帯状疱疹後神経痛[postherpetic neuralgia, PHN] (NEJM clinical practice, 2014)


参考文献:

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmcp1403062

+α Up To Date "postherpetic neuralgia"

帯状疱疹後神経痛のイロハ

・帯状疱疹の慢性的な合併症で最も頻度が高い
・感染症に起因する神経障害性疼痛で最も頻度が高い
・帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV)の再活性化で起こる
・VZVは小児期に水痘として感染して、その後感覚神経に潜んでいる
・帯状疱疹後神経痛は複合的な神経障害性疼痛の状態で、末梢神経に実際に障害が起こっている
・帯状疱疹後神経痛というためには、急性の帯状疱疹による皮疹が生じてから少なくとも90日以上疼痛が持続していることが必要
cf.
Acute herpetic neuralgia →皮疹に先行した痛み~30日まで
Subacute herpetic neuralgia →皮疹が治癒してから~3ヶ月まで
・帯状疱疹後神経痛のincidenceとprevalenceは定義によって異なるが、症状出現後3ヶ月で20%、2年で15%が何らかの痛みを抱えている
・100点中30点以上の痛みを抱えるのは3ヶ月後, 2年後ともに約6%である。
・帯状疱疹後神経痛の危険因子は年齢[高齢であるほど], 急性期の皮疹や疼痛の重症度, 慢性疾患[糖尿病, 呼吸器疾患, *免疫不全] *inconsistent 
・帯状疱疹後神経痛はQOL, 身体機能, 心理的well-beingに影響する

病態生理

・脊髄または神経節の過剰興奮および神経遺伝子発現の感染後の変化が考えられる 神経の炎症, 繊維化
・神経伝達物質の探索は困難。サブスタンスP、セロトニン、ノルエピネフリンなど痛みや痛みの抑制に関与する神経伝達物質のレベルの違いを証明することはできていない。
・ウイルスの複製がPHNの発症に関与しているかもしれないと言われているが、あるRCTでは抗ウイルス薬投与でPHNの経過に影響を及ぼすことに失敗した。

評価

・診断は分かりやすく, 問題となることは少ない
・治療は末梢神経の神経障害性疼痛に準じる
・痛みの性質を評価する 
性状, タイミング[自発痛? 持続的or発作的?],  アロディニアの有無
・疼痛日記は有効 [referenceなし]
・Zoster Brief Pain Inventory; validated, convenient tool

治療

・疾患修飾薬はないため, 症状コントロールが主
・何年も痛みが続くために, 長期間にわたって投薬が必要
・介入の効果をモニターして薬剤を調整することが大切

外用薬

・mild painなら外用薬だけでよい
・5%リドカインパッチ
・0.75%カプサイシンクリーム
・カプサイシンパッチ

内服薬

・三環系抗うつ薬 (アミトリプチリン, デシプラミン, ノルトリプチリン)
・プレガバリン、ガバペンチン
・オピオイドはthird-line
・アセトアミノフェン, NSAIDsは神経障害性疼痛には有効では無いと一般的に考えられエチルが, RCTで包括的に評価されたわけではない

ほかの治療

・局所的な麻酔や、神経ブロックにrigorous evidenceはない
・鍼治療の有効性を示せなかった報告がある
・spinal intrathecal injection of methylprednisolone → 1 RCTで有効, safety concernsあり
・抗痙攣薬、SNRI、補助的なオピオイド [UpToDateで記載あり]
・認知行動療法 [UpToDateで記載あり]

予防

・帯状疱疹ワクチンによる帯状疱疹発生抑制が唯一の確立した予防手段
・急性期に抗ウイルス薬にステロイドを追加しても, 神経痛の予防効果はなかった
・アミトリプチリンの使用が6ヶ月後の疼痛を減らしたとするRCT

AREAS OF UNCERTAINTY

・治療期間が数週間 →より長期のフォローアップや、複数の薬剤の組み合わせの効果を評価する必要がある
・一般的には治療の効果はsuboptimal

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