9thシングル決定のニュースで沸き立ったぎみっくは、数秒後に落胆することになる。

日付は変わって今日は4月1日、エイプリルフールだった。